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49、ショコラの準備ができました。


「シャルマーニュ王太子殿下には、今回のショコラ・タブレットの用意にご支援いただき、本当にありがとうございます。」


 私は改めて、深々とシャルマーニュ王太子にお辞儀をした。


 ショコラの配布は、当初から予定をしていたけれど、シャルマーニュ王太子が経済的支援をしてくれたおかげで、かなりの規模のバラ撒きができそうだったのだ。


 リ・コーズ王国の国王には、ブルゴーニュ公爵を通じて先に渡しておけば、リ・コーズ王国の貴族達にも販路を広げる切欠にできるかもしれなかった。


「ショコラ・タブレットは、カミーユ様のご提案通り、一枚100グラムで作り、油紙で包んでから、ショコラ色の紙で包装いたしました。」


「ありがとうシルヴィ!イメージぴったり!さすがだわ!」


 シルヴィが作ってくれたショコラ・タブレットは、私が前世でよく食べていた板チョコと、とてもよく似たデザインに作って貰えた。


 このくらいの大きさなら、一番配りやすいし、食べやすいと思う。


「ありがとうございます!カミーユ様に褒めていただけるのが、一番嬉しいです!」


「うん、味も更に良くなってる!シルヴィに任せて、本当に正解だったわ!」


 私はショコラ・タブレットを試食して、最初に作った試作品よりも、更になめらかさと、風味が増していることに気付いた。


「砕いて磨り潰す作業を、水車で行うことにしたんです。これでだいぶ作業が楽になり、量を作ることができるようになりました。また、生クリームも、できるだけたくさん入れました。」


 シルヴィは得意気にそう言った。さすが美味しいハーブ入りケーキを考案するだけあって、シルヴィのお菓子に対する閃きと熱意は素晴らしいものがあった。


「さすがシルヴィだわ!私、シルヴィと一緒にいられて、本当に嬉しい!」


「私こそです!カミーユ様のような素晴らしい方のお役に立てるなんて、本当に生きていて良かったです!」


 私とシルヴィは、しっかりと手を握りあった。


「ん、ウォホン!」


 二人で盛り上がっていると、後ろにいたシャルマーニュ王太子が、やや大きめの咳払いをした。


「シャルマーニュ王太子殿下、お風邪ですか?」


 私はその咳が気になり、思わずそう聞いてしまった。

 もしも体調不良だったら、今後の予定は全部変更しなくてはならない。


「いや、唾が絡んだだけだ。心配ない。」


 否定するシャルマーニュ王太子の顔をじっくりと見たけれど、確かにすこぶる健康そうなので、よしとする。


「良かったです。シャルマーニュ王太子殿下と、シルヴィには、これから血清注射の治験をしていただきたいと思っていたので。」


「血清注射?何だそれは?」


 シャルマーニュ王太子は、初めて聞くであろう言葉に、首を傾げた。


「この針を刺して、腕に薬を入れるのです。」


 私は二人用に用意した注射器を見せた。


「針を腕に刺すのか?それは拷問か?」


 注射器の鋭い先端を見て、シャルマーニュ王太子は、一歩後退りした。


「いいえ、医療です。この筒の中に薬を入れ、中空になった針を通り、体内に薬を送り込むのです。」


「中空!?すごいな!」


 細い針の中身が空洞になっているのを確認し、シャルマーニュ王太子は、その造形に感嘆する。


「しかし、針を腕に、とは…。」


 シャルマーニュ王太子は嫌そうな顔をしていた。確かに注射が好きな人はなかなかいないだろう。


「ちなみに、この血清は、私の血から取ったものです。コレラの抗体を注射することにより、コレラにかかりにくくさせることが目的です。」


「その筒に、カミーユの血が入っていて、それを私の体に入れるのか!?」


「その通りです。」


「そんな治療法があるとは…。」


「正直、まだ実験段階です。危険もあると思います。ですが、先に少量試した医師の皆様には拒否反応が起きていないようですので、そろそろ本格投与をしたいと思っています。」


「ちょっと待て、私より先に、医師達とやらに、あなたの血を施したのか?」


「はい、ごく少量ですが。シャルマーニュ王太子殿下にも、まずはごく少量入れさせていただき、拒否反応が起こらないか、先に確認させていただけたらと思います。」


「いやいやいや、ちょっと待て。」


「お嫌でしたら、無理にとは申しません。」


 やはり私なんかの血を入れると言われたら、普通は怖いだろうな、と、私は王太子の反応を見て思っていた。


「そうではない。私より先に、医師達とやらがあなたの血を与えられるのが気にいらない、と言っているんだ!」


「え?」


「貰うなら、私の方が先で然るべきだろう!」


「ですがまだ、安全性の確認も取れていませんし…、まずは試験をしてから…。」


「あなたの血が、危険だったり、私が拒否反応を起こすわけがないだろう!」


 堂々と言い切られて、そういう問題ではありません、と言い返すのも憚られてしまった。


「試験なしで、いきなり投与してよろしいのですか?」


「ぜひ最初に頼む。」


「あ、私は二番目にお願いいたします!」


 率先して、血清注射を希望するシャルマーニュ王太子とシルヴィに、私は不思議な気持ちになりながらも、とりあえず本人達の希望通りにすることにしたのだった。








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