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猫管理人と騎士王の隠居生活  作者: tobyisme


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第八章 フィナ

探索日誌 第六日


 あの感染体との戦闘は終わった。


 母体は再び精神攻撃を試みなかった。装甲が精神層面において完全に堅牢であることを、おそらく理解したのだろう。戦略を変え、より直接的な手段に切り替えた。


 広域生態破壊。


 周囲の宇宙の残骸、星体の破片、概念的存在さえも武器に転化し、装甲に対して無差別の砲撃を開始した。精密打撃ではない。消耗戦だ。私を装甲の中から「叩き出す」つもりでいる。


 次級防護システムが順次機能を停止。エネルギーシールドは激しく振動している。


 実験段階の防御モジュールを幾つか起動し、備蓄の概念反制兵器を投入して、ようやく撃殺に至った。


 感染された仲裁局の管理人が、私の研究室の外で虚無と化した。


 これは研究方針が正しかったことの証明だ。そして同時に、科学研究者が窮地において想像を超える力を発揮できることの証明でもある。満足している。


 だが、状況は楽観できない。


 装甲の構造完整性は深刻なダメージを受けている。エネルギー残量は僅かで、最終日の稼働を維持するのが精一杯だ。さらに重大なのは、私の戦闘パターン、防御手段、切り札のすべてが、母体の視線に晒されたということだ。一体送り込めたなら、二体目も、三体目も送り込める。次は私の弱点を正確に突いて、確実に殺しにくるだろう。


 もうここから出ることはできない。


 すべての正規の対外通信チャンネルがウイルスによって妨害・封鎖されている。直接的なメッセージは傍受され、消去される。


 奴が予測できない伝送方法が必要だ。


 ナナのことを思い出した。彼女の演算能力は管理人の中でも最上位クラスだ。一見無意味なデータから問題を見出し、未知を計算することに長けている。どんな一見無意味な文字列であっても、彼女なら解読を試みるだろう。


 フィナのことも思い出した。彼女の逆ミーム特性は、彼女の宇宙をウイルスに対して完全に免疫な唯一の存在にしている。もしメッセージが封鎖を突破できるなら、情報の完全性を保証できるのは彼女の宇宙だけだ。


 日誌の内容を高度に圧縮・暗号化し、無意味な宇宙背景輻射データに偽装して、二つに分けて送信する。


 一方はナナが最もよく知る問題報告のフォーマットで、文字化けに紛れ込ませ、ほとんど感知できないほど微弱な次級周波数で彼女に送信する。


 もう一方は宇宙エネルギー波動パターンにエンコードし、フィナの宇宙に固有のエネルギーパルスを模倣して、かつて感染体の管理人が死亡した際の宇宙統合で残された廃棄裂け目チャンネルを通じて、フィナの宇宙に強制送信する。あのチャンネルは何年も放棄されている。だが、短時間の接続なら可能かもしれない。


 これは賭けだ。届くかどうかも分からない。正しく解読されるかどうかも。


 私の意志が侵食されつつある。手が震え始め、思考も曖昧になってきた。装甲のエネルギーはほとんど残っていない。奴が近づいてくるのを感じる。奴は待っている。私が崩壊し、自ら防護を解くのを。


 そうはさせない。


 もし私が死んでも、せめてこの情報だけは生き残ってほしい。


 できることなら、もう一度だけ――ナナが私の面倒事のせいで眉をしかめている顔を見たい。宇安のあの呆れた表情も。


 それと、あの一日中日向ぼっこしている猫も。


 ……



   ◆



 日誌はそこで途切れていた。


 おそらく書き終えた直後に、メッセージの送信を試みたのだろう。


 ナナはウィンドウを閉じた。


 執務室は長い時間、静かだった。宇安の手はまだ彼女の頭に置かれたまま、微動だにしない。


 やがてナナが別のウィンドウを引き寄せた。


「駄猫からもメッセージが来てる」


 彼女は言った。


「数分前に」


 文字だった。


『宇安坊やは、どうやら隠居にも失敗したみたいね。あの実験狂、今回はちょっとやりすぎたわ。私のところにまでメッセージが届くなんて。ふん、暗号化が面倒なこと。でも嫌いじゃないわ。まだ生きてるなら、また一つ貸しね。うちの宇宙にいらっしゃいな。陽当たりは最高、猫薄荷も新鮮よ。それに――ここはあの手のものには見えない盲点(もうてん)だから』


