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いままでありがとう。


人生の最期を私はどう生きようか?

受験勉強で使ってきた参考書をすべて燃やそうかな?

彼氏と最期の瞬間を過ごそうかな?

なんなら、最期が来る前に死のうかな?

私はまだやりたいことがいっぱいあった。友達、彼氏と旅行も行きたかったし、バイトをたくさんしてお金を貯めたかったし、薬剤師にもなりたかった。その夢のために私は高校2年生からこつこつと勉強して、今、受験において最も大切な高校3年生の夏休みを過ごし、あと10日ぐらいで2学期が始まろうとしている。私は大事な夏休みを必死に勉強した。それが今日、すべて水の泡になった。もう、私には未来はこない。最初は疑った。何度も嘘だと思っていた。でも、専門家が数々の根拠を述べたり、映像から人類の滅亡が避けられないものであるということがわかり、私の頭は真っ白になった。明日が来ない。それは私の今日までの努力をすべて無にする、私の今日までの努力をすべて無価値にする出来事であった。私の人生は無価値。そう思えてしまった。

嘘であってほしい。人類の絶滅が。


私、田原 菜々音には理想的な未来があった。

私は努力の末、志望大学に合格する。その合格を家族も友達も私の彼氏も喜んでくれるはず。彼氏とは大学が別々になってしまい、遠距離恋愛という形になってしまうが、それでも毎日メールや電話で連絡を取り合い長期の休みには会って、旅行とか行けたらいいな。私は大学でも薬剤師になるために懸命に勉強する。大学でできた友達とともに夢に向かって勉強する。充実した大学生活を送り、大学を卒業。きっと悲しいだろうな。それでも薬剤師資格の試験を受け、1度で合格できるかはわからないが私は夢の薬剤師の資格を得る。きっととても喜ぶことに違いない。それからしばらくして私は長年付き合ってきた彼氏と同棲を始める。最初はもしかしてもめたりすることがあるかもしれないけど、それでも愛が薄くなったりすることはなく、ついに、私は彼氏と結婚することになる。結婚式を挙げて、新婚旅行はハワイにでも行こうかな。写真もいっぱい撮りたい。そして、子供が生まれる。2人ぐらい欲しいな。2人ともすくすく育つ。いや、もしかしたら怪我とか病気とかで入院してしまうかもしれない。きっと、そんなハプニングもありつつ2人はすくすくと成長していく。その成長をみて私は幸せな気分になっているはず。子供が成長し、社会にでて私のもとを離れる。それは、とても寂しいと思う。でも、それでも構わない。子供が自分の夢に向かって進んでいるんだから、私はそれを止めようとしない。子供たちもまた結婚して子供、私から見て孫ができる。きっと、孫はとてもかわいいんだろう。そして、私は還暦をむかえ、また年がたち、夫は先に死んでしまう。私は泣き崩れるはず。でも、私は死んだ夫にこう言うと思う。「いままでありがとう」2人で一緒に歩んできた高校2年生からの愛をありがとう。私はひとりになり、夫の死から数十年後、親族に見守られ、息をひきとる。


そんな私の未来は私から失われようとしている。

私は大学に受からない。なぜなら今日死ぬから。

私は薬剤師になれない。なぜなら今日死ぬから。

私は結婚できない。なぜなら今日死ぬから。

私には子供はできない。なぜなら今日死ぬから。

私は還暦まで生きれない。なぜなら今日死ぬから。

私にはやりたいことがいっぱいある。

それを今日1日でできるわけがない。

未来になにが起こるかはわからない。それはわかる。でも未来がないなんてことはあっていいのか?

私は何度でも言う。まだ生きたい。

最期のときを迎える前に死ぬのはやめよう。生きれるまで私は生きる。


私は少し外を散歩することにした。

いつも見ていた風景が少し美しいと思えた。

私が通った学校。私が通った道。彼氏と始めてキスした公園。友達とよくしゃべりあったカフェ。すべてが美しく思えた。

いつもはセミのなきごえを耳障りだと感じていたが、今はなんだかすこし心地いい。

これから失われるすべてのものに対して儚さからくる美しさを感じていた。

私は空を見た。まだ、いつも通りの空がそこにあった。青い空、白い雲。今日、一番最初になくなるであろうその空を私はしっかりと目に焼き付けた。

少し歩いていると目の前から人がやってきた。それは私の彼氏の大谷 恭だった。いつも、やすちゃんと呼んでる。私はななって呼ばれてる。

「やすちゃん、今日でみんな死んじゃうんだね」と、私は静かに言った。やすちゃんはそれに対して

「そうだね。もっと生きたかったな…」

「私も思う。もっと生きたかった。まだまだやりたいことがあったのに…」

生きたかった。それが私たち2人が、いや、地球上の全ての人が思っていることだと思う。もっと生きたい。

「なな。いままでありがとうな。たのしかった。ななと付き合えてよかった!」

「やすちゃん、私こそいままでありがとう!私はやすちゃんと一緒に入れて幸せだった!」

いままでありがとう。私はこの言葉を今日言った。私はこれから失われる60年分の感謝を私は今、言った。

やすちゃん、いままでありがとう。そう、私はいい、やすちゃんにキスをした。

これからするはずだった分のキスを、なくなってしまう未来のキスをした。

何度も何度もありがとうといいながら…


そして、最期のときはきた。

未来は失われる。

私はいままでのすべての物事や関わってきた人々、これからおこる出来事、これから関わって行く人々すべてに感謝した。

ありがとう。私、田原 菜々音は幸せでした。







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