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第25話

ゴゴゴゴゴッ、という地鳴りと共に、俺が割った巨大なクレバスから山のように巨大な一本角のモグラが這い出してきた。

全身を分厚い岩の鎧で覆った、神話級の地底竜のようだ。


咆哮による強烈な衝撃波で、調査官が立っていた足元の土が大きく崩れ落ちる。


「きゃあっ」


バランスを崩し、深いクレバスの底へと落ちていく調査官。

俺は持っていた鍬を放り出し、とっさに手を伸ばして調査官の細い腕をガシッと掴んだ。


そのまま力任せに引き上げ、俺の胸の中にすっぽりと収める。


「危なかったな。大丈夫か、調査官さん」

「あ……ええ、アルト様……」


俺の腕の中で、調査官は心臓をバクバクと鳴らし、耳の先まで真っ赤に染まっている。

ふと、俺の視線が調査官の胸元で揺れる銀色のギルド職員証に止まった。


「『イルマ』……それが君の名前なんだね」

「っ……はい。特級税務調査官、イルマと申します」


イルマは顔から火が出るほどの熱を帯び、消え入りそうな声で答えた。

仕事一筋で心の潤いを失っていた真面目な公務員が、完全に恋に落ちた乙女の顔になっている。


「イルマか、いい名前だ。危ないから俺の後ろに隠れてて。ちょっとそこの特大モグラを害獣駆除してくるから」


俺はイルマを背後に庇い、腰に差していた害虫用のハエ叩きをスッと構えた。

頼もしい背中を見つめ、最強の税務調査官が熱っぽい吐息を漏らす。


だが、その甘い空気を許す同居人たちではなかった。


「……私のアルトの胸に抱かれて、さらに親しげに名前まで呼ばれるなんて。随分といいご身分ね、公務員」

「アルト! 私だってピンチになったら名前呼んで助けてくれるよね」


背後から、地底竜の咆哮すら掻き消すようなサクリアのドス黒い殺気と、ユエルの理不尽な嫉妬が爆発する。

俺がハエ叩きを振り下ろすよりも早く、激怒したヒロインたちがイルマの身の安全ごと地底竜を消し飛ばそうと、極大魔法と聖剣を同時に構えて――

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