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侍ウィンブルドン  作者: トミー・フィロソフィー
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4/11

三の太刀 ”当たらぬわ!!”

<前回までのあらすじ>

 大学のテニス大会決勝。

 そこで林崎甚之助が雷に打たれた。

 戦国時代でも居合い抜きの開祖、林崎甚助が雷に打たれた。

 そして、居合い抜き開祖の甚助がテニス大会決勝に出場中の甚之助と入れ替わってしまった。

 ひょんなことから居合い抜き開祖が試合に出ることとなったのだった。


 

 審判が再開をコールした。

「ファイナルセット、タイブレーク6-4 林崎選手のリードから再開します。

 最後のポイントは無効とし、再度日向(ひなた)選手のサーブからです。」

 日向小次郎がベースライン、アドコート側センター寄りに立った。

 林崎甚之助の姿をした甚助は、杉本と涼華に教えられたことを思い出す。



「相手が反対側から打ってくるボールをそのラケットで打ち返すのよ。」

「らけっとがこれだということは分かったが、ぼーるとはなんじゃ?」

「ボールはこれや!」

 杉本がポケットから黄色いテニスボールを出した。

「この黄色い毬(まり)がぼーるか。これをこれで打ち返すんじゃな。」

「うん。そう。相手のコートに打ち返すのよ。」

「こーと?”こーと”とはなんじゃ?」

「コートは、、、その、あの、コートは、、コートだよ。。。」

 困り顔の涼華を見て、杉本が携帯を取り出す。

「ちょっと待ってや。」

 ChatGPT(チャッピー)に”テニスコートを解説して”と入れて出てきた絵を見せた。

「このシングルスコートの中、あー、えーと、とにかくや、相手がこっちに立っとるから、相手のこの枠内に打ち返すんや。お前は最初はここか、ここに立つんやで。」

 杉本が携帯に表示した絵を使って相手コートのシングルスエリアを指し、さらに反対側のベースライン、フォアサイドとアドサイドを指した。

 説明した後、杉本がテニスコートの絵を閉じた。ホーム画面に戻り、杉本の彼女の画像が表示された。

 甚助がそれに驚く。

「おっ、お主。その中に人が入っておるのか?」

 杉本が呆れた顔で言った。

「甚之助。。。お前、記憶喪失なんはええけどやな。

 そんなベタでお約束な台詞、言わんでええんやで。」



「ここじゃな。」

 甚助がベースラインのフォアコート側に行き、日向(ひなた)小次郎の方に向いて仁王立ちした。

「では、まいるぞ!!」

 アドコート側でサーブの構えをしていた日向小次郎が林崎を睨んだ。

「お前、ふざけんな。そっちだろか!!」

 日向小次郎がラケットでアドサイドを指していた。

 甚助がコート横に立っている杉本と涼華をチラッと見た。

 杉本は頭を抱えていて、涼華が反対側、アドサイドを必死で指差していた。

「ああ、こっちじゃな。。」

 甚助がアドコート側に移動する。

 そして、再び日向(ひなた)小次郎の方に向いて叫ぶ。

「では、まいるぞ!!」

 甚助がふと考える。

 ”うん?これはどうやって構えるんじゃ?まあよいわ。”

 甚助が低い姿勢になり、居合い抜きの構えを取った。

 それはまるでバックハンドの構えのようだが、さらにもっと身体を捻った姿だった。

 日向(ひなた)小次郎が甚助を見た。

「ふっざけやがっ、、、」

 その時、日向(ひなた)小次郎は林崎甚之助の身体から恐ろしいほどの殺気を感じた。

 小次郎の目には林崎の姿が今までの何倍も大きく見えた。

 "クソッ、何なんだこれは!おれ、あいつに殺されるのか。。。"

 林崎の鋭い目が小次郎に突き刺さる。

 小次郎は思うように身体が動かなくなっていた。

 それでも何とかトスを上げ、サーブを打った。

 それほど速くない。何の変哲もないサーブ。だが、一応サービスエリアには入った。

 ボールは甚助の右側1mちょっとを通過しようとしている。

 観衆たちは林崎の強烈なトップスピンフォアを予想した。

 だが、林崎甚助は低い構えのまま微動だにせず、ボールはそのまま甚助の後ろへと通り過ぎた。

 甚助が構えを解き、小次郎に向かって言った。

「拙者はここじゃ。そんなつぶてなぞ、当たらぬわ!!」

 だが、審判が気にせずコールする。

「5-6 林崎リーズ。」

 小次郎陣営から歓声が上がる。

「小次郎先輩、ナイスサーブです!!」

「小次郎、もう1本、もう1本キープ!!」

 周囲がガヤガヤする。

「雷に打たれておかしくなったんじゃね?」

「でもなんか構え、スゴくなかった?」

「こりゃもうダメだな。」

 そんな騒ぎの中、小次郎がボールを受け取り、フォアサイドでサーブの用意をする。

 甚助は何がどうなっているのか全く分からなかった。

 甚助が心の中で思った。

 "これの何が死合いなのじゃ?真ん中に網もあるし、それを越えてはならんと言うておったが、これでは相手を斬りつけることもできんではないか。皆目分からん。"

 すると、観客の中で涼華が叫んだ。

「甚ちゃん、打ち返すの!ボールを!!」

 甚助はそれを聞いてようやく理解した。

 "そういうことか!!あの黄色い毬を打ち返して、相手を仕留めるのじゃな!!"

 甚助が涼華を見て頷いた。

 涼華がニコッとした。そして、横の杉本キャプテンに言った。

「甚ちゃん、あれ?甚助さんか。理解したかもしれません。」

「そうか。おれにはそうは見えへんけどな。。。」

 杉本はさっきのチャンスボールをみすみす見逃した甚之助はよほどの記憶喪失だと思った。

 甚之助の姿をした甚助はまだアドコート側にいた。

 それを見た杉本が涼華に言った。

「あいつ、ホンマに重傷やな。まだアドにおるで。」

 すると涼華が叫ぶ。

「甚ちゃん!!逆側、逆側!!」

 それを聞いて、甚助はフォアコート側に移動した。

 それを見ていた小次郎は怒り心頭だった。

 "あのヤロウ、もしかして舐めプしてやがんのか!!許さねえ!!"

 そしてまた甚助が低い姿勢で構えた。

 小次郎は再び蛇に睨まれたカエルのようになった。

 ”俺、殺されるのか?”

 小次郎の身体が震える。だが、小次郎が自分に言い聞かせる。

 "俺よ。怒れ!これはテニスだ。異種格闘技とかじゃねえ。これで殺されるなんてこと、あるわけがねえ。

 それに、あいつは舐めプしてんだ。これで怒らなくてどうする!"

 その時、先ほど甚助が言った言葉を思い出した。

 ”拙者はここじゃ。そんなつぶてなぞ、当たらぬわ!!”

 小次郎の中で怒りが湧いてきた。

 “上等だ!当ててほしいんなら当ててやるよ!!"

 小次郎の怒りが堅さを和らげた。

 小次郎がトスを上げ、渾身の力を込めてフラットサーブを叩き込んだ。


<次回予告>

 挑発を受けた日向(ひなた)小次郎。

 日向小次郎が渾身のサーブを打ち込んだ。

 その時、テニスコートに再び轟音が鳴り響く。

 その音は甚助を襲った稲妻か、それとも、、、

 次回、”一閃”

 乞うご期待!!

 って、題名で展開ばれちゃうか?(笑)


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