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死体番号041〜目が覚めたら、僕は番号で呼ばれる『検体』になっていた〜  作者: 鷹司 怜


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第二章 連続殺人犯

 銃口を向けられた瞬間、不思議と恐怖より先に違和感が来た。


 連続殺人犯。


 今、この男は確かにそう言った。


 だが俺の頭の中には、人を殺した記憶なんて存在しない。


「待てよ……何かの間違いだろ」


 声が震える。


 中年刑事は一歩も動かない。


 鋭い目で俺を射抜いたまま、低く言った。


「霧島レン。二十八歳。無職」


 知らない名前だった。


「一か月で六人殺した」


「知らねぇって言ってんだろ!」


「全員、女性だ」


 その瞬間。


 脳裏にノイズみたいな映像が走る。


 暗い部屋。


 泣いている女。


 白い指。


 赤。


「っ……!」


 激しい頭痛。


 俺は思わず頭を押さえた。


 刑事の指が引き金にかかる。


「芝居するな」


「違う……!」


 女の悲鳴。


 床に広がる血。


 誰かの手。


 俺は息を荒くする。


 本当に、俺がやったのか?


 いや。


 違う。


 違うはずだ。


「警部!」


 若い刑事が駆け込んでくる。


「外、マスコミ来てます!」


「チッ……」


 中年刑事——警部は舌打ちした。


 その隙だった。


 霊安室の照明が、一瞬だけ落ちる。


 パチン。


 完全な暗闇。


「なっ——」


 誰かが叫ぶ。


 次の瞬間。


 ガンッ!!


 もの凄い衝撃音。


 誰かが倒れる気配。


「警部!?」


 照明が戻る。


 床に倒れていたのは、中年刑事だった。


 後頭部から血を流している。


 そして。


 俺の右手には、血の付いた金属トレーが握られていた。


「え……」


 周囲が凍る。


 若い刑事が絶叫した。


「撃て!!」


 銃声。


 反射的に身体が動いた。


 俺は横へ転がる。


 弾丸がステンレス扉に突き刺さった。


 火花。


 悲鳴。


 俺は走った。


 身体が勝手に動いていた。


 霊安室を飛び出す。


 廊下。


 白い病院。


 逃げる患者たち。


「止まれ!!」


 後方から怒号。


 だが、俺は妙に冷静だった。


 どこを曲がれば出口があるのか、

 なぜか分かる。


 エレベーターは遅い。


 階段。


 非常口。


 無意識に最短ルートを選んでいた。


 まるで——何度も逃げた経験があるみたいに。


「っ……」


 嫌な汗が背中を流れる。


 俺は本当に何者なんだ。


 階段を駆け下りる。


 二階。


 一階。


 その時だった。


 踊り場に、一人の女が立っていた。


 黒いパーカー。


 長い黒髪。


 二十代半ばくらい。


 女は静かに俺を見ていた。


 逃げない。


 叫ばない。


 まるで、最初から待っていたみたいに。


「……誰だ」


 女は小さく笑った。


「やっと起きたんだ」


 ぞっとした。


 その言い方。


 知り合いみたいだった。


「あなた、また失敗したのね」


「は?」


「今回で七回目」


 意味が分からない。


 だが女は真顔だった。


 後方から足音が迫る。


 刑事たちだ。


 女は俺の手を掴んだ。


「逃げるよ」


「待て、お前——」


「ここで捕まったら、今度こそ本当に終わる」


 女は俺を見上げる。


 その瞳を見た瞬間。


 心臓が止まりそうになった。


 知っている。


 この目を。


 絶対に。


 だが思い出せない。


 女は唇だけで言った。


「あなたは、人を殺してない」


 そして次の言葉が、俺の世界を壊した。


「本物の殺人鬼は、まだ生きてる」

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