第54話 それぞれの贈り物
# 第54話 それぞれの贈り物
食事とゲームでひとしきり盛り上がったあと、結愛が手を打った。
「よし、じゃあ――プレゼント交換しよっか!」
その一言で、乃愛と琉生が同時に歓声を上げる。
「やったー!」
「僕、これ一番楽しみにしてた!」
紬もぱっと顔を輝かせ、凛花は自分の持ってきた袋にそっと手を置いた。
青は足元の紙袋を見下ろす。中身は何度も確認したが、こうして交換となると少しだけ落ち着かない。
「どうやって決める?」と凛花。
「くじ作ってあるよ」
結愛は得意げに、小さな箱を掲げた。
「乃愛が番号書いてくれたの。はい、順番に引いてね」
最初に手を入れたのは紬だった。
「えっと……一番!」
次に凛花、結愛、最後に青。
「じゃあ紬ちゃんからどうぞ」
紬は自分の袋を胸の前で抱きしめるようにして、少し照れながら結愛の前に差し出した。
「私のからです。合格祈願セットです」
結愛が袋を開ける。
「お守りに……合格祈願のお菓子? あとカイロまで入ってる」
さらに小さな封筒を取り出す。
「手紙?」
「大したこと書いてませんけど……受験、絶対大変だと思って」
結愛はしばらく中身を見つめて、それからゆっくり息を吐いた。
「……うわ、これ絶対合格しなきゃじゃん」
普段の軽い調子ではない声だった。
「受験日も持ってくね。ありがとう」
紬はぱっと笑顔になる。
「はい!」
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「じゃあ私ね」
凛花は丁寧に包まれた箱を紬に差し出した。
「集中する時に温かい飲み物があるといいと思って」
紬が開けると、上質なタンブラーと高級そうな紅茶のセットが現れる。
「わぁ……!」
本気で感動した声だった。
「すごい……これ高いですよね?」
「長く使えるものの方がいいと思ったの」
「ありがとうございます。凛花先輩みたいに紅茶を嗜みます」
結愛が吹き出した。
「絶対ココアとか入れるでしょ」
「ばれました」
場が和む。
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「じゃあ……青、これ」
結愛は少しだけ視線を逸らしながら袋を差し出した。
青が取り出す。
青い手袋、同色のマフラー、そしてハンドクリーム。
「受験の日って寒いし、手かじかむと困るでしょ」
結愛はぶっきらぼうに言う。
「ペン持てなくなったら最悪じゃん。だからその……役に立つかなって」
青は手袋を触る。内側が暖かい。
「……結愛らしいな」
「え?」
「実用的で、ちゃんと考えてる」
短いが、真っ直ぐだった。
「ありがとう。使う」
結愛の耳まで赤くなる。
「べ、別に深い意味とかないし! ただのプレゼントだし!」
紬がにこにこしながら覗き込む。
「黒金先輩、顔真っ赤ですよ?」
「うるさい!」
琉生がぼそっと言う。
「お姉ちゃん、わかりやすい」
「琉生あとで覚えてなさい」
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最後に、青から凛花へ。
凛花は静かに箱を受け取った。
中から出てきたのは、シンプルで上品なシャープペンシル。
「……これ」
「長時間書いても手が痛くならないらしい」
凛花は近くの紙に文字を書く。
「軽い……すごく書きやすい」
「試験向けの設計だって」
凛花はペンを見つめ、それから青を見る。
「ありがとう。大事にするわ」
その声はいつもより柔らかかった。
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交換が終わり、テーブルの上にそれぞれの贈り物が並ぶ。
「なんかさ」
結愛がぽつりと言った。
「全部、受験関係だね」
確かにそうだった。
誰も言い出したわけではないのに、自然とそうなっている。
「それだけ大事ってことよ」と凛花。
結愛は少し黙ってから言った。
「私、法学部に行くことにした」
全員が結愛を見る。
「弁護士を目指そうと思ってる。困ってる人を助けられる仕事がいいなって」
青は短く頷く。
「結愛なら向いてる」
「ほんと?」
「人のこと放っておけないだろ」
結愛は照れくさそうに笑った。
「……ありがと」
凛花も続ける。
「素敵だと思うわ」
紬も力強く頷く。
「黒金先輩、絶対いい弁護士になります!」
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「青は?」
「変わらず医学部」
「凛花ちゃんは?」
「私も医学部よ」
結愛が目を丸くする。
「二人ともすごすぎない?」
「努力すれば不可能ではない」
「それをさらっと言えるのがすごいんだって」
少しの沈黙のあと、結愛がぽつりと呟く。
「……三人、同じ大学行けたらいいのにね」
静かな願いだった。
青は窓の外を見る。
「不可能ではない」
それが青なりの答えだった。
凛花が小さく頷く。
「そうね」
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乃愛が大きなあくびをした。
「ふぁぁ……」
琉生も目をこする。
「眠くないもん……」
乃愛はそう言いながら青の隣へ寄り、こてんと肩にもたれた。
青は動かず、そのまま支える。
結愛が毛布を持ってきてそっとかけた。
「ありがと、青」
「別に」
凛花はその光景を静かに見ていた。
「本当に、優しいのね」
青は何も答えない。
窓の外では、雪が静かに降り続けていた。
暖かな部屋、穏やかな空気、誰かの体温。
こういう時間が、ずっと続けばいいと――誰もが少しだけ思っていた。
結愛が時計を見て、柔らかく言う。
「……クリスマスイブ、終わっちゃうね」
誰もすぐには答えなかった。
けれど、寂しさよりも温かさの方が強い夜だった。
それぞれが手にした贈り物を、自然と大事そうに抱えている。
未来はまだ遠い。
でも、この時間は確かにここにある。
雪は、音もなく降り続けていた。
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