第53話 サノッチの作戦 ①
それは、ゴム手袋だった。
「それ、いつの間に?」
ノブオはサノッチに尋ねた。
「ノブオさんがトイレで用を足している間に、ですよ。ひとっ走り、ドラッグストアへ行ってきました。ついでに、このミントタブレットも購入しましたよ。328円以内で済み、助かりました」
サノッチはハンカチをしまった方とは反対のポッケから、なかなか刺激の強そうなミントタブレットのケースを取り出し、ノブオに見せる。
「ゴム手袋にミントのタブレット? もしかして、これを使うのか?」
ノブオはサノッチからそれらを受け取ると、まじまじと眺めた。
ミントタブレットのケースを無駄にシャカシャカ鳴らしてみたが、特に何も思いつくことはなかった。
「はい。ゴム手袋とミントタブレット、そしてキナキナさんにも協力してもらいます。ノブオさんは気づきましたか? マサオさんの様子に」
「マサオさんの様子……?」
ノブオは思いっきり目を細めると、丘の上のマサオを凝視した。
亀甲縛りをされている以外は、いたって普通のおじいちゃんだ。
だが、ぴくりとも動かない。立ってはいるが、うつむいたままだ。
体調が悪いのだろうか。ところが、それにしてはふらふら、ゆらゆらといった動きさえ、一切ない。
生きているのだろうか……一瞬、ノブオの脳裏によぎる。
「マサオさん、生気がないですよね。マサオさんに生気を戻すといいますか、覚醒してもらう必要があるのです」
固まるノブオにサノッチは言った。
「生気を戻す……? マサオさんはもしかして、その……」
「そうです。マサオさんは生きている人間とはもう、違うのですね。かと言って、完全に亡くなっている、というわけでもないのです。そういう状態からも、早くマサオさんを救わなければなりません」
サノッチはノブオの頭の中を読んだように、答えた。
「そうか……それなら急がないといけないな! どうやって目を覚ましてもらうんだ? キナキナさんとゴム手袋、ミントタブレット……はっ!! 電気とスースーする刺激か!!!」
ノブオはひらめいた。
「さすが、ノブオさん! ご名答!!!」
サノッチも口元がほほ笑んでいる。小さな拍手でノブオを称えた。




