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72、デュール・ショコラを沢山作りました。


 フランセイズ初の大型公衆浴場として作った、スパ・クルニーは、順調に業績を伸ばしていた。


 客足も伸び、クルニーの成功を見た他の商社でも、もっと手軽に行ける公衆浴場を作ろうとしている話も聞いている。


 上下水道が完全に完成したなら、そういう小型公衆浴場や、各家庭にも浴室を設けることができるようになるだろう。


 ショコラ・タブレットの需要は爆発的に増えていた。

 リ・コーズ王国をはじめ、各周辺国にもその味は伝わっているし、注文に生産が追い付かない状態だった。


 他国だけではなく、フランセイズ国内でも流通させたいので、現在は聖堂だけではなく、フランセイズ国内の様々な菓子店でショコラタブレットの製作が始められていた。


 また、ショコラタブレット用の工場もでき、いまはショコラ・タブレットはフランセイズの主要産業になっていた。


 問題はカカオを全て輸入に頼っている部分ではあるけれど、カカオ自体をフランセイズで作れるようになるには、まだまだかなりの工夫が必要そうだった。


 現在まだショコラ・タブレットは需要分を生産するだけでも精一杯で、2月の恋人達の日にショコラ・タブレットを贈る習慣を付けるまでにはなっていなかった。


 ラ・サンヴァロンタン、2月の恋人達のお祭り。

 気がつけば、そのお祭りまで、あと一週間足らずになっていた。


 そういえば、来年のラ・サンヴァロンタンでは、ぜひ私からのデュール・ショコラが欲しいと、以前シャルマーニュ王太子は言ってくれていた。


 であれば、最高に美味しい、私の心を込めたデュール・ショコラを作ってプレゼントしよう。


 私はそう決めると、早速デュール・ショコラ作りに取りかかることにした。


 前世ではバレンタインのたびに手作りチョコを作っては、色々な人…主に女友達に配っていたので、手作りチョコ作りは色々経験していた。


 まずは聖堂から、最高級のショコラ・タブレットを沢山購入した。

 今回は特別な本命チョコを王太子に渡して、他にも義理チョコを渡したい人が何人もいたからだ。


 あと、用意するのは、生クリーム、ラム酒、ブランデー、アーモンド、くるみ、小麦粉、バター、卵、アーモンド粉、砂糖、すみれの砂糖漬け、粉砂糖、食紅、等。


 作る予定のものは、トリュフと、ナッツチョコ、チョコラング・ド・シャ、チョコマカロン等だった。


 できるだけ沢山の種類のチョコ菓子を作り、チョコの可能性を皆に伝えたかった。


 私は厨房を借りきると、久しぶりの手作りチョコ作りを頑張ることにした。


 まずは一番簡単な、生チョコを包んだトリュフから。


 チョコレートの基本と言えばテンパリング。


 まずはショコラ・タブレットを刻んで細かくし、それを50度のお湯でゆっくり湯煎にかけて、溶かす。

 綺麗に溶けたら、湯から外し、26度くらいになるまで、温度を下げる。

 次に再びぬるい湯にあて、だいたい30度くらいまでに温度を上げて、それをキープすれば、テンパリング完了。

 艶のある、コーティング用チョコとして利用できる。


 次に、ガナッシュの作り方。


 再びショコラ・タブレットを細かく刻み、同量の生クリームを鍋に入れて、火にかけ、沸騰寸前まで温めたら、素早くチョコを混ぜる。


 分離しないよう慎重に混ぜながら、ある程度トロリとしたら、即座にブランデーを入れる。


 そのまましばらく泡立て器で空気も入れるように混ぜれば、適度な固さのブランデーガナッシュの出来上がりである。


 今回ブランデートリュフは、一番スタンダードな、ツノがあるタイプのチョコトリュフにしようと思う。


 丸めたガナッシュをテンパリングしたチョコでコーティングして、少し固まったところでフォークでツノを作る。


 こうして、見た目にも高級感のあるブランデー・ショコラ・トリュフが完成した。


 この調子で、次は小さなハートのチョコ型の側面にテンパリングしたチョコを回し入れ、余計なチョコは戻す。


 一度固め、空いた部分にこんどは泡立てず、蕩けるように柔らかい状態に作ったラム・ガナッシュを流し入れ、再び冷やす。

 中のガナッシュが少し固まった時点で、再び蓋をするようにコーティングチョコを流して固め、型から外せば、ハート型の、蕩けるガナッシュ入りのラム・デュールショコラの出来上がりである。


 お菓子作りは楽しかった。温度調整やタイミングの難しいものがあり、ショコラの機嫌を見ながら作業を進めていると、他のことを全て忘れて没頭してしまいそうだった。


 こうして私は、丸2日をかけて、全てのショコラ菓子を作り終えたのだった。


 今回チョコを上げたい人は、何よりもまず、シャルマーニュ王太子、そして、聖女シルヴィ。そして、フランセイズ国王はじめ、お世話になっている沢山の人達。


 もしかしたら、これが最後の挨拶になるかもしれない。


 私は日持ちもするチョコを纏めたものには手紙を添えて、ブルゴーニュ公にも、マルセイル伯にも、そして町に住む少年のジャンにも、皆に、ラ・サンヴァロンタンに合わせてチョコを贈れるように手配をした。


 フランセイズに昔からある、ラ・サンヴァロンタンとは少し趣旨の違う、日本の義理チョコ配りのようなやり方だったけれど、もしも私があと一週間足らずで死んでしまうのだとしたら、最後に覚えていて欲しいのは、私の作ったショコラは美味しかった、という思い出だった。


 そして、シャルマーニュ王太子殿下にも…。


 私は王太子殿下には、特に心を込めてショコラの準備をしたのだった。 



 

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