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第53話 サノッチの作戦 ②


「キナキナさんをストハニゲに当ててください。ゴム手袋はノブオさんが感電しないように使用してくださいね」


 ノブオはきょとんとした。


「えっ? ストハニゲに? マサオさんに当てるんじゃないのか??」


「はい。マサオさんには私が、もう一体のキナキナさんを当てます。そして当てながら、このミントタブレットをマサオさんの口に投げ入れます。そうしている間に、ノブオさんがキナキナさんでストハニゲに電気をかけますよね? ストハニゲに隙ができたところで、覚醒したマサオさんとカツヒロさんを助けます」


 いつの間にやら、ノブオとサノッチはトイレの前でしゃがみ込んでいた。


 その辺に落ちていた木の枝で、自然と地面をつんつんしながら作戦会議をしている。


「なるほどなぁ……ところで、なんでサノッチがマサオさん担当なんだよ。俺はストハニゲかぁ……」


 ノブオは勝手にストハニゲを任されたことにちょっぴり不満を感じ、いじけていた。


 マサオさん担当の方が花形のような気がして、サノッチがいいとこどりをしていると思ったのだった。


「あぁ、それはですね。ノブオさんがゴム手袋をするからですよ。ゴム手袋でこのタブレットケースを開け、さらにマサオさんの口に入れるのはなかなか難しいでしょうから」


 サノッチの説明はもっともだった。


 だが、ノブオはまだ納得がいかない。


「サノッチはゴム手、使わないのかよ? 片っぽずつ、使うんだろ?」


「私は大丈夫ですよ。特殊なラバーで全身できていますので、感電の心配はありません。それより、ノブオさんの体の方が心配ですよ。しっかり両手に着けて、ケガをしないようにしてください」


 はっとするノブオは思った。


 こんなにもサノッチは、俺を気にかけてくれていたなんて……大切な328円から俺の体を心配してゴム手を買ってくれたのに……あぁ、それなのに、それなのに……


 ノブオは至らない己を恥じた。そして、涙が頬を伝った。


「ありがとう。サノッチ……サノッチも大切な体だ。気を付けてな……うっ、うっ……」


 嗚咽も漏れ、ノブオの感情の荒波に無事、スイッチが入った。


 新品のゴム手袋を、ノブオはしっかりと両手に装着した。


「はい! ノブオさん! ノブオさんのタイミングで私はいつでも行けます!」


 サノッチの言葉で、ノブオは立ち上がった。


 左手のこぶしと、右手に握りしめたキナキナさんを天高く突き上げ、背中に背負う羽をバタバタ、羽ばたかせる。


「うおおおー!!!」


 雄たけびを上げ、ノブオはまっすぐ、丘を目指して走り出した。


 その背中を、すっと立ち上がったサノッチは音もなく、追いかけるのだった。


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