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侍ウィンブルドン  作者: トミー・フィロソフィー
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3/11

二の太刀 ”負けるわけにはいかぬ!!”

<前回までのあらすじ>

 テニスの大学選手権(インカレ)決勝。

 試合を優位に進め、あと1ポイントで勝利というところまで来ていた林崎甚之助。

 そして、最後の1ポイントを奪うべくスマッシュ体勢に入った。

 そこに蒼い閃光が!

 甚之助はカミナリに打たれてしまった。

 人々が甚之助の周囲に集まる。

 だが、甚之助はおもむろに起き上がったのだった。


 甚之助が突然目を見開いた。

 そして、甚之助がバッと身を起こし、立ち上がった。

「死合じゃと?いや、拙者は仇をうったはず。」

 そして、甚之助が周囲を見回した。

「なっ、なんじゃ?ここはどこじゃ!?」

 周囲がどよめいた。

 それもそのはずだった。

 雷に打たれた男子が何事もなかったかのように起き上がったのだ。

 甚之助が周囲をキョロキョロと見回した。

 そして、隣に涙を浮かべた女子を見て言った。

「おお!涼乃ではないか!!なんだ?いつの間に京まで来たのじゃ?」

「え?甚ちゃん、何ゆってんの?」

 おもむろに甚之助が女子の服を見る。

「涼乃!!お主、よい歳のおなごがそのような不埒なカッコをして!!」

 その言葉を聞いて甚之助の隣に座っていた女子が何かに気がついた。

 ”はっ!!甚ちゃんだけど甚ちゃんじゃない!!”

「甚ちゃん、ちょっと来て!!」

 そういうと女子が無理矢理甚之助の手を引いてコートの外に出ようとした。

 甚之助を応援していた男子たちも一緒に移動する。

 それを見て審判が言った。

「あの!救急車は!?本当に彼は大丈夫ですか?」

 女子が顔だけで振り返った。

「大丈夫だと思います。それより天候が良くなるまで延期ですよね?」

 審判が空を仰ぎ、手で落ちてくる雨粒を確認した。

「そうですね。本部に確認を取ります。そちらは本当に体調が大丈夫か確認しておいてください。」

 女子は男子の手を引いて近くの建物まで移動した。

 一人の男子が他の男子に人が入ってこないように見張りをさせた。

 女子と甚之助、そして一人の男子が建物に入って、扉を閉めた。


 女子が甚之助の前に立つ。

「甚ちゃん!私が誰か分かる?」

「は?お主は、、拙者の幼馴染み、涼乃(すずの)ではないのか?」

「”すずの”じゃなくて涼華(すずか)!本庄涼華よ!!」

「”すずか”?しかも姓まで付けて。。。」

 甚之助が怪訝な顔をして、また周囲をキョロキョロし始めた。

「というか、なんじゃこの屋敷は。先ほどの周囲も同じく。ここはいったいどこなのじゃ?」

 すると男子が落ち着いて聞く。

「甚之助。お前。。。そうや。おれが誰か分かるか?」

 甚之助が何かに気がついたように言った。

「ああ!!お主は。。。」

 男子がゴクリを唾を飲んだ。

「誰じゃ?」

 涼華と男子がガクッと崩れる。

「お前!おれのことも。。まあええわ。おれはなー、R命館大学のテニス部キャプテン、杉本ソラや。お前の先輩や。」

「大学?てにす?きゃぷ、、なんだ?それは。」

 杉本が考えて話し出した。

「。。。もしかして、お前?記憶喪失になったんちゃうか?」

 すると、意外だと言う顔をして甚之助が答えた。

「否。拙者は記憶喪失なんぞにはなってはおらん。はっきりと覚えているぞ。

 拙者の名は林崎甚助。

 父の仇、坂一雲斎を討つため、武者修行の旅をしておった。

 そして、ついに仇を討ったのだ。

 そうじゃ!拙者の愛刀”天の星流れ” (アマノホシナガレ)はどこじゃ?

 あれは父より受けた形見の業物じゃ、失くすわけには。」

「甚之助じゃなくて”じんすけ”?それに、坂一雲斎??ってなんか聞いたことあるかも。」

 涼華がなにかを思い出すかのように斜め上を見た。

 杉本がChat-GPT(チャッピ-)に聞いていた。

「これか!!」

 杉本が携帯を見せた。

 それを甚之助が見て驚いた。

「なんじゃ!!これは!!光っておるぞ!!」

 涼華が画面を見て読み上げる。

「1547年、林崎甚助の父は坂一雲斎に闇討ちされ、仇討ちのため武術に精進した。その後、1561年、齢19にして仇討ちを果たしたのだった。」

 甚之助が自信に満ちた顔になった。

「そうじゃ!その通りじゃ!拙者は仇討ちを為したのじゃ!しかし、1561年とはなんじゃ!?今は永禄四年ではないのか?」

「永禄4年?」

 すかさず杉本が再びChat-GPT(チャッピー)に書き込む。

「永禄4年は西暦何年?」

「永禄4年は、西暦1561年です。」

 再び杉本が画面を見せる。

 それを見た涼華が驚きの顔になった。

「ピッタリだ。。。ということは甚ちゃんは林崎甚助さんになったってこと?ウソ。。。」

 杉本が呆れた顔をした。

「そんなアホなことがあるかいな。涼華ちゃん、ヘタなSF、見すぎやで。」

「でも、実際にこの人は甚ちゃんじゃないですよ。」

 すると、外で声がした。


「林崎甚之助選手はどこにいらっしゃいますか?」

「この建屋の中です。」

「分かりました。」

 建物に入ろうとする審判を見張りの男子が止めた。

「あの。。。今、立て込んでて、用件なら我々の方で伺います。」

「あっ、はい。幸い雨も上がりまして、もう雲も行き過ぎましたので、10分後に試合を再開しようかと。」


 甚助がその声に反応した。

「死合いの再開じゃと!?」


 外ではまだ会話が続いていた。

「ですが、林崎選手の体調が良くないようでしたら、残念ですが棄権扱いとさせていただこうかと。」

 そこに建屋から甚助が飛び出してきた。

「拙者の身体は大丈夫じゃ!これしきのことでへこたれる程、柔ではないわ!!」

 そこには審判が立っていた。

「あ、林崎選手。」

 飛び出してきた甚助を見て審判は安心した。

「分かりました。では、10分後にコートで。」

 審判が立ち去った。

 涼華と杉本が建屋から出てきた。

 甚助が涼華と杉本の方を見た。

「死合いと聞いたからには負けるわけにはいかぬじゃろう。拙者の愛刀 ”天の星流れ” (アマノホシナガレ)はどこじゃ?」

 杉本がまだ信じられないような顔をして言った。

「お前の愛刀はこれや。」

 杉本が手に持っていたWilson ProStaffのグリップを甚助の方に向けた。

 甚助がグリップを握り、ラケットを持ち上げた。

「なんじゃ、これは?刃がないではないか?」

 周囲の男子が不思議な顔をした。


<次回予告>

 居合い抜きの開祖、林崎甚助と入れ替わってしまった甚之助の身体。

 彼がテニスの試合に出場することに!

 ルールも分からない甚助。

 甚助はどうするのか?

 次回、”当たらぬわ!!”

 乞うご期待!!

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