No.44 虹色の宝箱とダンジョン攻略
僕は、100層のボス魔物『醜く穢れた私怨の仮面(無垢なる完全体)』との激戦を経て、疲れがピークに達してしまいぶっ倒れていた。
勝ったのに盛大に喜ぶこともできずに、頭に響くレベルアップ音を聞き続けていた。
数分の時が流れ、レベルアップ音も止まったので上半身をおこす。体のだるさは相変わらず残っているがずっと寝転がってはいられないので、気力を振り絞り、立ち上がる。
汗を相当かいているので上半身の服を脱ぎ、ポケットにしまう。「賭博師の衣嚢」は便利なスキルだ。最大MPを参照するのでMPが無くても使用ができる。まぁ、レベルアップしているのでMPはレベルアップ分回復はしている。
半裸になり、気分が良くなったところで周囲を見渡し始める。
そして、虹色に光り輝く宝箱を発見する。
「んんっ?虹色の宝箱なんて存在するのか?」
ボス報酬の宝箱は、下から『木の宝箱』『鉄の宝箱』『銅の宝箱』『銀の宝箱』で、一番上に『金の宝箱』がある。『虹の宝箱』なんて存在しない。
だけど、僕の目の前には虹色に光り輝く宝箱がある。
虹色だ。どう見ても木の宝箱よりランクが低いわけがない。そう考えると、鉄の宝箱の上のランクか。これも違う気がする。もしかして、金の宝箱の上のランクの宝箱かもしれない。
初めて見た、虹の宝箱に僕の期待が最高値まで高まった。
世界初の偉業。そんな言葉が頭の中を駆け巡った。先ほど上着と一緒に仕舞ってしまったスマホをポケットから取り出し写真を撮る。
ダンジョンの宝箱はダンジョンに固定されており、持ち運ぶことができない。そのため、見つけた証拠として写真を撮っておくことが大切である。
写真も撮ったことだし、虹の宝箱開けさせてもらいますよ。
僕は宝箱に手をかけ思いっきり開けた。
中身は、自分の目元を覆い隠すことのできる仮面だった。
すかさず手に取り【アナライズ】を使う。
♢♢♢♢♢
名称:偽神の仮面
ランク:レリック
装備枠:アクセサリー
かつての古代人は神をも騙した。後に神に正体は暴かれ代償に地下深くに封印された。かの古代人は神に醜い姿に変えられ恨み辛みを宿す仮面となった。
(専用装備:錦戸翔)
スキル「不可視」
装備中、自身のステータスを他者に見られなくする。
スキル「僕に手に入れられないモノはない」
選ばなかった分岐の職業のスキル・魔法を取得できるようになる。
HP+1000、MP+1000
♢♢♢♢♢
専用装備。
通常職11種類の専用装備は時々出てくる。それらは、対応する職業の人でないと装備ができない装備だ。金の宝箱からしか出ないらしい。性能が良い物が多く数十億を超える値段で取引されている。基本的には、手に入れた人が使うし、自分が使えなくても使える仲間に渡す。なかなか世には出回らない装備である。
今回は僕専用装備だ。個人を対象とした専用装備は生まれてこの方見たことも聞いたこともない。ダンジョン内には自分専用の装備が隠されおり、手に入れれば最強になれると夢見る冒険者がいると聞いたことがあるぐらいだ。一部の酔狂な高ランク冒険者は、あるかどうか分からないコレを探し当てるために高難度ダンジョン挑んでいたりする。
よかったな、まだ知らぬ高ランク冒険者たちよ。虹の宝箱から出るみたいだぞ。君たちの夢は実在するらしい。
僕はこの日、新たな発見を2つ見つけた。
最高ランクの宝箱は『金の宝箱』ではなく『虹の宝箱』であること。
個人の専用装備が実在すること。
冷静になって考えてみると、これを世界に発表するのは危ない気がする。
発表すれば世界は歓喜と混乱に陥るだろう。その時の混乱を僕は予測できないので、時が来るまでこの虹の宝箱と『偽神の仮面』のことを秘密にする(使わないとは言っていない)。僕のランクは低いのだ。それに、僕を守ってくれる後ろ盾もない。
こういった隠し事は冒険者の中では基本中の基本だ。簡単に手の内を見せるなんてバカがやることだ。手の内を見せるのは信頼できる味方だけにしておくべきだ。
それで『偽神の仮面』の効果を見る。まずは、装備すると誰も僕のステータスを見られならしいスキル「不可視」とHP・MP+1000だな。これは、いい効果だな。
僕の知らないスキル・魔法で知らない間にステータスを見られるのは困る。覚醒者なんて特に気をつけた方が良い。ファンタジーの物語定番の「看破」のような力がこの世界にない保障はないからね。
スキル「僕に手に入れられないモノはない」は選ばなかった分岐の職業のスキル・魔法を取得できるようになる効果。
これはあれかな。レベル100の時の分岐の職業、僕の場合は『マジックギャンブラー』と『闇ギャンブラー』である。その職業で取得できるスキル・魔法を手に入れられるってことかな。説明欄には装備していない取得できないとは書かれていないけど、ダンジョン潜るときは装備しておいた方がいいな。幸いアクセサリーだし装備が圧迫されないし、他の効果が良いので装備しない理由がない。身バレ防止のために仮面をつけた冒険者もいるので怪しいカッコウにはならない。この仮面の性能だけ隠し通せればいいのだ。
アクセサリーでこの性能かぁ。さすが『虹の宝箱』だな。
☆☆☆☆☆☆
現在僕は、『偽神の仮面』を付けたり外したりして楽しんでいる。(傍から見れば、半裸で仮面をつけた変態である)
気が済んだのでそろそろ帰ることにするよ。
そういえば、この転移陣の名前って何だろう。ダンジョンルールから考えれば【脱出用転移陣】じゃないんだよな。よし、僕が勝手に名付けてやるか。
今日から君は【攻略者用帰還陣】こんなところかな。
攻略することしか考えていなかったので、話を振ることなかったが100階層に突入した時点で【脱出ゲート】を見つけたよ。だから、僕はここが最終階層だとここに来た時点で断定していたんだ。
すごく疲れたけど、Sランクダンジョン楽しかったよ。餓死する前に攻略できて本当に良かったよ。
帰還陣に乗る。そうすると帰還の転移中に
『特殊ダンジョン『秘密:百戦錬磨の仮面』が攻略されました。
攻略者に『称号:孤高の修練者』を送ります。おめでとうございます。』
頭の中に響く声。謎のシステム音さんに初めて祝福されたよ。
転移した先は、秘密基地の前だった。これは、他のダンジョンと変わらない。
月が沈み太陽が顔を出す時間、日が昇り始めた午前5時頃の出来事だった。
秘密基地の近くにはテントが張られており、そのすぐそばの椅子で友人が座って待っていた。寝ずに僕の帰りを待ち続けていたらしい。テントの中には、水とすぐ食べられる食糧が置いてあった。
こめん、アキラ。「ただいま」も言わずに一直線に食べ物に飛びついちゃって。それと心配かけてごめんね。
後で確認してみたが称号は本当にただの称号で、ステータスにも表示されない名誉称号らしい。




