第52話 女神像 ①
ノブオはストハニゲと福田家、きよちゃんのやり取りを真剣に聞きながらも、ソワソワしていた。
「あぁぁ! もうダメだ……も、もれる!!! ごめん! トイレ!!!」
股を手で押さえるようにしながら羽をばたつかせるノブオは、あてどなく走って行った。
「私も行きます!!!」
皆の後方でノブオと同様、静かにしていたサノッチはノブオの後を追っていく。
「ノブオは本当にかわいいよね。今度は彼も締めあげてみたい……ふふふ……」
走り去るノブオを見下ろし、ストハニゲは不敵にほほ笑む。
そんなストハニゲを横で見ているカツヒロは、ちょっぴり悶々とするのだった。
「はぁぁ……あっと。すっきりしたな」
チャックを上げたノブオは意外にも、律儀にしっかりと手を洗う。
「我慢はよくないですからね」
そんなノブオにサノッチはすっと、薔薇の花柄のハンカチを差し出した。
「おっ、ありがとう。サノッチ」
「ところで、ノブオさん。この公園には女神像があるのですが、気が付きましたか?」
サノッチは返されたハンカチを丁寧にたたむと、クリーム色の綿パンのポッケにしまった。
ノブオは、はてと考えた。
キョロキョロはしていたものの、それはトイレを探すためで、もれる、もれると走っていたこともあり、やっと目に入ったこのトイレにしか覚えはない。
「その女性の形をした銅像の下のところには友愛と書いてあり、友愛の女神像と呼ばれています。ここにマサオさんを連れてくることができれば、私たちに勝算があります」
「なんだって!? 友愛の女神像か……どの辺にあるんだ?」
ノブオはトイレの建物からこっそりと出ると、公園内を見渡した。
トイレを背にして真正面、けっこう離れた距離でストハニゲとカツヒロ、マサオの立っている丘が見える。
そして、ノブオから見て左手に、きよちゃん、ジュンジ、カノコが丘をにらみつけるようにして立っているのが確認できた。
だが、肝心の友愛の女神像が、どこにあるのかはわからない。
「おい、サノッチよ! 一体どこら辺にあるんだよ?」
ノブオは隣で黙っているサノッチに声をかけた。
「ジュンジさんたちのさらに後方、公園の入り口の横です」
サノッチはその方向を指さした。
そこには明る過ぎないオレンジの外灯に照らされて、大きな人のような影が見える。
友愛の女神像は公園の外側を向いているらしい。
「あれか……あそこにマサオさんを連れて行くんだな? だとしても、だ。あの丘の上でストハニゲに捕まっているのを、どっちにしてもまず、早く助けないといけないな」
ノブオは腕を組み、丘を見つめながら、うーんと考え込んだ。
「実は、私に作戦があるのですが、聞いてもらえますか?」
「えっ?」
ノブオは横のサノッチに視線をやった。そして、驚いた。
彼の手にはキナキナさんの包みが二つと、さらに謎のアイテムが増えているのだった。




