八の太刀 ”頭に当てちゃダメじゃない!!”
<前回までのあらすじ>
ひょんなことから現代に降り立った居合い抜きの開祖、林崎甚助。
降り立ったはテニスの大学選手権決勝。
そこで居合い抜きの技を使い、相手の頭にボールを当てることで優勝した。
また、現代にいた林崎甚助の子孫、林崎甚之助は逆に甚助のいた戦国時代にタイムスリップしていた。
そして、数日が経ち、現代にタイムスリップした居合い抜きの開祖、林崎甚助が次はITF(国際大会)に挑むこととなった。
その予選一回戦、甚助は再び相手の頭にボールを当てることで勝利したのだった。。。
甚助の元に涼華と杉本キャプテンが駆け寄った。
杉本キャプテンが苦笑いをして甚之助に声をかける。
「おい、甚之助!この前ので味を占めてもうてるやんけ。」
甚助が返事しようとしたが、涼華が甚助の手を引いてコートの外に出ていった。
「ちょっ、ちょっと!涼華ちゃん!?どこいくんや?」
涼華は杉本キャプテンの声にも反応せず、そのまま甚助を連れてコートを後にした。
「待ってや!涼華ちゃん!!」
杉本キャプテンも後を追ったが、涼華と甚之助を見失った。
涼華が甚助の手を引き、クラブハウスの小さな会議室に入った。
幸い誰もおらず、涼華が甚助を奥に連れていった。
そして、すごい剣幕で怒り出した。
「甚助さん!!この前、あれだけルールの説明したでしょ!?
頭に当てちゃダメじゃない!!
そりゃ文明開花や産業革命の話が難しくて大変だったのは分かるよ。
突然環境が変わったから、それも理解する。
でもね、甚助さんは甚ちゃんの夢を継ぐって約束してくれたじゃない。
じゃあ、ちゃんとテニスを、、、」
ここから涼華の説教がとうとうと続いた。
甚助は涼華の剣幕に押されていた。
”これは本当に別人なんじゃろか?
まるで涼乃じゃ。涼乃そっくりじゃ。
怒った時の目の釣り上がり具合といい、荒い鼻息といい、怒り出したら止まらんとこなぞ、、、”
突然涼華が顔を接近させてきた。
「ねえ!ちゃんと聞いてるの?」
「お、おう。。しかと聞いておるぞ。」
そこから2時間後。
「ねえ!分かったの?だから、もう頭に当てちゃダメだからね。」
疲弊した甚助がそこにいた。
「お、お、、う。しかと心、、得た。。」
すると外からコールが聞こえた。
「それでは只今より予選2回戦のコールを行います。」
「あっ、やばっ!ごめんなさい。甚助さん。もうこんな時間。。。次の試合が。」
「”死合い”!今日はまだあるのじゃな!あい分かった。」
「うん。次の試合に勝てば本戦出場だし、ここ大事だから頑張ってね。」
「おう!!」
涼華がコートの観客席に来た。
すでに杉本キャプテンが来ていた。
「あっ、涼華ちゃん。あれからどこいっとったんや。
二人とも全然姿見かけへんかったけど。」
「あー、ごめんなさい。
また頭当てちゃうもんだから、ちょっと甚助さんに注意してたんです。
ちゃんとテニスしてもらわないと。」
二人が話している間に、主審がコールした。
「The best of three set match, Echizen service to play!」
杉本キャプテンが答えた。
「まあ、そやな。
ちょっと落雷事故からの甚之助。
プレイスタイルがなんちゅうかおかしいからな。
涼華ちゃんの言うことも分かるわ。」
「でしょ!?こんなんじゃ甚ちゃんが戻ってきても悪名が。。。」
ヴォッゴォーーーーーーン!!
コート側で衝撃音が走った。
二人がコートを見た。
そこにはラケットを振り抜いた甚助の姿が。
そして、反対側コートではサーブを打った選手が一歩コートに入った位置で”く”の字になって立っていた。
その選手は動きを止めていた。
わずかの後、その選手のお腹からボールが転がり落ちた。
くの字になった選手はそのままの形でコートに倒れ込んだ。
倒れた選手の口からは、テレビではキラキラした加工がされそうなものが出てきていた。
主審が慌てて駆け寄る。
主審の呼び掛けで起き上がる選手。
困惑した様子だったが、何とか立ち上がった。
しかし、そこに見るは殺気立った甚助の姿。
選手は震えだし、一気に戦意喪失した。
主審が選手の意志を確認し、両手を振ってコールした。
「越前選手棄権のため、林崎選手の勝利!!」
涼華が前回以上の剣幕でコートに入ってきた。
甚助が涼華に言った。
「どうじゃ?頭に当てんかったじゃろ?」
「バカーーーー!!!」
予想と異なる涼華の形相に甚助は逃げ出した。
「なんじゃ!なんでじゃ!!?」
涼華が逃げる甚助を追いかけていた。
甚助を捕まえ、息を切らす涼華と困惑の表情の甚助、何がどうなっているのか不明な杉本キャプテンがクラブハウスに入った。
すると、事務局の者が林崎甚之助を見て近寄ってきた。
「あのー、すみません。林崎甚之助選手ですよね?」
「いかにも。拙者は林崎甚助、否、甚之助じゃが!!いかがしたかの?」
事務局の者がその返事に苦笑いをしながら続けた。
「えーとですね。事務局でもちょっと議論をしていたのですが。。。
その、、言いにくいんですけど、ボールを相手選手に当てたのはまさか故意ではないですよね?」
「あー、あのつぶてのことじゃな。」
ニヤッとした甚助を涼華が見て、ハッとなにかを悟った。
そして、さっと横入りして、涼華が答えた。
「もちろんですよ!わざとな訳ないじゃないですか!ねー。」
涼華が甚助の方を向いた。
不思議そうな顔をした甚助に涼華が睨みを聞かせ、甚助のお尻をつねった。
驚いた甚助が答える。
「うおっ!しごく当然ではござらんか。涼乃の言うとおりでござる。」
苦笑いの事務局が答える。
「ですよね。分かりました。今回は不問とさせていただきます。」
涼華がホッとした。
「ですが、明日からの本選で同じようなことが起こった場合、申し訳ありませんが、失格とさせていただきますので、その点だけご了承ください。では。」
そういうと事務局の者が去っていった。
<次回予告>
涼華の悩み。
それは甚助に何度ルールを説明しても理解してもらえないこと。
なのに明日は本選一回戦。
その時、あるものが涼華の目に飛び込んできたのだった。
次回、九の太刀、”どうやってルールを、、、”
次回も乞うご期待!!




