第六十章 結末
宇安が精神接続装置から起き上がり、店の中へ戻ってきた。
「どうだった?」古靈が彼を見て、自分の帽子を少し直し、笑って訊いた。
「遊び倒してたよ」宇安がうんざりした顔で言った。「大事にはならなさそうだ。このまま見ていればいい」
「俺の思った通りだ」古靈が飲み物をもう一杯頼み、宇安が出ていく前に頼んだぶんも、おかわりを入れてやった。「最後に、結末を見届けようじゃないか」
◆
ちょうどその時、配信のパーセントが、一瞬で一方に傾いた。
大量の試合で、ヴァイラの枠が、すべて「不参加」と表示されていた。残るわずか数戦に代役がいて、苦しく持ちこたえているだけだった。
〔野次馬隊長〕:どうしたどうした????ヴァイラさんに何かあったのか??????
〔今日も寝不足〕:分からない⋯⋯だがこのまま続けば、五分もしないうちに、直接負ける。
〔街角ジューススタンド〕:どうすればいいんだ? 俺たち一般人が上がっても、ただの捨て駒だぞ。
〔義肢七号店店主〕:捨て駒でも、少しは持ちこたえられる。アカウントなんて負けたら捨てるだけだ、大したことない!
〔南三十区のカイ〕:そうだ! 俺のアカウントにも、もう大したものは残ってない。捨てるなら捨てる!
〔黎水区古参住民〕:みんな早く上がれ! 勝てなくてもいい、上がれ。できるだけ自分の得意なやつを選んで、せめて持ちこたえろ。ヴァイラさんが戻ってくるまで!
◆
みんなが次々と仮想層へ入っていった。
外でまだ配信を見ているのは、もう数えるほどだった。まだ仕事中で抜けられない者、家に装置のない者が、画面を見つめている。家に装置のある者は、みな家へ帰った。公共の接続装置は、すべて埋まった。残った人々は、装置を置いた店の外に立って、店内の壁に映る配信を見ていた。
ヴァイラが参加をやめてから今まで、三分も経っていない。通りは、もう、がらんとしていた。
宇安はこの時、一通のメッセージを受け取った。
〔金親父〕:(送金:1000000 ゲームコイン)強者さん、早くログインしてくれ。装置がないなら、ここに来てもいい(住所 ⋯⋯)。こっちには最高級の精神接続装置がある。
宇安が少し動きを止めた。
彼が返信した。
〔送金:1700000 ゲームコイン〕
これは前に残ったぶんも合わせてだ。俺はもう参加しない。これは、お前たちの戦争だ。
二秒経って、彼はもう一言、付け足した。
俺は、あの管理員とは、まあ、友人みたいなものなんだ。
金親父のほうは、長いこと沈黙した。何のメッセージもない。
しばらく経って、ようやく一言、返ってきた。
〔金親父〕:じゃあ⋯⋯俺たちの世界は、どうなるんだ?
宇安はそのメッセージを、三秒、見つめた。
彼は、何かを思い出したようだった。
〔宇安〕:それはお前たちに訊くことだ。俺にも分からない。だが、自分が全力を尽くしたと、それだけは確かにしておけ。
また一分、経った。
〔金親父〕:最後に一つだけ訊く⋯⋯俺たちに、本当に勝ち目はあるのか?
この時、スコアはまだ下がり続けていた。とても遅かったが、それでも、少しずつ、30% まで落ちていた。
宇安は返信しなかった。彼はメッセージを既読にして、画面を閉じ、配信を見続けた。
その顔には、淡い笑みがあった。
彼は、ほとんど吐息だけのような声で、そっと一言、こぼした。
「もちろん。俺はもう、そこを通り抜けてきた。お前たちにも、何の問題もないさ」
エイセイが傍らで、ほとんど何の反応も見せなかった。ただ一瞬の、かすかな震えだけがあった。
◆
配信の中、一戦のオートチェスの対戦。
ナナが自分の駒に「寝返り」の効果を付与していた。彼女は相手の駒を、一つ、また一つと、自分の味方へ寝返らせていく。
ナナと対戦しているその人物は、それを見抜いた。彼は自分の最も強い、範囲攻撃を持ったいくつかの駒を、できるだけ最後まで残し、その数体での逆転に望みをかけた。
だが、それでも、差は途方もなく大きかった。
盾代わりにしていた最後から二番目の駒も寝返らされたとき、その人物は、もう絶望していた。
しかし、彼の盤上の最後の一駒が、本来は存在しないはずの効果を発動した。
背水の陣。全能力が、三秒間、相手の残り駒の数だけ倍化する。
この時、相手の盤上には十一の駒があり、彼自身の盤上には、一つしか残っていなかった。
攻撃範囲、攻撃力、クリティカル率、クリティカルダメージ、そのすべてが、同じ一瞬で、十一倍になった。
盤面全体を覆う一撃が、ナナの盤上の駒を、一掃した。
◆
こうした光景は、数え切れなかった。
あるレースゲームは、一つの罰則機構が組み込まれていた。他人の車に与えた損害が、そっくりそのまま自分の車に返ってくる。ナナはそのせいで、自分の手で自分の車を壊した。
ある怪物カードゲームでは、ナナが開幕に二倍の手札を引いた。だが相手は、ちょうど、デッキ全体でただ一枚の、相手と手札を交換できるカードを引き当てた。
〔合成コーヒー愛好家〕:さっき助けてくれたのはどこの神様だ⋯⋯本当に感謝する! さっきまで虐められて泣きそうだったのに、逆転勝ちした!
