第三十八章 居住所
ナナの尻尾がもう一度揺れた。
「じゃあ創造大会にしよう」彼女が言った。
クロウ:「⋯⋯創造?」
「うん」ナナが言った。「私たちの組み合わせで戦闘系・反応系の試合に出るのは、基本、次元違いの叩き潰し。つまらない」
彼女が指を折り始めた。
「宇安の剣術と反応はあんたも見たでしょ。永誓はそもそも剣。私もまあ、弱くはない。クロウは宇宙物理を研究してるから、反応も普通のプレイヤーと同じ次元じゃない」
彼女が肩をすくめた。
「このメンバーで超能力対戦とか戦術射撃に出ても、いじめにしかならない。つまらない」
クロウが少し考えた。
帽子が後ろへ少し反った。彼が小さく笑った。
「⋯⋯確かに」
「創造大会のほうが面白い」ナナが言った。「テーマはシステムが出して、私たちは一つの空間で、想像力を使って具体的な何かを創り出す。観客と審査員が点数をつける」
彼女が三人を見た。
「戦闘より、創造性とチームワークが問われる」
永誓がそこに漂っていた。目はまだ光っていた。
「⋯⋯」彼が少し考えた。「俺、何ができる?」
「やりたいことなら何でも」ナナが言った。
永誓はそれ以上言わなかった。だが、明らかに興味が増していた。
宇安がナナを見ていて、しばらくしてから口を開いた。
「⋯⋯これ、俺はたぶん得意じゃない」
「大丈夫」ナナが言った。「得意じゃなくても遊べる。このチーム、もともと優勝するためじゃない」
彼女が笑った。
「遊びにいくだけ」
クロウが頷いた。
帽子の角度が普通に戻った。
「いいね」彼が言った。「じゃあ、創造大会」
◆
彼ら四人が賭場の大廳から転送で別の空間へ来た。
賭場とも、市集とも、レストランとも違う。
ここは静か。空間は白く、壁は何かの半透明の素材で、外の仮想世界の空が見えるが、音は何も聞こえない。床は淡い灰、塵一つない。中央に半透明の大型インターフェースが浮かんでいて、こう書かれていた。
「創造大会.公式会場」
永誓が周りを見回した。
「⋯⋯ここ、静かすぎない?」彼が言った。
「大会の会場は全部こう」クロウが言った。「外部干渉を許さない」
インターフェースに幾つかタブがあった。予選モード、練習モード、シングルモード、四人モード。
クロウがインターフェースの前へ歩み、「シングル練習」を押した。
「まずは手応えを試そう」彼が言った。「俺たちはチームでエントリーする予定だが、今日はそれぞれ単体でやってみて、あんたたちの美感を見てみよう」
彼が一歩下がって、ナナたちにも見せた。
インターフェースがマッチング待機画面に切り替わった。
「待って」ナナが言った。
彼女が手を伸ばし、マッチングをオフにした。
「私たち四人でちょうど互評できる」彼女が言った。「他のプレイヤー待つ必要ない」
インターフェースに新しい通知が出た。
「四人練習組が成立。システム評価機能はオフです」
永誓が瞬きをした。
「評価しない?」
「練習組は評価機能なし」クロウが言った。「ただお互いの作品を見るだけ」
「⋯⋯それって、普通に作るのと同じじゃない?」
「ほぼね」クロウが言った。「ただ時間制限があって、空間隔離があって、展示の流れがある。流れの練習にはなる」
永誓が「お」と答えた。よく分からなかったが、それでいいと言った。
宇安が頷いた。彼ももともと真面目に評価する気はなかった。
◆
インターフェースに主題が出た。
居住所。
三文字、空間の中央に浮かび、淡く光っている。
四人がそれぞれ少し見た。
永誓の頭が傾いた。
「⋯⋯居住所?」
「住む場所のこと」ナナが言った。
「お」
