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11話

どうしてこうなった。


「基本部分は一〇ミリの金剛銀アダマンティンに二〇ミリの緋炎鋼ヒヒイロカネ合金にセラミックとチタニウムの複合素材をサンドイッチして内側には魔力伝達率を向上させるために魔術紋を組み込んだ二〇ミリの真銀ミスリルを配置した魔導複合装甲マギコンポジットアーマーに換装、特に正面装甲は金剛銀アダマンティンを三〇ミリに増やして一〇〇ミリにしてあります。理論上はこの装甲は魔力を通せば六〇ミリで均質圧延鋼一二〇〇ミリに匹敵すると計算されているでありますよ」

「一二〇〇ミリだと、それなら確かに陸上戦艦の主砲の直撃も耐えられるかもしれねぇな。んでもよ、重量はどうなんだ重量は」

「重量は通常時で同じ厚さの均質圧延鋼の八〇%、魔力伝導時はアイドリング状態で更に五%の軽減が可能でありますね」


ロッセリーニ整備長を通したのはいいのだが、あのご老人、何故かうちの整備長の埋火と意気投合している。

埋火は別に偏屈な訳じゃないが、端的に言えばメカフェチだ。


ティーガーに興味津々だったので、整備の邪魔をしないならと当たり障りのない部分を見せていたのだが、その整備の様子を見て何か思う所があったらしい。

最初は邪魔しないように質問していたのだが、それに倍ぐらいの勢いで埋火が答えていたら、あっという間に盛り上がってそれに倍する勢いで質問を返して、今ではMG42の発射音ぐらいの勢いで会話している。

さっきの台詞なんてあれ息継ぎ無しで一息で喋ったぞ。

あそこまで早口だと、倍速ぐらいで回している感じでもう何言ってるか分かんねぇ。


「敷嶋、あいつらの会話聞こえるか?」


「一応認識は可能ですが……」


「埋火と同じ速度で会話しているのが凄いな」


「はい」


二人して顔を見合わせる。

敷島の呆れ顔ゲット、ちょっとこれはレアだな。

無表情セメント系メイドだったはずだが、表情がコロコロと変わってとても楽しい。

眼福である。

良きかな良きかな、仲良きことは良きことかな……いや、これは違うな。


「ご主人様!」


「お、おう、どうした?」


突然埋火がこっちにやってきた。


金剛銀アダマンティンのインゴット一つ使っていいのありますか?」


「どうする気だ?」


「ロッセリーニおじいちゃんが修理中のⅢ号を改造するので手伝ってみたいであります」


「おじいちゃん?」


「はい、孫娘と同じ位の年なのでそう呼んで欲しいそうでありますよ」


軽く頭を抱える。

あのご老人、堅物そうに見えたけど……いやティーガーへの喰いつきはマニア感バリバリだったわ。

結局、あのⅢ号直さないでこっち来たのか。


まあまだ結構な量はあるから、一つぐらいなら何とでもなるけど、将来的に陸上戦艦かドラゴンキャリーを手に入れたり、拠点を確保したら大量に使うからなあ。

掘れる場所を探しておきたい。


「ロッセリーニ整備長に頼まれたのか?」


それを聞いてブンブンと頭を左右に振る埋火。


「いえ、個人的な趣味でありますよ」


「個人的な趣味?」


「はい、おじいちゃんに話を聞いていると、何かこっちの技術結構違うみたいで、だったら魔法金属使ったらどうなるか試してみたいんであります」


技術が違う?

どういうことだ?

