↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミック第2巻 発売中】外れスキル『コンビニ』で最強の勇者に成り上がる!【後日談&ショートストーリー集】  作者: こたつ猫
第一章 琴美さくらの反乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/4

その2 カディナ調査チームの結成


「――さくらが? あの虫も殺せないくらい大人(おとな)しい性格の琴美(ことみ)さくらが……どうしてそんな物騒な話の『首謀者』扱いになっているんだよ?」



 コンビニの勇者の彼方(かなた)は訝しげな視線を向けて、コンビニ陣営の元参謀役であり。現在は共和国内の政治部門で、ターニャの補佐役をしている紗和乃(さわの)に問いかけた。


「それは、私も分かってるわ。でも……さくらは、カディナ奪還作戦の際に、大量の『カディス饅頭(まんじゅう)』を空から街にばら撒いて。カディナの街と壁外区に住む全ての人々を、料理人(クック・マスター)の能力で支配する事に成功しているのよ」


「……操るって、それは街を解放する作戦に必要だったからしたんだろう? おかげで街の人に誰も犠牲を出す事なく、少数の潜入チームでカディナを『無血開城』するのに成功したって俺は聞いてるぞ?」



 彼方(かなた)はチョコパフェの器(うつわ)の底にこびりついている、コーヒーゼリーの残りカスを必死にすくい集めようと。

 細長いスプーンをかき回しながら、紗和乃(さわの)に尋ねる。


「うん。本当にそれだけで終わってたなら良かったんだけど。でも……その後、杉田(すぎた)くんや雪咲(ゆきさき)さん達が巨大コンビニ要塞と戦う為に街を離れた後――。実質的にカディナの街は、料理人(クック・マスター)のさくらの支配体制下になっていたの。そして全てが終わって気付いてみたら、カディナの街は外部の者を寄せ付けない独裁都市に変わり果てて。いつの間にかに孤立していたのよ……」


 

 ザリルや、紗和乃(さわの)は、カディナの街が置かれている特殊な現状を彼方(かなた)に詳しく伝えていく。


 カディナの街は、かつては外から行商人がたくさん押し寄せる活気のある街だった。それが今は、城壁を完全に内部から閉ざして。外部との交流を完全に遮断してしまっているらしい。


 壁の外に広がる壁外区(へきがいく)も、新参の者を外に追い出し。外部の者を寄せ付けない閉鎖的な空気が充満していて。

 かつてその地で新規オープンしたコンビニの外に、大行列が出来た頃のような陽気な賑わいは……今は全く無くなってしまっているとの事だった。



「……旦那、オレも元々はカディナの街を拠点にしていた商人です。だから今のカディナの空気のヤバさは、マジで心配してるんですよ。今じゃオレの部下達も、あの街の中に簡単には侵入出来ないくらいですからね」


「そうなのか。そんな事がカディナの街で起きていたのかよ……。あっ、そういえば! ティーナの家族のアルノイッシュ家の人達はどうなったんだ? 確か、サハラさんの家族の生き残りが、カディナの壁外区に隠れて生き延びていたって話だっただろう?」



 ティーナとは血が直接繋がっている訳ではないが……。カディナの街で育てられたティーナが、その時に一緒に暮らしていたサハラ・アルノイッシュ家のその後の安否を……彼方(かなた)はザリルに尋ねてみた。


「カディナの街の大商人だったサハラ・アルノイッシュは、今はもう……完全にカディナの街を離れて。コンビニ共和国内で、新しい商売を始めていますぜ。彼の家族の生き残りも無事に生還して、全員コンビニ共和国に移住してきています。それと、ティーナさんの付き人だったアドニスさんも、今はグランデイル王国に戻って。新女王になったティーナさんのお世話役をしているようですぜ」



