誕生日おめでとう!
あと1時間で私は死ぬ。
私が誕生した日のプレゼントは地球上のすべてを道ずれにする誕生日プレゼントだ。
人類の滅亡が視覚で実感できるようになった。
人類の滅亡は本当なんだ。
本当に私の誕生日は不幸ばかりだ。
私の名前は篠原 夢子。8月の炎天下の日に私は産まれた。お母さんからもお父さんからも愛されながら育った普通の娘だった。しかし、そんな普通の私の誕生日は幸せな日ばかりではなかった。
始めての不幸は5歳の頃、私の兄が熱中症で倒れたのだ。兄は意識不明で病院に連れて行かれた。命こそは助かったものの、もちろん、私の誕生日を祝うどころではなかった。
2回目の不幸は8歳の頃、お母さんとお父さんが私のケーキを買いに行っている時、交通事故に合った。お母さんは骨を折る怪我をし、お父さんは命に別状はないが、怪我がひどく、2週間入院した。
まだまだ、不幸はある。
去年の誕生日の話だ。
16歳の誕生日。そのころ、私には彼氏がいた。しかし、私の彼氏は誕生日の日は予定があるといいデートをしてくれなかった。私はその時は彼は忙しいんだな、と思っていた。
その日は友達と買い物をしに行くことにした。そこで、私は見てしまった。私の彼氏が他の女の子と歩いていたのだ。予定があるから私とは遊べないと言っていた人が他の人と一緒に買い物をしているのだ。私は目を疑った。何かの間違いかもしれない。間違いであってほしかった。私と私の友達は私の彼氏を後からつけた。私の彼氏は女の子と手を繋ぎながら、私が見たことがない笑顔で楽しそうにしていた。私の心はズタズタだった。私の友達は私のことを思ってか、もう引き返そうって言ったが私は引き返さなかった。まだ、私はその事実を受け止めれなかった。私はそのまま尾行を続けた。そして、公園に着いた。そこで私の彼氏と女の子はキスをしたのだ。私の頭は真っ白になった。心はしめつけられ、目からは自然と涙がこぼれる。辛い。辛い。あんなにも大好きだった彼が私を裏切った。私は泣きながら彼の前に出た。彼はとても驚いていた。彼の横にいる女の子は不安そうにしている。私は彼の顔を思いっきりはたいた。何も考えずにはたいた。そして、私は逃げるようにその場から走り去った。
そんな16歳の誕生日だった。
今日で失恋して1年か。
お母さんの怪我もお父さんの怪我も1年も経たずに治ったのに私の失恋の傷はまだ治っていない。
あれから彼氏のことを思い出して、何度泣いたことだろう。わからない。
泣きたくないから私は誕生日のことを思い出さないようにしている。嫌っている。もともと嫌いだった誕生日をさらに私は嫌いになった。その誕生日がやってきた今日、私は人類が滅亡するということを知った。誕生日の不幸はついにこの地球上の生物すべてに影響を与えてしまうのか。私の誕生日は私から命を奪うのか。
私の誕生日、本当に不幸ばかりだと思う。
しかし、もう、この不幸はこない。今日ですべて終わるから、今日で不幸は終わりなのだ。二度と私は誕生日で苦しむことはない。
そして、最期のときまであと1時間となった。私は外で空を眺めていた。いつもとは違う、異様な空を。そんな時、私のお母さんが私を呼びに来た。
「ケーキできたわよ!早く食べましょう!」
私は少し驚いた、あと1時間で死ぬのにケーキを食べるのか。私はそう思いながら、お母さんに言った
「えっ、なんでケーキを食べるの?もうすぐ死ぬんだよ?」
するとすぐにお母さんは言った
「何言ってるの?今日はあなたの誕生日でしょ?だから、ケーキを食べるのよ!さー、早く食べましょう!時間がないわよ!ケーキ食べられずに死ぬのは嫌でしょ?」
私はお母さんのその言葉で思った。
誕生日は私が産まれた日だ。誕生日は私が不幸になる日でもなく幸せになる日でもない。私が産まれた日。お母さんとお父さんを幸せにした日なんだ。そのことを私はいま知ったのだ。お母さんとお父さんに対する感謝とともに涙があふれてきた。そして、私は自分にこう言った。
「誕生日おめでとう!」
午後6時ごろ、篠原 夢子は家族に誕生日を祝われながら、最期のときを迎えた。
最期の誕生日を幸せに迎えることができた。