〔七番目の引き出し〕:俺のさっきの一戦、運が良すぎだろ! あの管理員に、一回勝てちまった!
〔通りすがりのエンジニア〕:掲示板を更新してる場合か、早くゲームを続けろ! まだ分からないのか? ヴァイラさんが手を貸してるんだよ!!!
〔今日も寝不足〕:スコアが下がらなくなった! 80 対 20⋯⋯21 で止まってる! 逆転しはじめてる!
〔柚子好きの飛行士〕:俺のこの一戦、向かいのあの管理員のカードが全部手札に詰まって出てこないんだが、笑える、これ首席が手伝ってくれてるだろ!
〔通りすがりのエンジニア〕:だから掲示板を更新してる場合かって、早くゲームを続けろ。やらないなら、降りてくれ、俺が上がるんだああああああああ!
◆
「⋯⋯最後、かな?」エイセイが訊いた。
「たぶん」宇安が、視線で古靈に問いかけた。
「ああ。基本的に、確定だ。終わる」古靈が言った。「ナナの計算能力は、もう余計なキャラクターを操作しなくていいヴァイラには、追いつかない。彼女の敗北は、もう決まったことだ」
「⋯⋯それで、ナナはどうなるんだ」エイセイが訊いた。その口調には、少し心配の色があった。
宇安が眉を上げた。
「お前、あいつの心配をしてるのか?」
「なんと言っても、あいつは俺たちの大家だからな」エイセイが言った。「何かあったら、俺たちもここから出られない⋯⋯まあ、お前がさっき一戦勝ってやったから、ヴァイラさんがそれで、俺たちを行かせてくれるといいんだが⋯⋯」
「⋯⋯そうはならないさ」宇安が額を押さえ、ため息をついた。
◆
数字が、少しずつ傾いていく。
ナナの権限が、80 から 70 へ、40 へ、20 へ、5 へと落ちていった。
そうして、1 まで落ちた。
だが、ちょうどその時。
すべてのゲームが、進行不能になった。あらゆる配信画面が、同時に暗転した。何かに引っかかったかのようだった。
⋯⋯
⋯⋯⋯⋯
◆
「なかなかね。ここまでやれたじゃない」
ナナはソファに仰向けに寝そべり、頭をソファの縁から垂らしていた。ヴァイラには、彼女の表情が見えない。
「⋯⋯」
「ふふん⋯⋯そういうことなら」
ちょうどこの瞬間、謎域中の配信画面が、すべて、この場所へ切り替わった。
もともと中継されていなかったあの片隅を、この一瞬、謎域全体が見ていた。
「後悔しちゃ駄目よ」ナナが言った。「これは、あなたたち自身が選んだ未来。自分たちで選んだ人」
彼女が起き上がった。その顔には、満足げな笑みがあった。彼女は眼鏡を外し、首をひとつ回して、髪を一振りした。
彼女が、眼鏡を、ヴァイラへ差し出した。
ヴァイラが、わずかに固まった。
だがすぐに、その目に、ある種の了解の色が浮かんだ。彼女は手を伸ばし、それを受け取った。
「ヴァイラさん。史上最強のハッカー。第一号のデジタル生命。謎域が戦い、守り抜いてきた首席」
ナナが笑って、彼女を見た。
「これから、この生涯、あなたの尽きることのない命の中で、未来の一分、一秒、そのすべてで⋯⋯」
彼女がヴァイラを見るその目は、まるで、自分にとってこの上なく満足のいく相手を見ているようだった。
「この世界を、もっと素晴らしいものにしてくれることを、願ってる」
言葉が、落ちた。
パーセントが、ゼロになった。
ヴァイラが、この世界の完全な権限を、手にした。
そしてこの一瞬、謎域全体が、歓喜に沸いた。




