第51話 縛られた父と祖父、そしてストーカー ①
公園の、土が盛られ小高くなった丘の上、ジュンジの父カツヒロと祖父マサオは、ストハニゲによって捕らわれていた。
「父さーん!! なんでそんな恥ずかしい姿で……じいちゃんまで……」
カノコは悲しくなった。その隣でジュンジは絶句だ。
クールビズなお疲れサラリーマン姿のカツヒロと、地味なループタイに綿パンのマサオは縄で亀甲縛りにされていた。
「カノコ、ジュンジ!!! 助けてくれ!! 頼む!! はぅっ!!!」
下手に動くと、さらに縄の締め付けはキリキリときつくなるようだ。
「はっはっは! カツヒロさん、そう簡単に逃げられては困るのですよ」
ストハニゲはカツヒロのロープをさも嬉しそうに締め上げる。
「ちょっと!! そこの高級スーツのおじさん! ストハ……? ハゲさん!!! いくらお金持ちでも、やっていいことと悪いことがあるでしょうが! うちの父さんとじいちゃんが何したっていうのよ!」
ジュンジは当てになりそうもない。私がしっかりしなきゃ、とカノコは強がってみせる。
「はっはっは、はぁぁ……お嬢さん、実はね。カツヒロさんとマサオさんには全く、なんの恨みもないのだよ。むしろ、彼らはとってもいい人たちだ。こうやっておとなしく、楽しみながら縛られてくれるしね!」
「はぅっ!!! カノコー!!!」
父は再び、縄を絞められた。
「父さん!!! なに喜んでんのよ!! なんでそんなに……おとなしく縛られてんのよ……」
丘を見上げるカノコは、涙が出そうになるのを必死にこらえている。
「どうして父さんとじいちゃんなんだろう? ストハニゲの目的は一体……なんなんだ?」
ジュンジは不意につぶやいた。
「ストハニゲの目的はね、たぶん私なの。ごめんなさいね、ジュンジ、カノコちゃん……」
いつもは強気なきよちゃんが、大きなタレ目を伏し目がちにしながら、申し訳なさそうに言った。
「えっ? きよちゃんが目的って、どういうこと?」
ジュンジは驚いた。カノコもきよちゃんを見ると、次の言葉を待った。
「実は、私にストーカーがいたの。いろいろ嫌がらせされてたんだけど、犯人が全然わからなくて。最近になってストハニゲが犯人だって、やっとわかったのよ。味方のフリして近くで、困ってる私の顔を見てたのよ!」
きよちゃんは言いながら、だんだん腹が立ってきた。
「ということは、今回もきよちゃんを困らせようとして……しかも、もうストハニゲがストーカーってことがバレてるから、やけっぱちになったってことか!?」
ジュンジの名推理が飛び出した。
「な、なに!? あのス……ストーキングハゲ!! きよちゃんにストーカー行為をしておきながら、おっさんとじいさんを縛り上げるヘキもあるとか、ヤバすぎるでしょ……このド変態!!!」
カノコの背筋に悪寒が走る。最大限の蔑みを込め、カノコはストハニゲをにらみつけた。
「はぁぁあ!! お嬢さん……いいねぇ……もっと、もっと……言ってごらん……」
丘の上から恍惚の表情を浮かべ、ストハニゲはねっとりとした熱いまなざしをカノコに送り返す。
「カノコちゃん、だめよ! あいつが喜んでしまうわ! ガチの変態だから、ドSでドMなの。どっちも好きなのよ……」
「なんだって!? そんな人がいたとは!!!」
ジュンジはちょっぴり、ストハニゲに尊敬の念を抱いた。




