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ごほうびは、仕事帰りのドーナツで〜恋愛経験ゼロのドライフルーツ系女子は、イケオジ店長に口説かれる〜  作者: 架け橋 なな


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JKギャル、滑り込む

『匿名野郎の特定って⋯⋯突然なに? 姉ちゃん、探偵でもやんの?』



 質問を受けた弟の修は、何がなんだか解らないといった感じで、聞き返してきた。ウチはこれまでの経緯を説明するのが面倒で、適当な返事をする。



『うん。まあ、そんなとこ。で、あんたならどうする?』


『ええっと。どうするって言ったって、そんなの分からんけど』


『はあ? 何それ。ちゃんと考えてくんない? こっちは超真面目に相談してんだから』


『う゛。分かったよ。ちょっと待って、考えてみるから』



 ドスの効いた声で釘を差すと、修は電話口の向こうでうんうん唸り始めた。ウチは無言で可愛い弟の返答を待つ。



『そうだなぁ。僕ならその匿名の人の投稿を見返すかな。個人情報とか写真が載ってないか見る』


『それはやったんだよ。でも個人を特定出来るような情報は何も書いてなかった。仲良くしてるフォロワーも居ないし、これ以上調べようがなくてさ。もっと別の方法ある?』


『うーん。あとは何だろう。場所で探すとか?』


『場所?』


『そう。例えばその人が【粋逸市の秋祭り楽しい】って書いてたら、まず秋祭りの開催場所がどこなのか調べる。で、開催場所が分かったら呟き内で検索をかける。そうすると同じ場所に居た、別の人の書き込みと写真がたくさん出てくるよね? それを調べていったら、何か手がかりが掴めるかもしれないよ』


『なるほどね。別の人の呟き投稿から探すのか』



 そういえばさっきバイト仲間の子が、その日写真を撮ってるお客さんがたくさん居たって教えてくれたっけ。もしかしたらそのうちの何人かは、写真を呟きに投稿してるかも⋯⋯? これはイケそうな気がする!



『サンキュー! 助かったわ! また行き詰まったら電話すんね!』


『えっ!? いや、僕、暇じゃないんだけ』


『そんじゃ、ばいばーい!』



 ウチは電話をぶち切って、さっそく呟きの検索欄に『#粋逸市 #プレジール #ドーナツ』と打った。


 するとプレジールに関する投稿と写真がいくつも表示される。どんな小さな情報も見落とさないよう、その一つ一つにしっかり目を通していった。


 みんな『動物ドーナツ癒される』とか『おいしくて大満足♪』とか呟いて、写真を載せている。ウチにとって嬉しい言葉が続く中、ものすごく気になる投稿を発見した。



『お気に入りのドーナツ屋で、まさかのケンカ勃発』


 『冷』の悪口投稿と、同じ日付、時間帯だ。その呟きにはプレジール店内の写真が添えられており、端っこに怒った顔の女子が制服姿で写り込んでいた。黒い巻き髪と短めのスカートを履いていて、『冷』の可能性がかなり高そう。この子の側のテーブルにはピンク色のねこ型ドーナツが二つ載っていた。



 確か『冷』もプレジールで写真を撮ってたって、呟きで言ってたよね? あいつも何か投稿してるかも?


 試しに『#ねこいちごドーナツ』で検索すれば、『仲良しにゃんこ♡』という呟きが表示された。お皿に並んだねこいちごドーナツ二つと、ピースした左手が写ってる写真も貼りつけてある。


 呟きのアイコンは、さっきの女子と同じ顔だった。制服の袖口には見覚えのあるマーク――桃の形の校章で、それが何を意味するのか、思い当たるのに時間はかからなかった。



『これ、桃山高校(ももこう)の制服じゃん!』



 すなわち『冷』はウチと同じ高校の子ということだ。こっちのアカウント名は『あいぴ』。お出かけした記録や、綺麗な景色、可愛いスイーツ、購入したブランド品などが紹介されている。キラキラしたリアルはこの本アカで発信してるんだろう。


 これには個人を特定出来そうな情報がいっぱい書かれている。たどれば確実に本人へ行き着けるだろう。



 よっしゃああああっ! やっと犯人見つけたぞ! あとはウチが探し出してとっ捕まえるだけだ!



 一人興奮しつつ、ウチは『あいぴ』の投稿をひたすら読みまくった。


 そのうちにバイト仲間から、『佐倉っち、まだ学校? 今日休むの?』とRAIN(レイン)が来る。



「は⋯⋯? え!? やっばっ! もうバイト始まる五分前じゃん!!」



 ど真剣に調べていて時間がずいぶん経っていることに気づかなかった。ウチは勢いよくリュックの両肩紐を掴んでコンビニを飛び出し、初めて遅刻ギリギリにプレジールへ滑り込んだのだった。

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