クロウの帽子が前に垂れた。彼が考えていた。
「このテーマ、よく出る」彼が言った。「だが、やれる範囲は広い」
宇安は何も言わなかった。だが「居住所」と聞いた瞬間、目が少し止まった。
インターフェースが続いた。「制作時間 30 分。各自の空間、互いに干渉しない。時間切れ後、集合して展示」
カウントダウンが始まった。
四人の仮想身体が、それぞれ一筋の光に巻かれて、各自の空間に転送された。
◆
三十分後。
四人が中央の展示空間に再び現れた。
展示空間は先ほどよりずっと広い。中央は円形の広場、周囲に四つの入口、それぞれが独立した部屋に繋がっている。各部屋が一人の作品。
永誓が広場に戻った瞬間、興奮して飛び跳ねた。
「俺、できた!」
「私たちもよ」ナナが笑って彼を見た。「落ち着いて」
インターフェースの提示。
「順に入って観覧してください」
順序はシステムがランダムに決めた。
「第一位:永誓」
永誓の目が光った。
「俺、最初?」
「あんた最初」ナナが笑って彼を押した。「案内して」
◆
永誓の入口。
四人が入っていった。
空間は大きくない。それほど広くない部屋、床は暗めの木の色、壁は淡い灰色。光が上から落ちて、部屋の中央を照らしていた。
中央に展示台。
展示台に剣鞘が一本置かれていた。
剣鞘。
地味なやつじゃない。極めて華麗なやつ。鞘身に宝石が一列に嵌め込まれていた。赤、青、緑、紫、鞘身の弧に沿って並び、一つ一つが精巧に磨かれていた。鞘口の装飾は金。鞘尾には赤い房が垂れている。鞘全体が上から下まで派手で、ほとんど誇示的だった。
クロウの帽子が前に垂れた。
ナナが吹き出した。
「⋯⋯永誓」彼女が言った。「あんた、剣鞘作ったの?」
「うん」永誓が展示台の傍に立っていた。目が光っていた。「剣の家は、剣鞘でしょ」
彼が一拍置いた。
「⋯⋯俺、剣だから」
宇安がその剣鞘を見ていた。
彼が少し考えた。
彼は現実で永誓に剣鞘を与えていた。だがそれはとても素朴なもの。黒い、革製、模様も装飾もない、純粋に剣身を保護するためのもの。
永誓が想像したのは、こういう華麗な版だった。
宇安の口元が少し上がった。
「⋯⋯なんでこんなに宝石が?」
永誓が真面目に言った。「俺、その価値があるから」
クロウの帽子が後ろへ反った。彼が笑った。
ナナはもう壁に手をついて笑っていた。
宇安が展示台を半周し、剣鞘を仔細に見た。
「⋯⋯」彼が止まり、永誓を見た。「ちょっと贅沢すぎないか?」
永誓が彼を見た。
「うん」彼がためらわず言った。「だから言わなかった。想像だけ」
宇安:「⋯⋯」
彼が少し考えた。
「⋯⋯まあ、いい」彼が言った。
彼はそれ以上追問しなかった。だが、心の中ではこのことを覚えていた。
ナナが息を切らせて笑っていた。
「永誓、あんた⋯⋯」彼女が笑いながら言った。「これ、ずっと我慢してたの」
「我慢じゃない」永誓が言った。「言うと宇安に贅沢って言われるって知ってたから」
「だから贅沢って分かってるんじゃん!」
「分かってる」永誓がきっぱり言った。「でも想像のなかではこうしていい」
クロウが剣鞘の細部を見に近寄った。彼は鞘尾の房の前にしゃがんだ。
「この房の結び方」彼が言った。「伝統手工の版だね」
「うん」永誓が誇らしげに言った。「見たことある」
「どこで?」
永誓が考えた。「ナナの家」
「彼女の家?」
「うん」永誓が言った。「家のスクリーンで流れてた。宇安と一緒に何回か観た」
クロウが宇安を振り返った。
「あんた、あれ観るの?」
宇安:「⋯⋯」