興味が出てきたので、金剛銀アダマンティンの二〇キロインゴットを収納から取り出す。

ついでに真銀ミスリルも出してみる。

あー、二〇キロがスマホぐらいの気分で持てるわ。

この肉体スペックとんでもないぞ。


敷島と埋火を引き連れて、ロッセリーニ整備長の所に行くと、ティーガーを見上げて口の中でぶつぶつ呟いている。


「ばらすのはダメですからね」


「ああ、何だお前さんか」


「そんなにティーガーお好きなんですか?」


「もちろんだ、昔一度見ただけだが、このマッシブなボディ、正面から攻撃を受け止める垂直に立ち上がった男らしい装甲、接地面の広い脚部と後部履帯、すらりと長い主砲、これぞ漢のゲシュペンストって奴じゃねえか」


おっと、段々べらんめえ口調になって来たぞ。

まあティーガーだって、食事の方向から敵の攻撃を受けろ、ってマニュアルに書いてあるけどな。

食事方向から撃たれると小さな傷しか受けない、敵は怒るが君は嬉しい、って。

逆に危険域はクローバーの葉と言われて、ここに敵を入れないようにしろ、と。

……まあ、それは実車の場合で、うちの魔改造ティーガーの場合、確かに正面から受けても簡単には貫通しないんだけど。

それでもゲーム中だと想定外の攻撃があるから、食事の方向は大事だ。

さっきのヒュドラの攻撃も、とっさに盾を斜めにして良かったわ。


それはともかく、両手のインゴットを軽く振って見せる。


「何かうちの子によれば、変わった技術をお使いとか」


「おっ、コイツが金剛銀アダマンティンか?」


興味はあるが、触っていいのか判断をしかねているロッセリーニ整備長、あーもう、おやっさんでいいか、それが手をワキワキさせている。


「どうぞ、触っていいですよ。埋火が知らない技術なら、自分も興味があります」


「どれ」


右手に持った金剛銀アダマンティンのインゴットを差し出すと、それを受け取るおやっさん。


「うおっ、何だこれ」


持った瞬間、おやっさんは取り落としそうになるのを、慌てて両手で受け止める。


「おめぇさんが楽々と持ってるから軽いと思ったら、大した重さじゃねえかよ」


「二〇キロあります」


「マジか……んで、そっちは?」


おやっさんはティーガーの横に置いてあった整備用の台にインゴットを置くと、こっちの左手にあるインゴットを指差す。


「こっちは真銀ミスリルですね。内部コーティングとか、魔力伝導回路とか、エンジンブロックとかによく使います」


「いや、真銀ミスリルなんて、薄っすい箔一枚で数か月は飯食えるだろ……そんな塊あったらゲシュペンスト買ってお釣りくるわ」


うーん、ホントに魔法金属珍しいんだな。

在庫調べておかないと。


「これをどうするでありますか!」


左手のインゴットを後ろでうずうずしていた埋火が奪い取ると、おやっさんに差し出す。


「お、おう、使っていいのか?」


「ええ、どうぞ」


「んじゃまあ、ちょっと借りるぞ」


二つのインゴットを台の上に置くと、手で触ったり、片目をつぶって指で測ってみたり、重さを量ったりしている。


「こっちの真銀ミスリルの方が良さそうだな。金剛銀アダマンティンは手に負えそうもねぇわ」


そう言うと、真銀ミスリルのインゴットを手に取る。

埋火だけじゃなく、風花と氷柱も興味津々で見つめていて、誰かが息を吞んだ音がする。

おやっさんが目を閉じてすうっと息を吸うと、気合を入れて叫んだ。


魔術炉マジックフォージ!」


直後、手にしたインゴットが猛烈な光を発する。


「うおっ眩しっ」


光が収まると、インゴットが二メートルほどの長さの丸棒に変化していた。


「えっ、何で!?」


「鍛冶魔法知らんのか?」


「鍛冶魔法?」


マジか、この世界、魔法あるのか!?


「奇跡は無さそうでありますが」


おい埋火、人の心にツッコミ入れるな。


「わしらドワーフはこうやって金属を加工しておる」


ちょ、おやっさんドワーフだったの!?

いやまあ世界観的にいるのは知ってたけど、ドワーフってさ、某指輪とかみたいにもっと背が低くてビヤ樽みたいで髭が長いもんだろ。

パンスト的にはそれに加えて丸太みたいに太い両手が膝まで届くぐらい長くてさ。

おやっさん、髭はあるけど短いし、ヒョロヒョロと細長くてドワーフと正反対じゃん。


ヒャッハー!

評価入ってる、ありがとうございます(小躍り)

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