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最期の覚悟


私は知っていた。この日が来ることを。

しかし、誰も私を信じなかった。

誰もが死という恐怖から私の言葉を信じることができなかった。

人類は滅亡する。

この言葉を誰も信じようとしなかった。

しかし、最期の日は来た。

信じなかった人も信じざるおえなくなった。

人は死に対して恐怖し、生を諦めた。

私はすでに覚悟ができていた。死を受け入れる覚悟を。


私、重野 正彦は宇宙を研究する天文学者だった。私は知らなかったことを知る瞬間が何よりも好きだった。だから私は未知の宝庫である宇宙について研究する天文学者になったのだった。私は毎日、高性能の天体望遠鏡を覗いて宇宙をいつも見てきた。

私が見ている星ははるか昔の星だ。はるか昔の星の光がいま地球に届いている。その光が地球に届いた頃にはその星はもう存在していないかもしれない。青く光る星が若い星だ。赤く光る星は年老いている星だ。そうやって光る星の周りに地球のように生命が住んでいる星があるかもしれない。その星でも私と同じように外の宇宙を見ているかもしれない。星は無数にある。そんな宇宙に果てはあるのだろうか?

私は研究しているうちに未知を解き明かすどころかふえていっていることに気づいた。私はそれがまたおもしろくてたまらなかった。

そんなある日私はひとつの星を見つけた。

正確にはわからないがその星は地球と同じか少し大きい星だった。私はなぜかわからないがその星に興味を持った。

よくよく観察しているとその星の軌道は太陽系のどの星の軌道とも類似しない軌道を持っていた。別の恒星の惑星なのかもしれない。その銀河系の軌道から大きくそれた惑星なのかもしれない。とにかくその星の軌道は異常だった。と、最初は私はその星の動きが異常であるとだけしか思っていなかった。

しかし、私は観察研究をしているうちに恐ろしい事実を知ってしまった。

その星の進行方向にちょうど地球が存在するということだ。その星と地球が衝突し、二つとも破壊される。

私は何度も計算した。最新の計算機を使い何万回も計算した。

結果は90%の確率で地球と星は衝突する。

衝突によって予想される被害は、衝突時、衝突した場所が海の場合、大気圏を超えるほどの大津波が発生し、全大陸が沈む。陸地の場合は衝撃時の衝撃波が地球上に一瞬で伝わり、地球上にあるすべての建造物が崩壊する。しかし、これは衝撃が比較的に小さい場合の出来事であり高い確率でそれが起こる前に衝突地点を中心に地球の表面に亀裂が入り、衝撃は地球の内部のマントルまで伝わり、マントル内で爆発が起こり、亀裂の入った地球は砕け散る。地球上に住む生命はすべて命を失う。地球の崩壊とともに地球からの引力を失った月や人工衛星は反動ではるか彼方に吹き飛ぶ。地球があった場所はたった一瞬で何もなくなりただの闇だけとなる。

予測では星の衝突は8月20日、日本時間18時ごろであり、16時ごろになると人の目でその星を確認することができるほどになり、17時ごろその星は空の半分を占めるようになる。

人類が自分の目で死を実感するのはそのときになるだろうと思う。

私はこのことを天文学部長に伝えて、学部長が日本政府に伝えたが政府はそれを公開しなかった。公開すればそれによって混乱をまねくという懸念からだ。日本以外の国でも人類の滅亡についてはすでに調査済みだったのだろうが、どの国も伝えなかった。混乱を招くから。そして、なによりもそれを伝えることで死を事実のものにすることになるから、それを避けたいから。人はみな、自分自身の死に対する恐怖により、真実から逃げたのだ。

人類の滅亡は関係者以外に知れわたることはなくついにその日がやってきたのだ。


星の名前は『エンド』になった。終わりという意味だ。

エンドはこの地球に終わりを与えにきた。

私には最期の覚悟というものはできている。

どんなにあがいても避けることのできぬ死を私は受け入れている。私には他の人と違い、死を受け入れる時間があった。

私の人生において後悔があるとすれば、まだ知らないことを知れていないということだ。

宇宙には他に生命はいるのだろうか?

宇宙には果てはあるのだろうか?

宇宙には星は何個あるのだろうか?

宇宙ができる前には何があったのだろうか?

宇宙には終わりはあるのだろうか?

知らないことを知らずして死ぬのは少し後悔だ。

しかし、そのことはもしかしたら死ねばわかることなのかもしれない。

私は死んだらどうなるのか?死の世界は存在するのだろうか?

私は今からそれを確認しに行く、そういう覚悟を私はしたのだった。


18時ごろ、最期のときはやってきた。

重野 正彦は最期のときを素直に受け止めた。



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