 ザリルから、サハラ・アルノイッシュと。その家族達の現在の安否を知る事が出来た彼方(かなた)は、ホッと息を漏らして安堵する。


 カディナの街に残った『料理人(クック・マスター)』の琴美(ことみ)さくらが、世間が噂しているような怪しい陰謀を画策しているとは到底思えないが……。

 カディナの街で今、何が起きているのかは……大至急調査に向かった方が良いのは間違いなさそうだ。


 ……となると、コンビニ共和国から直接カディナの街に赴いて。現地の様子を詳しく調査するメンバーを送り込む必要があるだろう。


「――そうね、で……彼方(かなた)くん。私以外の他の誰をカディナ調査メンバーとして、連れて行くつもりなの?」


「えっ? 何でカディナ調査メンバーに紗和乃(さわの)が加わってる事が前提になってるんだよ? 駄目だぞ。今回、紗和乃(さわの)は共和国でお留守番役だからな?」



「何でよおおぉぉぉーーーーっっ!?!?」



 カフェの店内にいる客達が、一斉に彼方(かなた)達を覗き見る。


 一応、コンビニ共和国の建国者と、財務大臣がお忍びで会談をしているというのに……。

 明らかに人目を引く騒ぎを起こした紗和乃(さわの)を、彼方(かなた)もザリルも。うんざりした顔つきをしながら、きつく嗜(たしな)める事にした。


「いや、何でも何も……。お前は新しく共和国の政治リーダーになったターニャのお目付け役を任されてるだろ? まだ幼いターニャが大人達の中に混じって頑張ってるんだから、ちゃんと側(そば)に居てやってくれよな。カディナ調査のメンバーは、他の暇そうな異世界の勇者を連れて行くからさ!」


「……ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ、彼方(かなた)くんの短足、ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ、彼方(かなた)くんのターニャちゃん贔屓(びいき)のロリコン、ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ、ぶつくさ……」


「おーい、紗和乃(さわの)ー! 小声でぶつくさと文句(もんく)を呟く中に、2つくらい俺への悪口をこっそり混ぜ込んでも。こっちはちゃんと聞こえてるからなー。俺はウォーリーを探せとか、漢字がいっぱい並んでいる中に一つだけ、間違いの字が混ざってる系のクイズは大得意なんだからなー」



 元々、アクティブで行動派な紗和乃(さわの)は、今は彼女の推(お)しの玉木紗希(たまきさき)がカルツェン王国新女王の即位式の後見人として一時帰国してるので。内心では、かなーり不満が溜まっていたらしかった。


 だから今回のカディナの事件に乗じて、紗和乃(さわの)は共和国の政治から離れて。たまには外に出て、息抜きがしたかったのかもしれない。



 紗和乃(さわの)と長い付き合いのある彼方(かなた)は、そんな彼女の心中を全て察してはいたのだが……。


 『だが、残念〜〜!』とばかりに、今回はその切なる願いをバッサリと切り捨てる事にした。


 実は彼方(かなた)自身も、コンビニの大魔王との戦いが終わり。共和国に戻ってから色々な政治や経済の後処理に追われて、ストレスが溜まっていたのだ。


 つまり要は……彼方(かなた)自身も共和国から外に出て。久しぶりに羽を伸ばして、異世界の勇者らしい『冒険の旅』に出たかったのである。



「……で、旦那? カディナへの潜入調査には、一体誰を連れていくつもりなんですかい?」


「ん? ああ、決まってるだろう。共和国でいっつも暇(ひま)を持て余していて。隙(すき)さえあれば温泉に浸(つか)ったり。新規オープンのカフェを梯子(はしご)して回ってばかりいる、暇なぐ〜たら3人娘達がこの国には彷徨(うろつ)いているだろう?」


「なるほど。実力は確かに申し分ないですけど、性格に難のある3人の淑女(レディー)達の事ですね」



 ザリルは彼方(かなた)から、今回のカディナ調査に同行するメンバーを聞かされて。頭を押さえながら、しぶしぶ納得した表情をした。


 普段、レディーファーストを気取り。女性に対しては、常に最大限の敬意を示して接するザリルであっても。

 共和国に存在する秘密兵器、あのカフェ好き3人娘達については、頭を悩ませる厄介な存在として認識しているようだった。


「まぁ、そういう事さ。……正直、今回の件はあまり大事(おおごと)にしたくないから。杉田(すぎた)を始めとして、共和国の主要な政治役職についてる重鎮メンバーは、一緒に連れて行きたくないんだよな……」



 ――となると、ほぼ自動的に。


 彼方(かなた)の頭の中に浮かんできたのは、あの暇人3人娘達を連れていくしかないという、アイデアだった。


 カフェの中で彼方(かなた)がザリルに、今回はカフェ好き3人娘達を連れていくつもりだ……と話した瞬間に。



 ”カキーーーーン!!”


