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侍ウィンブルドン  作者: トミー・フィロソフィー
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6/11

五の太刀 ”ここはどこだ!?”

<前回までのあらすじ>

 雷に打たれ、テニスの大学選手権インカレ決勝の舞台に立った、居合い抜きの達人、林崎甚助。

 ポイントはあと1ポイントで勝利という状況。

 だが、相手のサーブを打ち返すことも知らず、ポイントが追い付かれそうになる。

 その時、相手のサーブが甚助目掛けて飛んでいった。

 甚助にボールが当たりそうになる。

 その刹那。

 ”水鏡一閃(すいきょういっせん)”

 甚助がラケットを居合い抜きのように振り抜き、フレームでボールを捉えた。

 ボールは相手の頭に一直線。それはまさに目にも止まらぬ速さで。

 ボールが相手の頭に当たり、衝撃音がコートに鳴り響いた。

 相手が倒れ、ボールは相手コートに落下。

 そして、甚助は試合 (死合い?)に勝利したのだった。


 

 雨に打たれながら甚助が倒れていた。

 なぜか女子の声がした。

「甚ちゃん、甚ちゃん、大丈夫?大丈夫?」

 ぱっと甚助が目を開けた。そして、おもむろに立ち上がった。

 降りしきる雨、そして目の前に倒れている男。

 その男から流れ出た大量の血と雨で大きな赤い水溜まりができていた。

「おわっ!!?なんだ、これは。」

 手には刀が握られていた。

「え?なんで?ラケット、、、じゃない。。。」

 その刀にはすでに流れかけているが血が付いていた。

 思わず刀を地面に落とした。

「もしかしてこれ、俺がやったのか?」

 甚助の身体をした甚之助が愕然とし、よろめいた。

 倒れている男から離れ、周囲を見回す。

「ここは、、テニスコートじゃない。なんで屋敷?なんだ?ここはどこだ!?」

 甚之助は自分の身なりにも驚く。

「なんで?はかま?しかも草履?」

 甚之助は頭の上に僅かに重さを感じた。

 頭の上を恐々(おそるおそる)触ってみる。するとそこには束ねられた髪の毛があった。

「これって、、、ちょんまげ?まるで武士みたいじゃないか!?」

 再び周囲を見ると屋敷を出る門が目に入った。

 なぜか甚之助は門に向かって走った。

 それはこの常軌を逸した状況から逃げ出したい一心からだった。

 門の扉を開き外に出るとそこには若い武士の格好をした男子が二人立っていた。

 雨を気にもせず、ずっと待ち構えていた様子だった。

 すると二人の男子が門から出た甚助に対して頭を下げた。

「おお!甚助様、お待ち申し上げておりました。よくぞご無事で。」

「ご無事ということはお父上の仇を討たれたということでございますか。」

 甚之助は思った。

 ”甚助?ちょっと違うけど、この人たち俺のことを知ってるのか?”

 甚之助は困惑しつつ、この状況について聞こうとした。

「あの、、えーと、、そうだ!あの、家って、なんで?」

 二人のうちの一人が何かを察したように答えた。

「そうでございますな。長い仇の旅は今宵をもって終わりましたゆえ、甚助様のお屋敷のある出立の地、出羽の国へ戻りましょうぞ。

 甚助様の許嫁、涼乃様も首を長くして待っておられますでしょう。」

 もう一人がバツの悪そうな顔をした。

 ”お前、また甚助様に。。。涼乃は拙者の許嫁ではござらん!とお叱りを受けるぞ!!”

 そういう目をもう一人の男子に向けた。

 甚之助が言った。

「え?涼乃?涼華ではなくて?」

 その返事に二人は豆鉄砲をくらった鳩のような顔になった。

 だが、一人が笑いながらすぐに返す。

「これは!!甚助様に一本、取られましたな。ははは。さすが、甚助様じゃ。仇を討ったゆえか、ご冗談の斬れも一段と増しましたな。」

 男子二人が笑いあった。

 ひとしきりの笑った後、一人が甚助の手に刀がないことに気がついた。

「甚助様、そういえば甚助様の愛刀”天の星流れ(アマノホシナガレ)”はどこですかな?」

「仇を討ち、その喜びから置いてきてしまわれたのでしょう。私めが取ってきますゆえ、お待ちくださいませ。」

 男子の一人が屋敷の中に入っていった。

 もう一人が甚助に話しかける。

「今日はお疲れになったことと存じます。今日の出来事はまた伝記に記されることと存じますが、今日はゆっくりと休まれてはいかがかと。

 もし此度の死合いにて編み出された技などございましたら、宿に戻られた後、伝記書をご用意させていただきます。」

「伝記書?」

「はい。伝記書は我々が常に持ち歩いておりますゆえ、ご安心を。」

 話しているところに男子が屋敷から鞘に納めた刀を持って出てきた。男子は何やら興奮した様子だった。

「さすが、甚助様じゃ。決着は一太刀であったようですな。

 あの斬り口は先日教えていただいた”昇龍影迅(しょうりゅうえいじん)”でございますか。」

「え、、あっ、、まあ。」

 甚之助が困惑しつつも頷いた。

「さすが!!我らが甚助様でございます。では、いざ出羽の国へ。」

 二人の男子と共に甚之助が歩きだした。

 甚之助が周囲を見回す。周囲は全てがまるで時代劇の風景のようだった。

 ”おい!夢なら早く覚めてくれよ。。。”


<次回予告>

 時代は再び現代に。

 タイムスリップした侍、林崎甚助。

 成り行き上、その元の身体、林崎甚之助の幼馴染みである涼華が世話をすることに。

 甚助にとっては全てが異なる世界。

 涼華はどうするのか?

 次回、”掛け違え”

 次回も乞うご期待!!


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