第26話 体育祭、そしてハプニング
# 第26話 体育祭、そしてハプニング
六月の澄んだ青空の下。
星嶺高校では年に一度の体育祭が開催されていた。
校庭には各クラスのテントが並び、カラフルなクラス旗が風に揺れている。スピーカーからは軽快な音楽が流れ、実況の生徒の声が校庭に響いていた。
普段は落ち着いた雰囲気の校舎も、この日ばかりはまるで別の場所のようだった。
三年A組のテントでは、クラス全員が円になって集まっている。
中央に立っているのは黒金結愛。
腕を組み、にやりと笑う。
「A組ー!」
クラス全員が顔を上げる。
結愛は拳を高く掲げた。
「三年最後の体育祭!」
「優勝、狙うよー!」
一瞬の沈黙のあと。
クラス全員が拳を突き上げた。
「おーーー!!」
歓声が校庭に響く。
葉山颯が肩を回しながら言った。
「よっしゃ、燃えてきた!」
星崎真凛もテンションが高い。
「A組いけるって!」
凛花もその輪の中で小さく微笑んでいた。
青はその様子を少し離れて見ていた。
騒がしい空気は嫌いではない。
むしろ、嫌いではないどころか——。
こういう空気は、少しだけ好きだった。
ただ、自分が中心に立つのは得意ではないだけだ。
やがて体育祭の最初の競技が始まった。
玉入れ。
女子たちが一斉に玉を投げる。
「入れろー!」
「あと三個!」
「まだいける!」
結愛と真凛が必死に声を出している。
凛花も少し真剣な顔で玉を投げていた。
結果。
A組は二位。
「いいぞ!」
「まだいける!」
「流れいいじゃん!」
クラスの空気はかなりいい。
続いて綱引き。
男女混合チーム。
葉山が青の肩を叩く。
「青、前来い!」
「了解」
青は綱の前方に立った。
笛が鳴る。
「引けぇぇぇ!!」
全員が一斉に引く。
砂が舞い上がる。
相手クラスも強い。
綱が中央で止まる。
数秒の攻防。
葉山が叫ぶ。
「あとちょい!!」
青が低い声で言う。
「今だ、引け」
全員が一斉に引いた。
相手チームが崩れる。
「勝ったぁぁ!!」
A組勝利。
結愛がガッツポーズ。
「いい流れ!」
次は台風の目。
四人で棒を持って走る競技だ。
葉山のチームが出場。
コーンを回る瞬間。
全員振り回される。
「うおっ!」
「酔う!!」
「颯しっかり持て!」
結愛が笑いながら叫ぶ。
「がんばれー!」
葉山たちはよろよろしながらも走り切る。
結果三位。
クラスから笑いが起きた。
続いて障害物競走。
袋ジャンプ。
平均台。
網くぐり。
葉山が袋ジャンプで派手に転んだ。
「うわっ!」
「遅っ!」
「颯また転んだ!」
「芸人か!」
校庭は笑いに包まれる。
競技はまだ続く。
次は大玉転がし。
クラス全員参加。
巨大なボールを押して走る。
「押せ押せ!」
結愛が叫ぶ。
葉山
「右寄ってる!」
青が冷静に言う。
「左から押せ」
「そっち押せば直る」
結愛
「青ナイス!」
クラス全員で押す。
巨大なボールが勢いよく転がる。
ゴール。
A組一位。
「よっしゃぁ!!」
クラスは大盛り上がり。
昼前には応援合戦が行われた。
A組は円陣を組む。
結愛が声を出す。
「A組ファイ!」
クラス全員が声を合わせる。
「オー!」
凛花もその中で声を出していた。
青はそれを見て、少しだけ驚く。
凛花がこんな風に笑っているのは珍しい。
午後。
女子騎馬戦が始まる。
凛花は上に乗る役だった。
結愛が声をかける。
「凛花ちゃん落ちるなよー!」
凛花
「大丈夫よ」
試合開始。
騎馬同士がぶつかる。
帽子を奪い合う。
かなり激しい。
そのとき。
別の騎馬が突っ込んできた。
バランスが崩れる。
「きゃっ!」
騎馬が崩れた。
凛花が地面に落ちる。
青はすぐに走った。
「凛花!」
青はしゃがみこむ。
「大丈夫か」
凛花は顔をしかめていた。
「痛……」
「足首……」
青はすぐ判断する。
「捻ったのか」
「たぶん……」
青は言う。
「保健室行こう」
そして凛花を抱き上げる。
お姫様抱っこ。
「きゃっ!」
凛花の顔が一瞬で赤くなる。
周囲がざわついた。
「お姫様抱っこ!」
「すげー!」
「漫画かよ!」
観客席。
紬がその光景を見ていた。
「青くん……」
そして小さく呟く。
「……羨ましい」
保健室。
保健の先生が言う。
「そこ座って」
凛花が椅子に座る。
「足ここに乗せて」
「痛っ……」
足首を診る。
「軽い捻挫ね」
湿布を貼る。
包帯を巻く。
青は隣で見ていた。
「大丈夫か」
凛花
「うん……」
少し沈黙。
凛花が言う。
「青」
「ん?」
「……まだ支えてる」
青は凛花の肩を支えていた。
「……あ」
青は手を離す。
「悪い」
凛花
「別に……」
顔が赤い。
保健の先生が笑う。
「彼氏?」
「ち、違います!」
凛花が慌てる。
青も答える。
「違います」
先生
「息ぴったりね」
凛花はさらに赤くなった。
治療が終わる。
「今日は安静ね」
青が言う。
「凛花、俺は戻る」
「うん」
凛花は小さく微笑んだ。
「ありがとう、青」
青は校庭へ戻る。
A組テント。
結愛と真凛が困っていた。
「どうした」
結愛が振り向く。
「青!凛花ちゃん大丈夫だった?」
「足首をひねった」
「そっか……」
真凛が言う。
「借り物競走どうする?」
「全員リレーの女子足りないよ」
クラスが少しざわつく。
青は少し考えた。
そして言う。
「借り物競走は俺が出る」
結愛
「え?」
青は続ける。
「全員リレーは……」
「結愛、頼めるか」
結愛は一瞬驚いた。
しかしすぐ笑う。
「わかった!」
拳を上げる。
「A組、まだ優勝狙うよ!」
クラス全員が拳を上げる。
「おーーー!!」
体育祭は、まだ終わらない。