 宇安は読み終えた。


「あいつも受け取っていたのか」


「ええ」


 ナナは言った。


「クロウは同時に二通送ったのね。一通は私に、もう一通は彼女に」


 ウィンドウを脇に押しやり、尻尾がゆっくりと一揺れした。


「彼女は、自分のところが盲点だと言ってるわ」


「逆ミーム特性」


 宇安は言った。


「ウイルスは彼女の宇宙を追跡できない」


「そう」


 ナナは言った。


「まずフィナに来てもらいましょう。彼女の宇宙を経由して隠密な通路を開ければ、私たちが直接ウイルスの宇宙に飛び込むよりずっと安全なはず」


 彼女は一拍置いた。


「ただし、駄猫の宇宙には対外通信チャンネルがないから、私から直接裂け目を開けることはできない。今、仲裁局に申請を出しているところ」


 ナナはすでにウィンドウを開いていた。


 仲裁局からの返答は速かった。駄猫の宇宙への裂け目を遠隔で開くことを承認。メンバーが直接赴く必要はない。


 数分後、執務室の空気がある一角でわずかに皺を寄せた。何かが折り開かれるように、一筋の裂け目が無音で展開する。


 そして、一匹の全身真っ白な猫が、裂け目から歩み出てきた。


 毛並みは柔らかく、オッドアイの瞳が執務室の青白い光の中で煌めいている。着地の動作はとても軽い。ほとんど音がしなかった。


 ソファの肘掛けに飛び乗り、伸びを一つ。


 尻尾が軽く宇安の頬を撫でて通り過ぎる。それから心地よい場所を見つけて丸まり、目を半分閉じた。


「生きてたのね」


 彼女は言った。口調は怠惰で、あまり重要でない事実を確認しているような響きだった。


「上出来」


「駄猫」


 宇安は言った。


「フィナと呼びなさい」


 彼女は言った。


「いつまでも駄猫、駄猫って。礼儀がなってないわ」


 彼をちらりと一瞥し、それから視線をナナに移した。


「ナナさん、はじめまして」


 ナナは彼女を見た。


「あなたもクロウのメッセージを受け取ったのね。どうやって?」


「私の宇宙には『ファイアウォール』があるの」


 フィナは言った。


「あの実験狂はそれを知っていたみたいね。メッセージを直接押し込んできた。逆ミームに触れる隙もなく」


 前足を舐めた。


「なかなか賢いわ、あの男」


「あなたのところが盲点だと言っていたけど」


 ナナは言った。


「具体的にはどの程度?」


「私の宇宙には障壁が一層敷かれている」


 フィナは言った。口調は相変わらず怠惰だが、内容は精確だった。


「侵入を試みるあらゆるミームは遮断・浄化される。すでに感染した個体が入ってきたとしても、ウイルスは体内から外へ出て他者に感染することはできない。あれはうちを追跡できないし、入ることもできない」


 彼女は一拍置いた。


「あなたたちは私の宇宙を中継点に使える。隠密な通路を一本開いて、そのままクロウのいるウイルスの宇宙に直接入る。あれにはその通路が見えないし、触れることもできないわ」


 執務室が一瞬静まった。


「他の管理人に知らせるか」


 宇安は言った。


 ナナは首を横に振った。


「無駄よ。ウイルスの能力は記憶の消去だけじゃない。認知そのものを歪める。直接ウイルスに接触したことがなく、逆ミーム特性も持たない管理人にとっては、クロウの救援メッセージも、私たちがこの件について語る内容も、彼らの意識が自動的に修正してしまう。本当の危機だとは思わない。クロウがまた何か実験をしているのだろう、あるいは私たちが遊んでいるのだろう、としか受け取らないわ」


 宇安は少し沈黙した。


「なら、三人だけだ」


「はっきり言っておくけど」


 フィナが肘掛けから頭を持ち上げた。尻尾が軽く一揺れする。


「私の物理的防御能力はほぼゼロよ。物理層面での攻撃――瓦礫の一片、衝撃波の一発、感染体のわずかな接触――どれか一つでも受ければ、私は即死する。私の自衛手段は、他者に自分を観測させない、感知させない、存在さえ忘れさせること。でも、ミーム・ウイルスに対しては、それが有効かどうかは保証できない」


 彼女は一拍置いた。


「だから、私が提供できる助けには限りがある。あまり期待しないで」


 ナナはそれを聞いて、表情がわずかに変わった。宇安を見た。


 フィナは頭を前足の上に戻した。


「ウイルスの宇宙に入った後は、あなたの領域だけが唯一の防壁よ。通路のことは、私がやる」


「メッセージの伝送時間を差し引くと、クロウの装甲はあと一日」


 ナナは言った。


 フィナは目を細めた。


「なら、無駄にしてる暇はないわね」


 宇安は立ち上がり、手を剣の柄に置いて、ナナを見た。


「あんたは」


 ナナは何も言わなかった。


 すでにウィンドウを一つずつ畳み始めていた。動きは速い。店仕舞いの動作だ。


「愚問ね」


 彼女は言った。


 フィナが肘掛けから飛び降りた。床の上で一つ伸びをする。尻尾が高く上がっている。


「よし」


 彼女は言った。


「出発」

 ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

 明日も更新予定です。感想やご指摘があれば、コメントでお聞かせください。

 次回もよろしくお願いいたします。

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