七の太刀 ”死合いじゃろうに!!”
<前回までのあらすじ>
ひょんなことから現代に降り立った居合い抜きの開祖、林崎甚助。
あるとんでもない方法でテニスの大学選手権インカレで優勝した。
また、現代にいた林崎甚助の子孫、林崎甚之助は逆に甚助のいた戦国時代にタイムスリップしていた。
そして、数日が経ち、現代にタイムスリップした居合い抜きの開祖、林崎甚助が次はITF(国際大会)に挑むこととなった。
白いテニスウェアを纏った甚助は、甚之助が伸ばしていた髪を後ろで括っていた。
甚之助が使っていたバンダナを使って、まるで侍の髷のように。
相対するは選手は日本人。20代後半に見える選手。甚助とネットを挟み、その選手は軽くステップをしたり、スウィングをしたりしていた。
「それではコイントスします。」
慣れた手付きで審判がコインをトス。コインがコートに落ちた。
コインを審判が拾い上げ、甚助と相対する選手にサーブかコートかを選択させた。
相対する選手は迷いなくサーブを選択した。
甚助と相手選手がコートのベースラインに移動した。
相手選手はフォアサイドのセンターマークに近い位置に立った。
甚助も同じようにセンターマークの近くで仁王立ちした。
主審が審判台に上がり、センターマークに立つ甚助を訝しげな目で見たが、サーブの用意をしている選手を見てコールした。
「The best of three set match, Sato service to play!」
周囲からまばらな拍手が起こる。
ITFとはいえ予選。しかもお互い有名選手ではないため、そこまで観客は多くない。
その観客の中にはテニス部キャプテンの杉本や涼華、部活メンバー何人かの姿もあった。
不安そうな涼華が呟く。
「甚助さん、大丈夫かな。」
”名前間違ごうとるがな”と思いつつ返す杉本キャプテン。
「なんで?まだ記憶戻らへんの?」
「えーと。まだちゃんとルールを理解してるか。」
「え?まだそんな感じなん?」
「なんせやっと部屋の電気に慣れてきて、まだテレビとか携帯とかは。。」
すると審判から視線と「静粛に!」の言葉が送られてきた。
「Please、、」
杉本、涼華がわずかに頭を下げ、目で謝意を示した。
甚助の相手選手がサーブの準備にボールをバウンドさせる。
その時、相手選手が林崎甚之助に何かを感じた。
ちらっと林崎甚之助の方を見た。
普通ならフォアサイドのシングルライン(シングルコートのサイドライン)際に立つものだが、相手選手はコート中央に立っている。
だが、感じたものは立ち位置ではない。
異様なまでの殺気。
相手選手の身体からそれが発せられているのを感じた。
サーブをしようとする身体が急激に強張った。
”なんだ?これは。。。”
一度サーブする姿勢を崩し、再びボールをバウンドさせる。
”落ち着け。。落ち着け。。。まずはいつもと同じワイドだ。”
そう自分に言い聞かせ、相手を見ないようにボールを上げ、サーブを打った。
見事なスライスサーブがワイドに入った。
右利きのスライス。ボールはかなりコートの外に跳ねていった。
甚助は、、、、微動だにしない。
ボールが何事もなくコートの外で2バウンド目を迎えた。
審判がコールする。
「15-0」
サービスエースに対して、ところどころから拍手が起こった。
サーブをした選手がホッとしてボールボーイからボールを受け取る。
その間、甚助が相手選手を睨んでいた。
相手選手は次のサーブをするため、アドサイドに立った。
サーブの姿勢を取り、林崎甚之助を見た。
”まただ。。。”
再び恐ろしいほどの殺気を感じて身体が強張る。
甚助は位置を変えずにコートの中央に立っていた。
相手選手がボールをバウンドさせ、固くなった身体でスライスサーブをした。
今度はアドサイドのサービスライン中央にボールが落ちた。
スライス回転によって中央に立つ甚助側に曲がる。
それでも甚助に当たるような軌道ではなかった。
だが、その軌道を見た甚助。
甚助の右目がピクッと動いた。
「死合いじゃろうに!気合いを入れて狙わんか!!」
試合を見ていた観客の目はサーブが飛んでいった甚助側に移っていた。
だが、次の瞬間。
ビュンという風を切る音。そしてドォバーーーーンという衝撃音。
瞬間の後、甚助の立ち位置がわずかにずれ、居合い抜きを振り抜いた姿になっていた。
観客はその一瞬のまるで瞬間移動かのような変化に驚いた。
だが、衝撃音は相手選手側から発せられており、全員がそちらを見た。
目に映るは相手選手が地面に仰向けで倒れそうになっている姿。
そして、その額には赤い跡が。。
ドターーーン。
「え?」
観客全員が目を疑う。
仰向けで倒れて動かない選手。
そして、高く舞い上がったボールが倒れた選手側のコートに落ちた。
驚きを隠せない主審が審判台から降りてきて、倒れた選手に駆け寄った。
主審が選手の肩を軽く叩くと選手がゆっくりと目を開いた。
状況が理解できない選手が慌てて起き上がる。
主審が選手に訪ねる。
「試合を続けられますか?」
起き上がった選手が驚いた顔で主審を見た。その後、相手コートを見た。
そこには殺気を纏い、仁王立ちしている甚助の姿が。
相手選手の身体が一瞬で強張り震え出した。
再び主審が問いかける。
「試合、できますか?」
汗を吹き出す選手がコートにヘタり込み、ただ首を振った。
主審がまるで格闘技のレフェリーのように両手を振ってコールした。
「相手選手棄権のため、林崎選手の勝利です!!」
<次回予告>
再び相手にボールを当て、勝ってしまった林崎甚助。
それはダメだと注意をする涼華。
そして、同日に予選2回戦が行われることに。
果たして林崎甚助は勝つことが出来るのか?
次回、”頭に当てちゃダメじゃない!!”
次回も乞うご期待!!




