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第74話

「さあアルト。我の成長したこの魅惑的なボディで、システムごと世界のすべてを狂わせてやるのじゃ……んっ」

「私にもアルトの愛を刻み込んでくれ。もう子供扱いとは言わせないぞ……」


庭のふかふかな土の上に押し倒された俺の視界は、限界突破した二つの極上の柔らかさによって完全に塞がれていた。


金色の長い髪を波打たせ、女神の彫刻すらひれ伏すほどの豊満なプロポーションへと成長したレム。

そして、漆黒のドレスが弾け飛びそうなほどの妖艶な曲線美と、ミステリアスな色気を纏った大人のネリア。


マスコット枠だったはずの二人が、完全に『メス』の顔をして俺の胸元にすり寄ってくる。

密着する肌から伝わる熱と、神と冥界が放つ致死量の大人のフェロモンに、俺の村人Aとしての理性がゴリゴリと削られていく。


「ちょ、二人ともストップ! 急に大人になられても、目のやり場に困るっていうか……近すぎっ!」

「何を照れておる。お前がシステムの理を壊してまで我らを『女』にしたのじゃ。最後まで責任を取るのが男であろう?」


レムが艶やかな唇を近づけ、俺の首筋に甘い吐息を吹きかける。

俺の心臓が早鐘を打った、まさにその瞬間。


ズドガァァァァンッ!!


俺たちのすぐ真横の地面に、極大魔法の火球、神話級の剣閃、超重力球、そして大賢者の雷撃が一斉に着弾した。


「……泥棒猫が二匹、いっちょ前に大人の姿に発育したからって、私から正妻の座を奪えるとでも思ったのかしら?」


土煙の中から、サクリアが赤い瞳を爛々と輝かせながら姿を現した。

その横ではユエルが聖剣をギリッと握り締め、ミサリアは背後に巨大な死神の幻影を背負いながらフライパンを構えている。


「ふん! 胸が大きくなったくらいでアルトの隣に立てるなら、私がとっくに独占してるわよ!」

「お姉ちゃん、今日は神様と王女様を食材にして、神聖・冥界ミックスサラダを作ってあげるわ」

「特級監査官として、不当な急成長(脱税)は許しません!」

「騎士団長たるもの、ハレンチな振る舞いは見過ごせないぞ!」

「お兄ちゃんに破廉恥なことしないでよねっ!」


サクリア、ユエル、ミサリア、イルマ、タチアナ、リゼ。

六人のヒロインが、大人になったレムとネリアに対して最大級の殺意と嫉妬を放ち、完全包囲網を敷いた。


「ええい、五月蝿いのう! 成長期が遅かっただけじゃ! アルトの隣は我の特等席じゃ!」

「冥府の深淵に沈めてやる、小娘ども!」


大人になったレムとネリアも全く引かない。八人の規格外ヒロインによる、宇宙規模の第三次世界大戦が俺の上で勃発しようとしていた。


「——お前ら、いい加減にしろ」


俺はため息をつきながらゆっくりと身を起こし、俺の胸ぐらを掴んで睨み合っているレムとネリアの頭に、左右の手でポンッと軽くデコピンを放った。


「あうっ」

「ひゃんっ」


「姿が大人になっても、中身は全然変わってないな。喧嘩するなら、今日のおやつは抜きにするぞ」


俺が呆れながらも優しく頭を撫でてやると、絶世の美女になった二人の顔がみるみるうちに真っ赤に染まり、かつての子供時代のように「ふにゃあっ」とだらしなく溶けてしまった。


「あ、アルトぉ……撫でるの反則じゃ……」

「お前の手は、大人の私でも逆らえないのだ……」


完全に骨抜きにされた二人を見て、俺は周囲を取り囲む六人にも視線を向けた。


「みんなも武器を仕舞え。……誰が一番とか、特等席がどうとか、もうそういうのやめないか」


俺の静かな言葉に、サクリアたちがハッとして動きを止める。

まさか、ついに誰か一人を選ぶつもりなのか——そんな緊張感が庭に走った。


「俺は、お前たち全員が大切だ。一人でブラックギルドの残業に耐えてた俺に、帰る場所と温もりをくれた。誰か一人を選ぶなんてできないし、誰か一人でも欠けるなんて絶対に嫌だ」


俺は真っ直ぐに八人の顔を見渡し、大きく息を吸い込んだ。

さっき、ハンマーで俺の家のコタツのルールを世界の法則に上書きしたばかりだ。だったら、もう常識になんて縛られる必要はない。


「……だから、俺たち全員で『家族』になろう。全員、俺のお嫁さんになってくれ」


シン、と。

庭の空気が、時が止まったように静まり返った。


一秒、二秒。

やがて、ヒロインたちの顔が一気に沸騰したように真っ赤に染まった。


「ぜ、全員……!? アルト、それってつまり……私たちが全員、正妻ってこと!?」

サクリアが震える声で尋ねる。


「ああ。もちろん、お前たちが嫌じゃなければだけど」

俺が照れくさく頭を掻くと、八人の瞳から大粒の涙が溢れ出し、全員が同時に歓喜の悲鳴を上げた。


「嫌なわけないじゃないっ! アルトのばかぁっ!」

「わあああっ! アルトのお嫁さんだぁっ!」

「お姉ちゃん、毎朝最高のご飯を作ってあげるからね!」

「わ、私が家計の監査やりくりを完璧にこなしますっ!」

「騎士団は辞める! 私は専業主婦になるぞ!」

「お兄ちゃん……ううん、あなたって呼ぶねっ!」

「我の夫じゃー!」

「冥界を挙げて祝杯だ!」


ドサァァッ!!!


歓喜に沸く八人の花嫁たちが、四方八方から俺に向かってダイブしてくる。

俺は再びふかふかの土の上に押し倒され、致死量の愛と涙とキスを全身に浴びることになった。


「よし。そうと決まれば、さっそく結婚式の準備だ。俺が最高のドレスと指輪を作ってやるからな」


もみくちゃにされながら俺が宣言すると、八人の笑顔が太陽よりも眩しく輝いた。


世界システムすら書き換えた、規格外の男と八人の最強ヒロインたち。

究極のハーレム・スローライフは、いよいよ最後にして最大のイベント『ドタバタ合同結婚式』へと向かって爆走を始めるのだった。

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