第三十三章 超能力対戦
光が散ると、二人は別の広場に立っていた。
先ほどの市集とは違う。ここはもっと賑やかで、もっと喧しく、空気にはある種の金属感があった。この世界が「戦闘領域」に対して施した雰囲気の演出だった。
四方は入口だらけだった。各入口の上方には発光看板があり、ゲーム名、難易度、リアルタイムの参加人数が表示されていた。入口で連れと話している人もいれば、一人で立って看板を見ている人もいた。
誰も並んでいなかった。
ここは仮想世界。マッチングは即時で、対戦相手を探せばすぐに見つかり、シングルなら即開始する。「待つ」という概念がなかった。
永誓が二人の間に立ち、目が一つ一つの看板を一瞬見ては次へ跳んでいた。
「こんなに……」彼がやっと口を開いた。「こんなに多い」
彼の視線は、ちょうど試合を終えて出てきたプレイヤーを追いかけてからまた逸れた。
ナナが笑った。
「欲張り過ぎ」彼女が言った。「先に一つ選びなさいよ」
「……どれ?」
「何がやりたいの?」
永誓が真面目に少し考えた。
「……全部やりたい」
宇安が横で:「……」
ナナが頭を振り、メニューを引き出した。彼女がその上をスライドし、「人気」のリストを絞り込んだ。
「これ見て」彼女が言った。「一番人気の公式ゲーム。『超能力対戦』っていうの」
彼女が紹介ページを開いた。
永誓が覗き込んだ。
「ルールは簡単」ナナが言った。「入場後に冷兵器を一つ選ぶ。それからシステムが五つの超能力をランダムに抽出してくれて、その中から一つ選ぶ。そして開戦」
「超能力……」永誓の目が光った。
「ただし、バランス機構がある」ナナが言った。「システムが選んだ武器に応じて選択肢を絞り込むの。たとえば弓を選んだら『滞空』みたいな強すぎる組み合わせは抽出されない。だから極端に酷い状況にはならない」
永誓の目はまだ光っていた。
「やる」
「ちょっと待って」ナナが言った。「先にモードを選ぼう。一対一、チーム戦、それとも乱闘?」
永誓が口を開きかけたが、宇安が先に言った。
「先に一対一にしよう」彼が言った。「俺が彼の慣らしに付き合う。俺も初めてだから、手加減する。永誓、まずは今の身体を慣らせ」
永誓の目がさらに光った。
「うん!」
◆
二人が入場している間、ナナは外に残った。
彼女がメニューを叩くと、観戦用の浮遊ウィンドウが目の前に開いた。場内の二人をリアルタイムで見られる。
彼女は浮遊している観客席に丸まって、尻尾をゆっくり揺らしながら、見せ場を待った。
◆
場内。
宇安と永誓は円形場の両端に立っていた。場は純白で、障害物はない。新人の最も基本的な場で、システムに慣れるためのもの。
宇安が先に動いた。
彼が手を上げて振ってみて、地面を踏んで、軽く跳んでみた。
彼が止まって考えた。
力、速度、跳躍、すべてが普段の自分と違っていた。
退化ではない。共通の基準値に引き下げられていた。
その場で軽く走ってみた。一般人と同じ速さだった。跳んでみた。一般人程度の跳躍力しかなかった。
彼は大体理解した。この世界はすべてのプレイヤーの身体能力を同じ水準に揃えていた。残された差は意識レベルでの反応と思考だけ。
彼は手首を何度か動かして、この身体の筋肉感を探った。
彼はあまり時間をかけずに適応した。
反対側で、永誓はまだ自分の側で、二本の脚を安定させようと努力していた。彼が左右交互に二歩踏み、今回は倒れていないと確認すると、ほっと息を吐いた。
二人の前にウィンドウが浮かんだ。
第一段階:冷兵器選択。
二人が同時に「剣」を選んだ。
二本の剣が二人の手に現れた。現実の剣に近い見た目だが、握ると奇妙な「重みのなさ」があった。この剣は金属ではない。この世界が生成した「剣」という概念の具現だった。
第二段階:超能力五つを抽出。
