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80、子供が産まれました。


 ペスト終息から一年が経ち、私のお腹の中には、シャルマーニュ王太子との間の子供が宿っていた。


 意外なことに、シルヴィも去年アラン・フレーズ卿と結婚して、私よりも二ヶ月先に子供を宿していた。


 今私とシルヴィは妊娠仲間である。そのうち近い時期に子供が産まれたら、今度はママ友としても仲良くできたら良いと思う。


 私の妊娠を期に、フランセイズ国王は退位を発表した。


 シャルマーニュ王太子はシャルマーニュ国王陛下となり、私も王妃となった。


 

 ペストは終息し、人々の生活はだいぶ元に戻ったけれど、ペスト中に実行してみて、良かった施策は、ペスト終息後も継続している。


 例えば、外に出るのが大変なお年寄りや病人、忙しい人に対するお買い物代行サービス。


 また、児童虐待や、貧困等による困窮救済のための、役人による定期的な見回り、などである。


 また、祭りの時にも、以前のようにギュウギュウに人が押し掛けて、芋洗いになるような開催の仕方は、全て改められた。


 上下水道は完備し、それぞれの家にシャワーが付き、バスタブがある家も増えた。


 都市計画も順調に進み、変えられる場所から、道幅を広く、陽の当たる街並みに作り直している。


 浄水場の稼働も順調で、家庭排水は必ず綺麗にされてから、川や海に戻されている。


 人々に手洗いうがいの習慣ができ、石鹸は家庭の必需品となった。


 デュール・ショコラの売り上げは好調で、ショコラの輸出だけでも、フランセイズはかなりの外貨を得ている。


 また国内のショコラティエ達の成長は目覚ましく、毎日のように新しく美味しいショコラを開発しては、国内のショコラ好き達を喜ばせていた。


 ショコラ製造や、菓子製造専門の学校ができ、私もその初代講師に名を列ねたけれど、今では生徒の方がより素晴らしい菓子を作るので、私はただの名誉講師になっている。


 その学校で作られた、新作のショコラや、生徒の作った奇想天外な菓子を食べさせて貰えることが、最近の私の一番の楽しみでもあった。


 結婚もできないまま死ぬ運命だった私が、今こうして王妃として、大きなお腹を抱えながら、シルヴィと一緒にお菓子を食べているなんて、本当に不思議な気持ちだった。


 疫病の恐怖も去り、まさかこんなに平和な未来を迎えられるなんて、思ってもみなかった。


 けれどこの平和は、恒久的なものではない。


 人々はこの先も、常に対処法の分からない疫病の危険に晒され続けていくだろう。


 その時に、できる限り疫病が広がらない環境を作り、また、いかに疫病と戦えば良いのか、それを次代の人達にも伝えていくのが、私の仕事だと思った。


 顕微鏡の開発も、今急ピッチで進められていた。

 お腹の中の子が大人になる頃には、細菌学や抗生物質の研究も更に進んでいることだろうと思う。


 これから大人になる全ての人へ、世界を住み良く、健やかに過ごせるようにして渡したい。私はそう考えていた。


 

 今回の疫病対策を通じて私が知ったのは、人はまだまだ捨てたものではないということだった。


 川を汚し、街を汚し、自然を壊す人間に絶望していた時期もあったけれど、人間はまた同時に、自分の力で汚染を清浄することもできた。


 沢山の人が、自身を律して疫病と戦い、自粛し、我慢し、清潔を保ち、感染を防いだ。


 人は、こんなにも他人を思いやり、自分を律することができるのだと。



 数ヶ月後、シルヴィの出産に続き、私も無事に可愛い男の子を授かった。


 国中は、二人の聖女に無事に子供が誕生したと、大いに賑わった。


 こうして我が子を腕に抱けたのも、全てが私を支えてくれた皆のおかげだった。


 シャルマーニュ様は、国王になっても常に私を気遣い、今も赤子を抱く私を隣で支えてくれていた。


 シルヴィは、先に産まれた自分の子供を抱きながら、私を今も助けてくれていた。


 そして国民は、そんな私達を祝福しながら、今も街を清潔に保ち、一人一人が疫病対策の意識を持ち生活してくれていた。


 疫病との戦いに終わりはないけれど、今こうしてコレラとペストという、人類史上最大の死者を記録した、最悪の伝染病を、最小限の被害のみで食い止められたのは、皆の努力あってのことだった。


 疫病と戦った、一人一人が英雄であり、聖女であり、聖者だった。


 今もどこかで、疫病と戦っている人達がいるかもしれない。


 そんな人達に、私はこれからも出来る限りの応援と協力をして、一緒に戦っていきたいと思う。


 月並みな言い方だけど、私達の戦いは終わらない。

 次を担う若い力に、少しでも生きやすい世界を作るために。

 そして、今を生きる人達が、一人でも多く、健やかに生き続けられるように。


 ひとまず私の目の前には、育児という、疫病対策に勝るとも劣らない、大きな戦いが待ち受けていた。


 私は今日も、育児に感染症対策に、日々奮闘を繰り返していた。


 空の上では、虹色の光が、そんな私達を見て、少し笑っているようだった。






おわり


ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。


コロナの一日も早い終息を願い、この話を書きました。

苦しい思いをしている方も多いかと思います。


皆様の健康と息災と、コロナの一日も早い終息を心からお祈りしています。



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― 新着の感想 ―
[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★
[一言] 昨今、悪役令嬢にハマり完結作品を端から読み始め、この作品に辿り着きました。 実のある設定が非常にファンタジーとしては斬新で面白かったです。 コロナが蔓延して直ぐにこのように作品が書けることに…
[良い点] 先程読了致しました。 主人公が最後まで自分自身のことも含めて諦めず、頑張って幸せになれてよかったです。 捨て身って格好良く言われることも多いですが、結局のところただの自己満足じゃないかと…
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