彼は特に選んで観ていたわけじゃない。ナナに置かれて、彼女と一緒に観ていただけだ。永誓がここまで覚えているとは思わなかった。
彼は否定せず、永誓の肩を叩いた。
「よくできてる」
永誓がとても嬉しそうにした。
彼は否定せず、永誓の肩を叩いた。
「よくできてる」
永誓がとても嬉しそうにした。
◆
第二位:宇安。
四人が宇安の部屋に入った。
空間は永誓のより少し大きい。
入った瞬間、ナナが固まった。
空間に置かれていたのは、彼女の家だった。
完全に同じではない。細部はぼやけていて、比例も少し違う。本棚の本は色のブロックの集まりで、本のタイトルは存在しない。だが全体の輪郭:リビング、壁際の長いソファ、ソファの前の壁一面に並ぶスクリーン、それぞれ違う番組を流しているスクリーン、これらは全部、彼女の家のものだった。
宇安がソファの傍に立っていて、何も言わなかった。
ナナが歩み寄り、ソファを一周した。
彼女が手を伸ばして、ソファの背に触れた。
「⋯⋯これ」彼女が言った。
彼女が並ぶスクリーンをまた見た。それぞれの番組はぼやけているが、色があり、光があり、小さなキャスターの姿があった。
「私の家、作ったの?」
「ああ」宇安が言った。
「なんで?」
宇安がソファを一目見て、彼女を一目見た。
彼が言葉を選んだ。
「⋯⋯居住所」彼が言った。「俺が今住んでる場所」
ナナが一拍止まった。
彼女は何も言わなかった。
ソファをもう一度回り、今度は細部に気づいた。
「待って」彼女が突然言った。「キッチンが違う」
彼女が部屋の隅のぼやけた区画を指した。
「私のキッチン、そっちにない。もっと奥にある」
宇安が一目見た。
「⋯⋯」
「それから、鉢植えが一つ抜けてる」ナナが続けた。「ソファの後ろにあるやつ」
「⋯⋯気づかなかった」宇安が言った。
「あんた、もう一ヶ月以上住んでるよ」
「⋯⋯」
「私の家、ちゃんと見たことなかったんだ」彼女が頭を振った。だが顔は笑っていた。「やっぱり。あんた入ったらすぐソファに座る。家の他のところ、ちゃんと見てない」
宇安:「⋯⋯」
彼は反論しなかった。
クロウが横でソファを見、ぼやけたスクリーンを見ていた。
「⋯⋯」彼が考えた。「俺の記憶より散らかってる」
ナナ:「⋯⋯あんたも私の家散らかってると思ってるの?」
「散らかってない」クロウが言った。「物が多い」
「それ散らかってるじゃん」
「⋯⋯まあね」クロウが言った。
彼がスクリーンを見た。
「⋯⋯こんなにスクリーン多かった?」
「ずっとこのくらい多い」ナナが言った。「あんた前に来た時、見てなかったの?」
「あの時は会議で来たんだ」クロウが言った。「あんたの家の内装に注意払ってない」
「⋯⋯」ナナが目を回した。「正直すぎ」
永誓が漂って近づき、ソファを一周し、宇安を振り返った。
「これ、知ってる」彼が言った。「あんたがよく寝てる場所」
「ああ」宇安が言った。
永誓が続けた。「俺、いつも適当に脇に置かれてる。最近やっと一緒に観るようになった」
宇安が頷いた。
永誓が並ぶぼやけたスクリーンの一つを指した。
「俺、これが好き」彼が言った。「真ん中の左のやつ。一番面白いの流す」
「⋯⋯」ナナが笑った。「永誓、よく覚えてるね」
「俺、そこに置かれて見てるんだから」
彼女がもっと嬉しそうに笑った。
彼女がソファの傍にしばらく立っていた。
それから、笑った。
彼女は宇安に何も言わなかったが、手を伸ばしてソファの背を一度軽く叩いた。動作はとても短かった。それから彼女は離れて、細部を見て歩き続けた。
宇安が彼女を見ていた。
彼は何も言わなかった。だが、ほっと息を吐いた。




