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侍ウィンブルドン  作者: トミー・フィロソフィー
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8/11

七の太刀 ”死合いじゃろうに!!”

<前回までのあらすじ>

 ひょんなことから現代に降り立った居合い抜きの開祖、林崎甚助。

 あるとんでもない方法でテニスの大学選手権インカレで優勝した。

 また、現代にいた林崎甚助の子孫、林崎甚之助は逆に甚助のいた戦国時代にタイムスリップしていた。

 そして、数日が経ち、現代にタイムスリップした居合い抜きの開祖、林崎甚助が次はITF(国際大会)に挑むこととなった。

 

 白いテニスウェアを纏った甚助は、甚之助が伸ばしていた髪を後ろで括っていた。

 甚之助が使っていたバンダナを使って、まるで侍の髷(まげ)のように。

 相対するは選手は日本人。20代後半に見える選手。甚助とネットを挟み、その選手は軽くステップをしたり、スウィングをしたりしていた。

「それではコイントスします。」

 慣れた手付きで審判がコインをトス。コインがコートに落ちた。

 コインを審判が拾い上げ、甚助と相対する選手にサーブかコートかを選択させた。

 相対する選手は迷いなくサーブを選択した。

 甚助と相手選手がコートのベースラインに移動した。

 相手選手はフォアサイドのセンターマークに近い位置に立った。

 甚助も同じようにセンターマークの近くで仁王立ちした。

 主審が審判台に上がり、センターマークに立つ甚助を訝しげな目で見たが、サーブの用意をしている選手を見てコールした。

「The best of three set match, Sato service to play!」

 周囲からまばらな拍手が起こる。

 ITFとはいえ予選。しかもお互い有名選手ではないため、そこまで観客は多くない。



 その観客の中にはテニス部キャプテンの杉本や涼華、部活メンバー何人かの姿もあった。

 不安そうな涼華が呟く。

「甚助さん、大丈夫かな。」

 ”名前間違ごうとるがな”と思いつつ返す杉本キャプテン。

「なんで?まだ記憶戻らへんの?」

「えーと。まだちゃんとルールを理解してるか。」

「え?まだそんな感じなん?」

「なんせやっと部屋の電気に慣れてきて、まだテレビとか携帯とかは。。」

 すると審判から視線と「静粛に!」の言葉が送られてきた。

「Please、、」

 杉本、涼華がわずかに頭を下げ、目で謝意を示した。


 甚助の相手選手がサーブの準備にボールをバウンドさせる。

 その時、相手選手が林崎甚之助に何かを感じた。

 ちらっと林崎甚之助の方を見た。

 普通ならフォアサイドのシングルライン(シングルコートのサイドライン)際に立つものだが、相手選手はコート中央に立っている。

 だが、感じたものは立ち位置(それ)ではない。

 異様なまでの殺気。

 相手選手の身体からそれが発せられているのを感じた。

 サーブをしようとする身体が急激に強張った。

 ”なんだ?これは。。。”

 一度サーブする姿勢を崩し、再びボールをバウンドさせる。

 ”落ち着け。。落ち着け。。。まずはいつもと同じワイドだ。”

 そう自分に言い聞かせ、相手を見ないようにボールを上げ、サーブを打った。

 見事なスライスサーブがワイドに入った。

 右利きのスライス。ボールはかなりコートの外に跳ねていった。

 甚助は、、、、微動だにしない。

 ボールが何事もなくコートの外で2バウンド目を迎えた。

 審判がコールする。

「15-0(フィフティーン、ラブ)」

 サービスエースに対して、ところどころから拍手が起こった。

 サーブをした選手がホッとしてボールボーイからボールを受け取る。

 その間、甚助が相手選手を睨んでいた。

 相手選手は次のサーブをするため、アドサイドに立った。

 サーブの姿勢を取り、林崎甚之助を見た。

 ”まただ。。。”

 再び恐ろしいほどの殺気を感じて身体が強張る。

 甚助は位置を変えずにコートの中央に立っていた。

 相手選手がボールをバウンドさせ、固くなった身体でスライスサーブをした。

 今度はアドサイドのサービスライン中央にボールが落ちた。

 スライス回転によって中央に立つ甚助側に曲がる。

 それでも甚助に当たるような軌道ではなかった。

 だが、その軌道を見た甚助。

 甚助の右目がピクッと動いた。

「死合いじゃろうに!気合いを入れて狙わんか!!」

 試合を見ていた観客の目はサーブが飛んでいった甚助側に移っていた。

 だが、次の瞬間。

 ビュンという風を切る音。そしてドォバーーーーンという衝撃音。

 瞬間の後、甚助の立ち位置がわずかにずれ、居合い抜きを振り抜いた姿になっていた。

 観客はその一瞬のまるで瞬間移動かのような変化に驚いた。

 だが、衝撃音は相手選手側から発せられており、全員がそちらを見た。

 目に映るは相手選手が地面に仰向けで倒れそうになっている姿。

 そして、その額には赤い跡が。。

 ドターーーン。

「え?」

 観客全員が目を疑う。

 仰向けで倒れて動かない選手。

 そして、高く舞い上がったボールが倒れた選手側のコートに落ちた。

 驚きを隠せない主審が審判台から降りてきて、倒れた選手に駆け寄った。

 主審が選手の肩を軽く叩くと選手がゆっくりと目を開いた。

 状況が理解できない選手が慌てて起き上がる。

 主審が選手に訪ねる。

「試合を続けられますか?」

 起き上がった選手が驚いた顔で主審を見た。その後、相手コートを見た。

 そこには殺気を纏い、仁王立ちしている甚助の姿が。

 相手選手の身体が一瞬で強張り震え出した。

 再び主審が問いかける。

「試合、できますか?」

 汗を吹き出す選手がコートにヘタり込み、ただ首を振った。

 主審がまるで格闘技のレフェリーのように両手を振ってコールした。

「相手選手棄権のため、林崎選手の勝利です!!」



<次回予告>

 再び相手にボールを当て、勝ってしまった林崎甚助。

 それはダメだと注意をする涼華。

 そして、同日に予選2回戦が行われることに。

 果たして林崎甚助は勝つことが出来るのか?

 次回、”頭に当てちゃダメじゃない!!”

 次回も乞うご期待!!


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