宇安の前に五つのブロックが現れた。
多段ジャンプ。爆発的疾走。短時間隠身。物体引き寄せ。瞬間反射攻撃。
彼が少し考え、多段ジャンプを選んだ。
身体に慣れるのと、これらの超能力の使い方を理解するのは別の話。他のは使い方すら見当がつかない。多段ジャンプは少なくとも分かる。跳ぶだけ、最大で何回か跳べるという話だ。まずはこれで。
永誓の方。
永誓が自分の五つのブロックをじっと見ていた。各ブロックには小さな説明文があった。彼は一つずつ読んでいった。こういうインターフェースを見たことがないので、反応が思ったより遅い。
最後に彼は一つを選んだ。剣気。
第三段階:開戦。
カウントダウン三秒。
ゼロになった瞬間、永誓が動いた。
彼が大声を上げて剣を振り、突進した。
剣先から剣気が一筋飛び出した。半透明、形があり、空気を切る音を伴っていた。まっすぐ宇安に向かっていく。
宇安が動いた。
左に一歩身を躱した。剣気は彼の右肩を擦って通り過ぎ、場の反対側まで飛び、場の境界に切り込んでシステムに吸収された。
永誓が突進し続けた。
第二手、彼は近接で斬るつもりだった。
だが半分まで突進した時――
二本の脚がまた連携を失った。
左足を踏み出したが、右足がついて来ない。身体が前のめりに踉けた。彼は本能的に体勢を立て直そうとして、慌てて右足を踏み出したが、自分の左足を踏んでしまった。
バランスを失う。
後ろに倒れる。
倒れる時、彼の手の剣が一緒に動いた。何かを支えにしようとするように。
剣先が震えた。
剣気が一筋、剣先から飛び出した。
まっすぐ自分の胸に当たった。
淘汰。
永誓の仮想身体が一瞬赤く光り、システムによって強制的に場外へ送り出された。
場内に宇安一人が残った。
彼はその場に立ち、剣をまだ持ち上げていた。
彼は自分の手の剣を見下ろし、それから永誓が立っていた位置を見た。
彼は多段ジャンプをまだ使っていなかった。
彼が少し考えた。
せっかく入ったのだから、試してみよう。
彼がその場で蹴り、空中に跳んだ。足が地面に着く前に、空中でもう一度蹴り、さらに高く。もう一度蹴り、さらに高く。三段。
それから着地した。
動作は流暢だったが、特に喜ぶこともない。相手はもう自分で片付いている。
彼はシステムによって場外へ送り出された。
◆
外。
ナナは観客席で笑い転げていた。
演技ではない。雰囲気を合わせるための笑いでもない。本気で呼吸ができないほど笑っていた。彼女は浮遊する椅子に伏せ、肩が震え、手で口を覆って堪えようとしていた。
止まらなかった。
彼女は観客席から滑り落ち、地面に倒れて笑い続けた。
「……ははははは……」彼女は完全な文を発音できなかった。「……無理……」
永誓が場外に送り出された時、目に入ったのはこの光景だった。
「……」
彼が一拍止まった。
ナナがこれほど笑っているのをしばらく見ていて、彼の表情が崩れていった。
「……ナナ、もうやめてよ」
彼の声は小さかった。聞かれないようにしたいけれど、一言は言わずにいられない、そんな声だった。
ナナは笑い続けた。
「……ははは……ごめん……ごめん……」彼女が頑張って起き上がろうとして、また笑い崩れた。「……あの、お前が……」
「もう言わないで」永誓が言った。
彼がしゃがみ込み、顔を両手に埋めた。
宇安もその後場外に送り出された。
彼は地面で笑い疲れて引き攣っているナナを見て、それから蹲っている永誓を見て、最後に自分の剣を見た。
彼が一つ溜め息をついた。
「俺、何もしてない」
ナナ:「……ははは……」
彼女は笑い続けた。
◆
約二分後、ナナがようやく座り直し、目尻を拭った。
何度か深呼吸して、ようやく笑いを抑えた。
永誓はまだしゃがんでいた。
ナナが歩み寄り、彼の肩を突いた。
「もういいって」彼女が言った。声を普通に保とうとした。「で、まだやる?」
