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67、虫除けスプレーを作ります。


 一口にノミ対策と言っても、この世界にはまだ有効な殺虫剤は存在していなかった。


 前世の知識を頼りに、殺虫剤のようなものを開発する方法もあるとは思う。

 けれど半端な知識で手を出せば、人体に有害なものができてしまう可能性もあった。


 虫を殺すのではなく、虫を防ぐだけなのであれば、木やハーブに有効なものがあるかもしれなかった。


 確か以前、とある小鳥は巣にヒノキの葉を敷き詰めて、虫除けにしていると、どこかで聞いたことがあった。


 しかし残念ながら、この国の森にはヒノキは生えてはいなかったような気がした。


 けれどハーブであれば、シルヴィが詳しいかもしれなかった。

 私は知恵を借りに、聖堂にいるシルヴィを訪ねたのだった。


「カミーユ様!頼っていただけて嬉しいです!やっぱりこういう時に頼り易いのは同じ女性の私ですよね!」


 私の訪問に、シルヴィは両手を挙げて喜んでくれた。


 私とシャルマーニュ王太子が婚約した後も、シルヴィは変わらず私を慕ってくれていて、本当に嬉しいと思う。


「シルヴィ、早速だけど、虫除けに効果的なハーブって知っているかしら?」


「虫除けハーブ、たくさんあります!カミーユ様は、特にノミ対策を考えていらっしゃるんですよね、ノミに効果があるハーブと言えば、ラヴェンダーに、ローズマリー……。」


「あ、ローズマリーも効果があるのね。」


「はい、ローズマリーはすでにかなりの家がベランダで栽培していますので、皆様使いやすいと思います。」


 シルヴィは紙を取り出すと、ハーブの名前を書き出し始めた。


「他にも、ペニーロイヤルミント、ニーム、フィーバーフュー、シトロネラグラス、ゲットウなどが、ノミには効果的です。」


「たくさんあるのね。」


「はい、これらのハーブを弱火で煮出した汁を薄めて、壁や窓に散布すれば、かなりの効果が期待できます。」


「それは良いわね。」


 天然成分の虫除け液が作れるのなら、スプレーボトルを作り、それで散布するのが良さそうに思えた。


 本当はヒバ油などが手に入れられれば良かったのだけど、この近くでヒバが生えている場所も見当たらなかったので仕方ない。


 ハッカ油なども虫除けには効果があると聞いたことがある。

 各家庭に虫除けハーブを植えて貰うことを勧めつつ、こちらでハーブ園を作り、虫除けスプレーを作って配っても良いと思った。


「あとは、塩が効果的です。」


「塩?」


「そうです。掃除をする時に、まずは床に塩を撒いてから掃除をします。すると、床などに落ちていたノミの卵は水分を取られて死んでしまうのです。」


「そうなの!?それは素晴らしいわ!」


 シルヴィがどんどん出してくれる提案は、私のやりたいことをどんどん方向付けてくれた。


「各家庭を掃除をしてくれる人を雇っても良いし、各家庭に虫除けスプレーと塩を配布して、各自で掃除して貰うのも良いわね。」


「ただ品物だけ渡しても、使わない人も出ると思いますので、ノミ駆除に特化した人を国が雇って、街を綺麗にするのはとても良いと思いますわ。」


「そうよね、忙しくて掃除やペットのシャンプーなんてしてられない人もいるでしょうから、国が掃除人を雇って、代理でどんどん綺麗にしてしまえば良いわよね。」


 私はシルヴィと一緒に、どんな掃除人をどんな風に雇って、掃除とノミ駆除をさせていったら効果的かを話し合った。


 昨日まで一人で悩んでいたのが嘘のように、シルヴィと話していたら、考えが纏まった。


 やはり誰かと話すのはとても楽しいし、シルヴィのような人が変わらず仲良くしてくれるのは、何よりありがたいと思う。


 私はシルヴィと纏めた案を元に、シャルマーニュ王太子に実行できる施策についての相談に行った。


 シャルマーニュ王太子は、日々様々な公務で忙しくしているのに、私との時間は必ず取ってくれる。

 本当に大切にして貰えていると思う。


 残された時間は少ない。私は王太子の好意に甘えて、シルヴィと纏めたペスト予防に繋がるノミ駆除計画について、シャルマーニュ王太子にプレゼンをした。


「このボトルを見てください。」


 私は、まず最初に内蓋にシャワーヘッドのように小さな穴を開けた手作りボトルを、シャルマーニュ王太子に見せた。


「これは?」


「虫除けのスプレー、簡易版です。」


 中には、虫除けハーブで作った天然の虫除け剤が入っている。


 できれば、イメージにあるような噴霧ポンプを作りたかったのだが、私の頭では無理だったので、それは今後の課題である。


「こうして、虫除けハーブで作った液を撒けば、ノミを予防することができます。」


「ほう。」


「本当は、こうしてレバーを押すと液が噴霧される容器が良かったんですが、私の知識では作れなくて…。」


「噴霧…?」


 至らなかったところを正直に話すと、王太子の目が変わった。


「液を圧縮して、噴霧させるのか?」


「はい、その方がまんべんなく吹きかけられます。」


「それは面白いな、早速技術者に研究させよう。」


「え?ありがとうございます!」


 思いもよらぬ王太子からの後押しも貰い、虫除けスプレーの開発は、更に完成度を上げられそうだった。



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