第四十五章 ゲーム
彼らが中心データベースに足を踏み入れた。
展示台が宙に浮き、それぞれに高さ、光、内容があった。ナナが先を歩いていた。彼女の足音はしない。この空間の床は何かの滑らかな、音を吸収する素材だった。
宇安は彼女の隣を歩き、剣を手に握っていた。漂う剣 NPC が彼についていく。
この空間は本当に大きい。入口から先が見えない。
ナナが数十メートル進んで、立ち止まった。
彼女が手を上げて、軽く一度振った。目の前にナビゲーションが浮かんだ。
「⋯⋯こっち」彼女が言った。
彼女は方向を変えて、また歩き出した。
◆
彼らがいくつかの展示区を通り過ぎた。
各展示区の雰囲気は違っていた。純粋な資料、科学技術、文化、ある時代の歴史の再現模型。ある展示区には木が一本浮かんでいて、葉の一枚一枚に違う人が書いた言葉が記されていた。ある展示区は壁で、いつの時代の肖像か分からないものが一面に掛けられていた。ある展示区には縮小された都市があって、中の人々が動いていた。
宇安がその縮小された都市を見た。
なんとなく見覚えがある。
「⋯⋯これ」彼が言った。「この世界?」
ナナが横目で見た。
「うん」彼女が言った。「謎域のミニチュア。各都市、各通り、各建物が縮尺通り」
「⋯⋯これは、何のためにある?」
「後世のため」ナナが言った。「この世界はこれから変わるかもしれない、崩れるかもしれない、置き換えられるかもしれない。でも、この模型を残せば、後世の人にここがかつてどんな場所だったかが分かる」
彼女がまた数歩歩いた。
「中心データベースの主な役目はこれ」彼女が言った。「保存すること」
宇安は何も言わなかった。
彼はその概念について考えた。一つの世界が自分自身を保存する。
彼の故郷の永誓星にこういうものはない。永誓星の歴史は本に書かれ、口で伝えられ、いくつかの建物に刻まれている。「世界全体をミニチュアにしてどこかに残す」というようなものはなかった。
◆
彼らがまた少し進んだ。
空間の中の光の分布がだんだん疎らになっていった。この区域の展示台は少なくなっている。前方に少し開けた場所があり、展示台はなく、床の色がさらに濃かった。
その場所の中央に一人立っていた。
彼女は背を向けていた。
彼女は宙に浮いた、ゆっくり回転している展示物を見ていた。それは簡素な石で、何かの文字が刻まれていたが、ナナたちのこの距離からは見えなかった。
彼らが立ち止まった。
その人は振り向かなかった。だが口を開いた。
「⋯⋯思ったより遅かったわね」彼女が言った。「もっと早く来ると思ってた」
ナナが小さく笑った。
「私もそう思ってた」彼女が言った。「市集の偽目標、思ったより精巧に作られてた。手間かけたのね」
「最後には、あのファイアウォールじゃあんたたちを止められないって分かった」ヴァイラが言った。「だから自分で来るしかなかった」
彼女がやっと振り向いた。
仮想世界での彼女の姿は議会と同じ。ただし、もう「首席」の席にいる彼女ではなかった。顔を隠す設定はかかっていない、顔ははっきりしていた。若くも年老いてもいない、目が深く、表情の少ない顔。
彼女の視線がナナに向き、それから宇安、最後に宇安の傍らに浮かぶ剣 NPC へと移った。
「⋯⋯複合タグの脆弱性」彼女が言った。「うまく書いた」
「ありがと」ナナが言った。
「私はもっと時間がかかると思ってた」ヴァイラが言った。「でも、あんたはすぐに突破口を見つけた」
「脆弱性は私が残したから」ナナが言った。
そう言って、彼女が小さく笑った。
ヴァイラが一拍止まった。
それから、彼女も小さく笑った。
「⋯⋯気づくべきだった」
◆
二人はしばらく目を合わせた。
空気にとても淡い何かがあった。敵意ではない。「私たちは本来、友人になれたかもしれない」というような感覚だった。ただ、ことがここまで来てしまえば、その選択肢はもうなかった。
宇安はナナの傍に立って動かなかった。彼は剣を握ったまま、しかし先に手を出さなかった。まだ手を出すときじゃないと分かっていた。
ヴァイラが先に口を開いた。
「⋯⋯あんたの目的は大体察しがつく」彼女が言った。「リセット」
「うん」ナナが言った。「あんたが阻めば、私はリセットする」
「私が阻む」
「分かってる」
ヴァイラが頷いた。
「じゃあ、ルール通りにやろう」
彼女が手を上げて、軽く一度振った。
彼女、ナナ、宇安の間の空気が一瞬光り、正式な試合のインターフェースが浮かんだ。インターフェースに一行の文字。
「全宇宙 e スポーツ大会 正式挑戦」
その下に二つの情報。
挑戦者:ヴァイラ
被挑戦者:ナナ、宇安
インターフェースの下に二つのボタン:「受諾」「拒否」。
ナナがそのインターフェースを見た。
「⋯⋯本気でやるわけ?」彼女が訊いた。
「うん」ヴァイラが言った。「あんたたちには試合項目を選ぶ権利がある。拒否する権利もある」
彼女が一拍置いた。