永誓が顔を上げた。眼差しに言葉にできない複雑な感情があった。
「もう一回戦う」
「いい」
「今度は転ばない」
「いい」
「もうこの身体には慣れた、本当に」
「いい」
ナナの口元にじわじわと笑いが滲んだ。止められない笑い。
永誓が立ち上がった。今回は先ほどよりも少し安定して立っていた。
「でも変えたい」
「何を?」
「三対三にしたい」永誓が言った。「仲間が要る。俺一人じゃ足りない」
ナナが笑って頷いた。
「いいわよ」彼女が言った。「じゃ、私も入る。三対三」
宇安:「……」
彼が永誓を一瞥し、ナナを一瞥し、何も言わなかった。
◆
三人が一緒に三対三の場に入った。
先ほどと同じ、武器選択と能力選択のフロー。
宇安が自分の五つの能力選択肢を見た。
短距離瞬間移動。空中静止。地面振動波。視覚欺瞞。物理盾。
彼は短距離瞬間移動を選んだ。
移動方法が一つ増えれば、戦術の選択肢も増える。
ナナの方。彼女は弓を持っていた。剣ではなく、今回は別のものを試したかった。
彼女の能力選択肢が現れると、見もせずに最初のものを選んだ。
友軍への攻撃はダメージを与えず、治療する。
永誓の方。
彼が自分の能力選択肢を、長く見ていた。
それから一つを選んだ。
彼が選んだ瞬間、彼の少年型が完全に消え、その場に剣が一本残った。
剣が宙に浮いていた。落ちて来ない。
そのまま宇安の傍へ漂っていった。
現実の宇安の腰の剣と全く同じ姿になった。剣身の紋様、柄の細部、そしてあの剣に意志が宿る気配まで、すべて現実と一致していた。
宇安が突然漂ってきた剣を見た。
何と言えばいいか分からなかった。
永誓の声が剣の中から響いた。今回は剣の中の低い声、少年の声ではない。
「……俺の能力は『自分を兵器に変える』」
宇安:「……」
「これが俺に一番合うと思う」永誓が言った。「これからは俺、お前の剣だ」
宇安は突然手の中に増えた剣を見ていた。
彼が長く息を吐いた。
「だめ」とは言えなかった。これが彼に一番ふさわしい「超能力」だ。
「……いい」彼が言った。「お前、自分で飛んでいって斬れるのか?」
「たぶん」永誓が言った。「後で試す」
剣身が一度震えた。慣れた頻度の震えだった。
◆
対戦相手側の陣容が現れ始めた。
最初に現れたのは、やや背の高い男性だった。深い色のロングコート、手に鞭を持っている。鞭は発光して、動いている。死んだ金属ではなく、ある種の生物のような、わずかにくねる軌跡。
彼が場の中へ数歩進んだ。
動作が大きい。彼が鞭を一度試し振りした。
音がない。
完全になかった。
鞭が地面に当たれば音がするはずだった。だが、なかった。彼が地面を踏めば足音がするはずだった。だが、なかった。
彼はまるで音を消されている人のようだった。
宇安:「……」
二人目が現れた。大剣を持つ女性。
彼女の剣は非常に大きく、彼女自身より長かった。だが彼女が手にする姿勢は非常に自然だった。何らかの能力で補助されているのだろう。
彼女が歩いてくる時、動作は普通で、足音もあった。能力はまだ見えない。
三人目。
三人目は現れた瞬間、空中にいた。
白いローブを着た人物、男女不明、約十メートルの高空に浮いている。手に佩剣を持っていた。
落ちて来ない。
飛行装置を使っているのではなく、空中に直接浮いているように見えた。
宇安が彼を見上げた。
彼の能力はおそらく「滞空」。だが他の能力は分からない。
ナナが弓の後ろから空中の人物を一目見た。
弓を持つ手をくるりと回し、指の関節を鳴らした。尻尾がゆっくり揺れていた。
カウントダウン五秒。
ゼロになった瞬間。
宇安が手の剣を握り締めた。永誓が剣身の中で一度、わずかに震えた。
一度だけ。
緊張ではなく、準備が整ったという震えだった。
宇安が深く息を吸った。
開戦。




