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星嶺高校の氷凪くんは、たぶん恋を知らない。~恋愛偏差値0のアオが、学年1位の美少女とギャルを救い救われる話~  作者: にめ
1学期:体育祭

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第28話 体育祭の終わり

# 第28話 体育祭の終わり


借り物競走の盛り上がりがまだ校庭に残っていた。


実況の声がスピーカーから響く。


「続いての競技は――三年生スウェーデンリレーです!」


観客席から歓声が上がる。


三年A組のテントでは葉山颯が腕を回していた。


「よっしゃ、次だ!」


黒金結愛が振り向く。


「青、アンカー頼むよ!」


氷凪青は静かにうなずいた。


「わかった」


テントの椅子に座っている雪城凛花もグラウンドを見つめている。


足にはまだ包帯が巻かれていた。


(青……)


凛花は少しだけ胸の前で手を握る。


体育祭の間、青は何度もクラスを助けてきた。


借り物競走も。


そしてこれから始まるリレーも。


(本当に……すごい人)


実況の声が響いた。


「位置について――」


笛が鳴る。


レースが始まった。


A組は序盤三位。


しかし第二走者、第三走者と徐々に順位を上げていく。


葉山がテントから叫ぶ。


「いけーー!」


「追いつけ!」


そしてアンカー。


葉山がバトンを持って走ってくる。


「青ーーー!!」


バトンが渡った。


青は一瞬だけ地面を蹴る。


次の瞬間――


一気に加速した。


観客席がざわめく。


「速っ!」


「氷凪めちゃ速い!」


青のフォームは綺麗だった。


無駄のない走り。


元陸上部の走りだ。


前の走者との距離が一気に縮まる。


そして直線。


一人抜き。


さらにもう一人。


そのままトップでゴールした。


「A組一位!!」


テントから歓声が上がる。


結愛が飛び上がる。


「青ーーー!!!」


葉山が笑う。


「さすが元陸上部!」


青は軽く息を整えながら戻ってきた。


「大げさだ」


しかしクラスのテンションは最高潮だった。


そして。


実況の声が再び響く。


「続いての競技は――」


「クラス対抗全員リレーです!」


体育祭最後の競技。


グラウンドの空気が一気に引き締まる。


結愛が拳を握った。


「これ勝てば優勝だよ!」


葉山が青を見る。


「アンカー頼む!」


「了解」


凛花が小さく声をかけた。


「青……頑張って」


青は振り返る。


「任せろ」


凛花の頬が少し赤くなる。


レース開始。


各クラスが激しく競り合う。


A組は中盤まで二位。


テントから声が飛ぶ。


「いけー!」


「A組ー!」


結愛の順番が来た。


「いくよ!」


全力で走る。


必死に腕を振る。


そして――


「青ーーー!!」


バトンを渡す。


青が走り出した。


残り半周。


前には一位の走者。


観客席から声が上がる。


「氷凪いけーー!!」


青は一気にスピードを上げた。


距離がどんどん縮まる。


そして直線。


一気に追い抜いた。


「うおおおお!!」


歓声。


青はそのままゴールテープを切った。


実況が叫ぶ。


「一位は三年A組!!」


校庭が歓声に包まれる。


そしてしばらくして。


結果発表。


「今年の体育祭――」


「総合優勝は!」


「三年A組!!」


クラスが爆発した。


「やったーー!!」


葉山が青の肩を掴む。


「青すげぇ!」


結愛も笑顔で言う。


「アンカー神じゃん!」


青は少し困ったように言った。


「みんなが頑張った結果だ」


放課後。


教室ではまだ興奮が残っていた。


しかし体力は限界だった。


机に突っ伏している生徒も多い。


結愛が立ち上がる。


「みんなー!」


クラスが顔を上げる。


「お疲れ様ー!」


「お疲れー!」


結愛が笑う。


「このあと祝勝会しよー!」


一瞬盛り上がるが。


「いや今日は無理……」


「疲れた……」


「帰って寝たい……」


結愛が笑った。


「だよね!」


「祝勝会はまた今度!」


クラス


「賛成ー!」


夕方。


生徒会室。


体育祭の書類整理が行われていた。


凛花と青が並んで座っている。


窓の外は夕焼けだった。


静かな時間が流れている。


凛花がぽつりと言った。


「青」


「ん?」


「さっきはありがとう」


「借り物競走も……」


青は書類をまとめながら答える。


「気にするな」


凛花は少し黙る。


「でも……」


「結愛が借り物競走提案してくれたのに」


「出られなくて……」


声が少し震える。


「迷惑かけちゃった……」


ぽろりと涙が落ちた。


青は少し驚く。


そして静かにポケットからティッシュを取り出した。


「大丈夫だ」


凛花に差し出す。


「責任感じなくていい」


凛花が顔を上げる。


青は続けた。


「困ったときは」


「お互い様だ」


「凛花は」


「いつか結愛を助けてやればいい」


凛花は涙を拭く。


「うん……」


そして少し笑った。


沈黙。


凛花がふと聞く。


「青」


「さっきのリレー」


「すごく速かった」


青は少し肩をすくめる。


「高校の途中まで陸上部だった」


「そうだったの?」


「事情があってやめた」


凛花は少し驚いた顔をする。


「でも……」


「走ってる青、すごくかっこよかった」


青は少しだけ視線を逸らす。


「そうか」


凛花が小さく笑う。


「うん」


「少しドキドキした」


青が手を止める。


「……そうか」


凛花は慌てて言う。


「い、今の忘れて!」


「別に深い意味じゃなくて!」


青は落ち着いた声で言った。


「凛花は正直だな」


凛花の顔が赤くなる。


「もう……」


青が聞く。


「帰りは大丈夫か?」


「うん」


「お母様が迎えに来てくれる」


「そうか」


青は立ち上がった。


「じゃあ校門まで送る」


凛花は少し驚く。


「え?」


青は凛花の荷物を持つ。


そして肩を貸した。


凛花の顔がさらに赤くなる。


「……青」


「ん?」


「ちょっと近い……」


「歩けないだろ」


「そうだけど……」


凛花は小さく笑った。


「優しいね」


二人はゆっくり歩き出す。


夕焼けに染まる校庭。


数時間前まで歓声に包まれていた場所は、もう静かだった。


校門に車が止まっている。


凛花の母の車だ。


凛花が青を見る。


「今日はありがとう」


「体育祭……楽しかった」


青はうなずく。


「そうだな」


凛花が車に乗る。


ドアが閉まる。


車がゆっくり走り去った。


青は校門の前に立ち、夕焼けの空を見上げた。


体育祭は、無事に終わった。


しかし。


彼の高校生活は、まだ続いていく。


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