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ごほうびは、仕事帰りのドーナツで〜恋愛経験ゼロのドライフルーツ系女子は、イケオジ店長に口説かれる〜  作者: 架け橋 なな


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12/12

テンパる女子、言い切る

 翌週。私は残業を終え、実果に言われた目標を成し遂げるためプレジールを訪れた。


 時刻は閉店三十分前。


 頑張るぞと気合いを入れつつ店内に足を踏み入れると、他のお客さんの姿はなく、カウンターに居た店長さんがすぐに温かな声をかけてくれた。


「いらっしゃいませ、こんばんは。今日もお仕事、お疲れ様です」


「こんばんは。店長さんもお疲れ様です!」



 勢いよく頭を下げてから、ふとバイトの女の子の姿がないことに気づく。


 トレーとトングを掴んで、何となく辺りを見渡していると、店長さんがカウンターから出てきて目の前にやって来た。


「どうされました? 何かお探しですか?」


「あの、女子高生の店員さん⋯⋯佐倉さんはどちらに?」


「ああ。彼女は今日はお休みです。何でも今週はテスト期間だそうで」


「そうなんですか」



 えーーっ!? ということは、今日は店長さんと二人きり!? これは連絡先を聞く絶好のチャンス?



 一旦うつむいてから、ちらっと店長さんの顔を見ると、彼は不思議そうに首を少し傾けていた。どの角度から見てもカッコいいお人だ。


 この前は佐倉さんと店長さんを交互に見ながら話してたから、普通の状態でいられたけど、今日は無理みたい。軽く目を合わせただけで心臓がばくばくしている。



 どうしよう。実果に言われてたから、連絡先の聞き方とか前もって色々考えてたはずなのに。全部、吹っ飛んじゃった。



「申し訳ありません。佐倉さんもお嬢さんに会うのを楽しみにしていたんですが。来週ならテストも終わっていますので、またお会いになれますよ」 


 真っ白になっているところへ謝られ、肩がビクッと震える。店長さんは、どうやら私が佐倉さんに会えなくてがっかりしていると勘違いしたらしい。



「あ! いえその。全然、大丈夫です!」


 へらりと笑ってみせたが、本当は全然大丈夫じゃない。緊張で手汗が出過ぎていて、持っているトレーやらトングを落としそうだった。



「私で良ければ何でもご相談に乗りますので、おっしゃってくださいね。時間は気にせず見てくださって構いませんので」


「は! はい! ありがとうございます」


 ああ。店長さんは今日も変わらず優しくて、笑顔がとっても麗しい。なのに私はろくに目も合わさず挙動不審でごめんなさい。



 罪悪感を胸にショーケースのドーナツを見つめる。今日は閉店時間が迫っているからか、種類がだいぶ少なくなっていた。しかし運の良いことに、私の好きなチョコ系のドーナツがまだある。思わず目を見開いてしまった。



 今日はチョコドーナツの食感違い三つ(ふんわり・さくさく・もっちもち)にしよう。そして選んでいる振りをしつつ、事前に考えていた連絡先の聞き方を思い出そう。


 ええと。いきなり「RAIN(レイン)教えてください」は急すぎるから、世間話でさりげなく聞こうとしてたんだよね。


 何だっけ。天気の話とか仕事の話とか趣味の話とか? でもそこからどうやって連絡先を聞く流れに繋げるんだっけ?


 ああああ! こんなことなら、スマホにメモを残しておくんだった!



「お嬢さんはよく平日の夜に来てくださいますよね。土日はお忙しいのですか?」


「へっ⋯⋯?」


 て、店長さんが話しかけてくれた! 返事しなきゃ!


「ええとですね! 土曜日はほぼ休日出勤で、日曜日はだいたい昼前まで寝ちゃうんです。そこから洗濯とか掃除とか買い物とかしてたら、あっという間に一日が終わってしまいます」


「ああ。分かります。休みが一日しかないと、時間が過ぎるのが早いですよね。私も休みが週一なので、そこに予定を詰め込み過ぎて、結局忙しくしてしまいます」


「店長さんは予定をたくさん入れるんですね。⋯⋯例えばデートとかですか?」


 恋人が居るか確かめるのが怖いくせに、気になって口から出てしまった。不安で身体が強張るのが分かる。すると店長さんは真面目な表情で首を横に振った。


「いえ、それはないです。恋人が居ないですから。よく一人で、美味しいお店探しをしています。食べるのが好きなので」


「そうなんですか」


 え? 店長さん、恋人、居ないんだ⋯⋯!



 心からホッとしてものすごく嬉しくてニヤけそうになる。それを必死に我慢しながら、「美味しいお店探し、いいですね。楽しそうです」と言った。



「お嬢さんは⋯⋯」


「はい」


「お付き合いされてる方が、居るんですか?」



 店長さんが私をじっと見つめ問いかけてくる。真剣な声色と、きりりとした眉、黒く澄んだ瞳――緊張すら忘れて引き込まれてしまう。



「居ません! 私に恋人なんて!」


 自慢じゃないけど人生で一度も居たことないです!



「そうですか。なら、私と同じ、ですね」


 確認するように言った店長さんが、静かに微笑んだ。



 どうしてそんなこと聞いたんだろう。どうしてそんなに嬉しそうなんだろう。


 何がなんだか分からなくて、顔が熱くなって、ドキドキしている。



 でも今なら私、店長さんに聞ける気がする。言わなきゃ。勇気、出さなきゃ。



「あの!」


「もし良かったら、」


次回へ続きます。


本日、何とか投稿できました。来週は多忙ゆえ投稿できるか分かりません。


活動報告は作者のメンタル不調と疲労困憊のためお休みします⋯⋯。(バタリ)

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