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侍ウィンブルドン  作者: トミー・フィロソフィー
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10/11

九の太刀 ”どうやってルールを、、、”

<前回までのあらすじ>

 ひょんなことから現代に降り立った居合い抜きの開祖、林崎甚助。

 降り立ったはテニスの大学選手権(インカレ)決勝。

 そこで居合い抜きの技を使い、相手の頭にボールを当てることで優勝した。

 また、現代にいた林崎甚助の子孫、林崎甚之助は逆に甚助のいた戦国時代にタイムスリップしていた。

 そして、数日が経ち、現代にタイムスリップした林崎甚助が次はITF(国際大会)に挑むことに。

 その予選一回戦。甚助は再び相手の頭にボールを当てることで勝利。

 だが、それを見た涼華は「頭に当てちゃダメじゃない!」と激怒。

 怒られた甚助が迎えた予選二回戦。

 次は相手の腹にボールを当てて勝利した甚助。

 もちろんさらに激怒する涼華。

 そして、運営から”次に相手に当てた場合、失格だ”と言われたのだった。

 さて、甚助、どうすることやら。


 

 甚助が出場したITF予選が終わった日の夕方。

 とある雑誌編集事務所。

 部屋の前には”月刊 テニス研究所(ラボラトリー)”と書かれたプレートが貼られていた。

 その部屋の奥。

 編集長がふんぞり姿勢で椅子に座り、組んだ足を机に乗せ、タブレットで記事を見ていた。

 編集長の机の前にはある編集記者が立っていた。

 ”インカレ王者、林崎甚之助 ITF予選突破!プレイスタイルの変化には何か秘密があるのか?”

 編集長が記事に添付された写真と試合の動画を見た後、編集記者の方を見た。

 編集長が首をかしげて言った。

「松田よ!

 いっつも言ってるだろうが!

 おめーの記事は堅い(かてー)んだよ!!」

 編集長が足を下ろし、立ち上がり、机に片尻を乗せて吐き捨てた。

「おめー、この写真と動画見たらタイトルはこれっきゃねーだろ!

 ”侍、甚之助!ITF予選を一振りで斬る!!”

 今の時代、バズらせてナンボなんだからよ!

 これでいけよ!!」

 居合い抜きで振り切った林崎甚之助の写真が選択されていた。

 松田はフレームで芯を捉えることの難しさ、それ以上にあのスイングスピードの異質さを伝えたかった。

 だが、そのことにはほぼ触れることができず悔しさを滲ませていた。

 だが、松田の悔しさとは裏腹に、この記事は、夜アップされた途端、あまりの異質さにSNSでかなりバズり散らかした。



 涼華が甚助を連れて甚之助のアパートに戻ってきた。

 涼華は説教を続けながらも料理を作った。

 甚之助の好きだったハンバーグ。

 甚助がそれを食べて、あまりの美味しさに驚いた。

「なんじゃこれは!!

 うまい!!

 こんなうまいものがこの世にあるとは!!」

 涼華は思わず甚之助が喜ぶ姿を思い出し、涙を流した。

「甚ちゃん。。。」

「おお。。涼華どの。どうして泣くのじゃ。。。」

 甚助はその姿を見ておろおろしていた。

 食事も終わり、涼華が悩んでいた。

 ”甚助さんにどうすればルールを教えられるかな。。。”

 考えながら視線をキョロキョロさせた涼華の目に『あるもの』が映った。

 ふと涼華が思った。

 ”そういや、甚ちゃんと良くやったな。マ○オテニス。”

 その時、涼華が閃いた。

「これだ!!」

 涼華がゲーム機のコントローラを右手に持ち上に掲げた。

 ”タッタラタラー”

 まるで緑の服と帽子をかぶった青年がアイテムを掲げた時のように効果音が鳴っているようだった。

 涼華が甚助に向かって言った。

「甚助さん、今夜はこれで特訓よ!!」

 二人の試合 (死合い?)は次の日の朝まで続いた。



 次の日。ITF本選1回戦。

 甚助がコールされ、涼華は甚助を連れてコートに向かった。

 国際試合とは言え、有名な大会ではないため、普段はそれほど観客などいないはずだった。

 だが、コートに近づくにつれ、人だかりが見えた。

 その人々の視線は”林崎甚之助”に向けられていた。

 ”林崎甚之助”を指差し、こそこそ話している人もいた。

 不思議そうに回りを見ながらも涼華は何とか甚助をコートに送り出した。

 明らかにこのコートだけ観客の密度が違っていた。

 観客席に入れない涼華だったが、その中に杉本キャプテンの姿を見つけた。

 杉本キャプテンは自分の隣の席を指差して、涼華を呼ぶジェスチャーを見せた。

 涼華が観客席の杉本の横に行き、周囲を不思議そうに見回して言った。

「なんでここだけこんなに人だかりができてるんです?」

「なんや、涼華ちゃん。これ見てへんのかいな?」

 杉本が携帯を涼華に見せる。

 ”侍、甚之助!ITF予選を一振りで斬る!!”

「なんですか!?これ!!」

「昨日の夜、テニス研究所(ラボラトリー)っちゅう雑誌のホームページ。

 そこに甚之助の記事が出てて、それがえらいバズり散らかしてるみたいや。

 それでこれや。」

「ええ。。ようやくルール覚えたところなのに。。。

 こんな人だかりで甚助さん、大丈夫かな。。。」

「ん?ちゅーか、甚之助、やっとルール思い出した感じなん?」

「はい。ようやく理解したと思います。

 昨日一晩中マ○オテニスで説明しましたよ。

 質問したらちゃんと答えてましたので、たぶん大丈夫かと。

 でもそのせいであんまり寝れてないんですよね。」

 そう言い、”はーあ”とあくびする涼華。

「マ、マ○オテニスかいな。。。

 なんか甚之助、まだかなり重症みたいやな。

 っていうか、寝不足で大丈夫なんかいな?」

 そうこう話をしているうちに主審が試合開始のコールをした。

「The best of three set match, Hayashizaki service to play!」


<次回予告>

 ルールを理解した甚助。

 天下無双の剣技を合わせれば無敵かと思われた。

 だが、そう甘くはないのがテニスというもの。

 次回、十の太刀 ”入らん。。。”

 では、次回も乞うご期待!!


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