↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/12

第一章9 「ええやん!よく見たらべっぴんさんも多いし、女ばっかりの世界は男からしたら天国やね」

「クスオ様、待ってくださーい!」

「待ってくださーい!


 依頼の受注を済ませた双子がギルドの外へ飛び出すと、先に出た九州男はすでに腹を空かせ、通りで飲食店を物色しているところだった。


「クスオ様、怒ってますか? この世界のことちゃんと説明しなかった私たちに……」


「なんで? 別に怒っとらんばい。そんなことより、腹減ったけん飯食って帰ろうや」


 意外にもけろりとしている九州男に、双子はほっと胸をなでおろす。


「良かった……。では、あの店はどうですか? お肉もお魚もありますし、お酒も提供しているはずです。基本的には家族連れが多い大衆食堂なんですが」


「ふーん。ジョイフルみたいなもんかね。そこでよかよ」


※ジョイフル……九州地方に本社があるファミリーレストラン


 ジョイフル(仮)こと大衆食堂に入店した三人。

 九州男は麦酒(エール)と肉料理を、双子は魚料理を頼んだ。

 店内は多くの人間で賑わっているが、やはりそのほとんどは女性のようだ。


「ふうん。確かに女のほうが多いごたるね」


※ごたる……ようである の意


「はい、特に街に出てくるのは女性が多いですね。男性は家にいることが多いです」


「ええやん! よく見たらべっぴんさんも多いし、女ばっかりの世界は男からしたら天国やね」


「……そう、ですか?」


 無邪気に笑う九州男に、双子は――特にクルクルは、全く納得がいっていなそうだった。


「男性と言うだけでちょっと珍しいので、声をかけられたり、絡まれたりすることもありますよ。僕も、普段は男性とバレないように変装してますし……」


「なんね。やけんあんたあんなフードやら布やらで顔隠ししちょったとね」


「まあ、はい……」


「情けない男やね~。俺が鍛えちゃろうか?」


「遠慮しておきます……」


「お待たせしましたー」


 店員が料理を運んでくると、九州男は早速がっつき始めた。

 鶏肉(らしきもの)をわしづかみにして口に運ぶ。

 大ぶりの鶏肉らしき塊をわしづかみにし、口へ運ぶ。よく言えば豪快、悪く言えば粗野な食べ方である。

 対照的に、双子はフォークを使い、丁寧な所作で魚料理を食べ進めていた。

 

「うん、うん、飯はまあまあやね。酒はもっと良いものが飲みたいばってんが。明日からはモンスター退治に行くんやろ? バンバン稼ごうや!」


「あ、はい。クスオ様さえ良ければ、依頼をこなしてランクを上げていきたいと思っています」


「おうおう。まあ心配せんでよか。俺がいればモンスターなんか楽勝ばい」


「はい! クスオ様ならあっという間にAランクになれますよ!」


「当たり前たい!」


 酒も飲み、ガハハと笑う九州男。

 異世界転移して来た人間を導く役割の双子は、方向性が見えてきて一安心である。


「お前らまだ食い終わっとらんと? やったら……おーい店員、さっきの酒もう一杯くれや! あとつまみになるもん適当に持ってきて!」


「はーい、ただいまー!」


 店員へも当然のようにタメ口で話すタイプの九州男であった。



+++++++++++


 

 森の中をミルミルが駆ける。

 両手に短剣を持ち、まるで羽が生えているかのように軽やかに木々の間を縫っていく。

 ミルミルの進む先にはモンスターが一匹。大型のイノシシのようなモンスターが、ミルミルから逃げるように走っている。木々に邪魔され思うようなスピードが出せないのか、小回りの利くミルミルの方が速い。


「ふっ!」

 

 追いついたミルミルが短剣を振るい、イノシシの左側面の皮膚を裂く。

 しかし、大イノシシの皮膚は分厚く、硬い毛皮に覆われているため致命傷には至らない。


「やっ! はぁっ!」


 それでもミルミルは執拗に左側面を切りつける。

 血が舞い、大イノシシの硬い毛が赤く染まっていく。


「グモウ!」


 大イノシシはそれを嫌ってか、ミルミルとは反対方向に逃げ出した。

 その先には――。


「クスオ様! そっちに行きました!」


「叫ばんでもわかっとる」


 ぶうんと風を切る音がした。


「グモ!?」


 九州男の振るう金属のハンマーが大イノシシの顔面に真正面から直撃する。

 大イノシシの走る勢いと九州男の規格外の腕力があいまって、森に物凄い轟音が響き渡る。


「グ……モ……」


 ズシンという地響きとともに、大イノシシが巨体を揺らして倒れ伏した。


「やりましたね! クスオ様! 私たち結構相性いいかもしれませんね!」


 九州男達が冒険者登録を行ってから、10日ほどが経過していた。

 九州男と双子は順調に依頼をこなし、九州男のランクは早くもDランクまで上がっている。

 自身のランクより上のランクをハイペースで達成しているためである。

 ミルミルが陽動する、あるいは動きを止めたところを、九州男が仕留める。

 そのスタイルがよくハマり、一日に数件の依頼(いずれもモンスター討伐)を成功させていた。


「相変わらず便利やね。そのバッグ」


「そう……ですか? クスオ様の世界にはもっと便利なものがたくさんあるって聞きますけど……」


 大イノシシを解体しながら、九州男とミルミルは魔法鞄(マジック・バッグ)に換金用の素材や魔石を詰め込んでいた。

 魔力によって内部の容量が拡張されたり、冷やす・温めるなどの特殊な力が付与されている鞄だ。これのおかげで、冒険者たちは巨大なモンスターの素材を持ち運んだり、大量の武器や薬草を携帯できている。


「まあ確かに、俺の世界にしかないものもいっぱいあるばってんが、魔法関連の便利さはびっくりやね」


「そうなんですねぇ。あ、このモンスターの魔石、結構レアかも! Cランクの割にはかなり強かったですもんね~」


「まあこれぐらい楽勝たい! しかし……まあたこのハンマーもダメになってしもうたばい」


「ほんとだ……」


 大イノシシの顔面を粉砕したハンマーだったが、その衝撃に耐えきれず、柄からぐにゃりと無惨に折れ曲がってしまっていた。


「まあた武器買いに行かないかんやん。もっと丈夫な武器ばないと?」


「クスオ様の力が強すぎるんですよね……でも確かに、そろそろきちんとした武器を作ってもらったほうが良いかもしれませんね」


「作ると? いつもの武器やで買うとじゃなしに?」


「はい。ある程度ランクの高い冒険者になると、自分に合った武器をオーダーメイドで作ってもらうのが冒険者の通例なんです。私の短剣もそうですし、レイラ様なんかはたくさん専用の武器を持っているらしいですし……。クスオ様もランク以上の実力をお持ちなので、鍛冶屋さんに行って作ってもらいましょうか。そろそろ使う武器も固定したほうが良いかもしれませんし!」


「専用の武器……いいやん!俺結構ゴツい武器好きっちゃんね!」


「では決まりですね!私もそんなに詳しくありませんが、何件か知ってる鍛冶屋があるので、回ってみましょう!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。