「……ん? 何だ……!?」


 食べていたチョコパフェの器(うつわ)の底にこびり付いていた、最後のコーヒーゼリーをすくい取ろうと。

 彼方(かなた)が細長いスプーンでガラスの器の底をグリグリと突いている時に、高らかな金属音が周囲に鳴り響いた。


 よく見ると、ガラスの器(うつわ)の底に。いつの間にかに――小さなミニマムサイズの『クマのぬいぐるみ』が入り込んでいて。

 その小さなクマのぬいぐるみは、持っていたフォークで。彼方(かなた)が上から押し込んできたスプーンを、器(うつわ)の底から無理やり押し返してきたのである。



「――え? このクマのぬいぐるみは、もしかして……」


 彼方(かなた)は、とっさに危険を察知して。


 その場から逃げようとしたのだが……既に遅かった。


 彼方(かなた)の座っている席の足元部分が、まるで忍者屋敷のカラクリ仕掛けのように。突然『バタン』と穴が空いて。彼方(かなた)はカフェの椅子に座ったまま、いきなり真下に落とされてしまったのだ。



「あぁぁーーれえぇぇーーっっ!?」


 ……気付いた時には、コンビニの勇者の彼方(かなた)の体は、新しく共和国の地下に整備された『駅』に落とされていた。


 目の前には、コンビニ共和国で他の街への移動用として。新たに試運転が開始される予定となっている――地下鉄『黒ヘビ号』が大口を開けて、地下に倒れ込んだ彼方(かなた)の体のすぐ隣で待ち構えている。


 そして地下の駅の中には『いつメン』でもある3人の女勇者達が、落下してきた彼方(かなた)の事を仁王立ちで待ち構えていた。



「――話は全部聞かせて貰ったわよ、彼方(かなた)くん!」


「また、カディナの街に遊びに行くんでしょう〜? たまたまスケジュールの空いている私達が、彼方(かなた)くんと一緒にカディナに行ってあげようじゃ〜ん!」


「うんうん。共和国内のカフェはもう、ほとんど巡っちゃたしねー。他の街のカフェ開拓もしたいなーって思ってたから、丁度良かったわー!」



 地上のカフェから突然、真下の地下に落とされて。腰を強打してしまった彼方(かなた)は、両手で腰を押さえながらゆっくりとその場で立ち上がると。


 目の前でドヤ顔で立っている、3人娘達に話しかけた。


「いや、お前達……! そんなに準備万端な顔をして待ち受けられててもだな。俺はまだ、心の準備が……」


「さあ、行くわよー! 彼方(かなた)くん! この地下鉄『黒ヘビ号』なら、半日もあれば東のカディナの街に辿り着けるわよー!」


「いやっほぅ〜〜! 久しぶりの遠距離旅行じゃん〜! 楽しみ〜〜!」


「カディナの街にもイケメンが居たらいいなー! 一応、化粧もバッチリ決めておいたから。さあ、早く行こうよー!」



 既に地下に待機していた巨大な『黒ヘビ号』は、大口(おおぐち)を開けて。落下してきた彼方(かなた)と3人娘達を『丸飲み』にする気満々で待ち構えていた。



 こうして彼方(かなた)は、半ば3人娘達に無理やり拉致されるようにして――。

 共和国の地下に新設された、地下鉄『黒ヘビ号』の中に強引に乗せられ(丸飲みにされて)。


 問答無用で、カディナの街へと連れ去られてしまうのであった……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。