「でも、もし拒否するなら、あんたたちは今の複合タグを失う。システムはあんたたちを単純なプレイヤーに戻す。私はあんたたちのデータを直接書き換えられる」
ナナの尻尾が背後で軽く一度跳ねた。
彼女が宇安を一目見て、小声で説明した。
「⋯⋯これは強制ルール。彼女、私たちが拒否できないって読んでる」
◆
ナナが「受諾」を押した。
インターフェースがまた変わった。「試合項目選択」のメニューが出た。
彼女の指がいくつかの項目を滑った。「超能力対戦」、「銃弾の雨」、「レース」、「格闘」⋯⋯創造大会はグレーアウト。ルール上、審査員のある項目は選べない。
彼女が「銃弾の雨」のところで止まった。
そして押した。
「これにする」
ヴァイラが頷いた。
「いいよ」
◆
インターフェースが消えた。
ナナが宇安に振り返った。
彼女が虚空で何かを引き出すような仕草をした。出てきたのは白い、丸い、握り拳ほどの球体。表面は滑らかで模様はなく、内部に薄く流れる光があった。
彼女がその球を宇安に渡した。
「持って」
「⋯⋯これは?」
「中心システムをリセットするためのツール」ナナが言った。「彼女もこれは直接ブロックできない。これは私が書いた最下層のプログラム、実体じゃないと起動できないから。中心データベースの核心に投げ込めば起動する」
「⋯⋯」
「核心は奥」ナナがこの展示空間の奥のほうを指した。「核心まではまだ距離がある。私が勝ったら、奥に進む」
彼女が一拍止まった。
「私が勝てなかったら、あんたに任せる」
彼女が宇安の目を見た。
彼女は「お願い」とも「ごめん」とも言わなかった。ただ平静にこのことを彼に伝えただけ。彼らは相棒、相棒の間にそういう礼儀は要らない。
宇安がその球を受け取った。
球体は彼の手の中で温かかった。彼が予想していたよりも少し温かい。
彼が頷いた。
「⋯⋯ああ」
彼が球を腰の辺りに置いた。仮想世界では物を任意に配置できる。球が空間に吸い付くように、彼の腰元に貼り付いた。
ナナが彼の肩を軽く叩いた。
「⋯⋯心配しないで」彼女が小さく笑った。「できるだけ勝つ」
「⋯⋯」
「でも、もし負けたら」彼女が言った。「あとはあんたが続けて。中央のさらに奥、一番深いところにある展示台。そこに球を入れればいい」
「⋯⋯分かった」
◆
ナナが数歩前に進み、ヴァイラの向かいに立った。
二人の間隔は二十メートルほど。
空気に光の輪が灯った。試合空間の境界。光の輪が二人を囲み、輪の外のものは水を一枚隔てたように見えた。
宇安が輪の外に立っていた。漂う剣 NPC が彼についていた。
「ルールはこう」ヴァイラが言った。「ランダムな空間。エアウォール。弾丸は無限に跳ね返り、速度は変わらず、摩擦力を無視する。双方が武器を一つずつ選ぶ」
「サブマシンガンにする」ナナが言った。
「私も」
二人の手の中に同時に武器が現れた。黒い、構造のシンプルな、大きくないが重みのあるサブマシンガン。ナナが銃を一度握って確認した。マガジン、セーフティ、トリガー。この世界の武器に、明らかに慣れていた。
インターフェースに一行の文字が浮かんだ。「試合がまもなく開始」
カウントダウン。
三。
二。
一。
空間が切り替わった。
◆
光の幕が散った瞬間、彼らは廃墟に立っていた。
高低さまざまな建物の残骸、陥没した地面、歪んだ金属、散乱した瓦礫。空間はランダムに選ばれていた。今回は「廃墟」。
ナナはもう元の位置にいなかった。彼女は最初の光が散った瞬間に動き、倒れた壁の後ろに滑り込んだ。銃口を前に向けたまま。
ヴァイラも動いた。二人は同時にトリガーを引いた。
二条の弾道が各々の銃口から噴き出し、最初の弾は相手の方の瓦礫に打ち込まれ、跳ね、また跳ね、また跳ねた。空気の中に、折り返す光線が二条増えた。
二人の銃はサブマシンガン。連射。
数秒のうちに、各銃から放たれた弾は数発から数十発、数百発と増えていった。一発も止まらない。
空間内の弾道が指数関数的に増えていく。
外から見ると、廃墟区にまず数条の光線が現れ、それから数十条、数百条、最後に密に重なり交差し合う光の網になった。一条一条がまだ動いていて、まだ跳ね続けている。
ほんの三十秒ほどで、輪の中の人がほとんど見えなくなった。
◆
宇安が最後の瞬間に試合空間の外に転送された。
彼は小さな、半透明の部屋の中に現れた。透明な壁から外を見ると、試合空間と、あの光の網が見えた。
彼が自分を見下ろした。剣はまだ手の中、漂う剣 NPC も一緒にこの部屋に転送されていた。腰元の白い球もまだそこにある。
「選手控室」彼の目の前にインターフェースが一行を表示した。「次の試合開始まで、未出場の選手はここで待機。出口は一時的に封鎖」
彼が壁を押そうとした。壁には実体があって、押しても動かない。
彼が口を開いてナナの名を呼ぼうとした。声は外に届かなかった。
彼は何もできなかった。
彼が剣を握り直し、外のあの光の網を見つめた。




