表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/80

48、血清療法を始めました。


 私は、採血したジャンの血液を試験管に移し、空気中の細菌に触れないように、蓋をきちんとした。


「この、採血した血をしばらく放置すると、凝固してできる血餅と、上澄みの血清に分かれます。抗体は、こちらの血清に含まれています。」


 私はジャンにジュースをあげて休ませると、引き続き医師達に説明を続けた。


「そしてこちらが、昨日のうちに私の血液から採取した、コレラの抗体入りの血清になります。」


 私は三分クッキングの要領で、すでに抽出しておいた、私の血清を取り出した。


「おおっ!」


 医師達は、皆ノリが良く声を上げてくれるので、こちらも説明しやすかった。


「この血清を塩水で薄めた液体を、皆様に投与します。ここで投与用の注射の出番です。」


 私は今度は針の細い注射と、替えの針を二本用意した。


 ゴクリ、と、医師三人がその注射器を見つめた。


「まずは、皆様の腕に、ごく少量のみの薄めた血清を注射し、拒否反応が起こらないか、確認します。半日様子を見て、大丈夫であれば、一定量の注射をいたします。」


 私は、自分の血清を薄めたものを、注射器に用意した。


「今回は、まだ安全性の確認が取れていないため、静脈注射ではなく、皮下注射で行います。今から行うのは、ごく少量のテストのみです。誰から打ちましょうか?」


「では、私が。」


 手を挙げたショリアック外科医に頷いて、私は準備をした。


 まずショリアック外科医の腕をアルコール消毒し、細い注射針を当てる。


 二人の医師は、それを両脇から見守った。


「行きます。」


 ほんの少しだけ針を差すと、少しだけ押子を押す。ショリアック外科医の腕に、少しだけ薬剤が入ったのが分かった。


「揉んだり触ったりはしないようにしてください。」


 針を抜くと、手早くガーゼと包帯で、簡単に保護をする。

 医療用テープなどがまだ登場していないのが残念だったけれど、それらは今後の課題として、また今度考えようと思う。


「では、私も。」


 プーヴァル内科医も手を挙げた。


「では、針を変えます。」


 私は注射器の針を交換した。私の注文に応えて、上手に針だけ交換できるタイプに作って貰えて、本当にありがたいと思う。


「必ず、同じ針を違う人に使い回すことはしないでください。感染症の原因になりますので。」


 私は新しい針に変えた注射器で、プーヴァル医師の腕にも針を刺した。


「次は私が。」


 デュリー医師も手を挙げる。


「針を使う前には、必ず消毒と浄化をするのを忘れないでください。」


 結局、注射を辞退する医師はおらず、三人とも、少しではあるけれど、初めての注射を経験した。


「これで、あと半日様子を見てください。」


 私は三人の医師に、無事に試験注射を終えると、待ち時間に血液と免疫の関係についての基礎知識に対する講義をすることにした。


 元々看護士でもなかった私が、何故免疫の基礎知識があるのかと言うと、前世で免疫細胞を擬人化

した漫画が大好きだったのと、高校で生物を選択していたこともあり、細胞の基本構造も免疫も、授業で習っていたからだった。


 こんな世界に転生すると知っていたら、もっと医学も勉強していれば、ペニシリン以外の抗生物質の精製や、専門治療ができたのにと思うと悔しいけれど、前世の私も、医者になれるほどは賢くなかったのだから仕方ない。


 ひとまず今は、今持っている力を総動員して頑張るしかなかった。



 しばらくすると、シャルマーニュ王太子とシルヴィが、公爵邸に来てくれた。


 明日の参加者をもう決定してくれたようで、それをわざわざ伝えに来てくれたのだ。


 シルヴィには、他にも頼んでいたことがあったので、こうして早々に来てくれる、仕事の速さは本当にありがたかった。


 シャルマーニュ王太子は、明日も会うのだし、手紙で済むところを、わざわざ足を運んでくれる理由はよく分からなかったけれど、来てくれたのなら、王太子にも先に抗体を打たせて貰えば良いかと思った。


「シャルマーニュ王太子殿下、シルヴィ、よくお越しくださいました。わざわざのご足労、本当にありがとうございます。」


「こちらこそ、忙しい中何度も済まないな。」


 シャルマーニュ王太子は、どこか照れたような表情をしていた。 


「いいえ、シャルマーニュ王太子殿下には、本当に良くしていただけて、感謝の言葉もありません。」


 私がシャルマーニュ王太子に感謝感激しているのには、理由があった。


「ところでシルヴィ、例の件はどんな感じかしら?」


「はい、おまかせください。シャルマーニュ王太子殿下がお金を出してくださるので、かなりの量のショコラ・タブレットを作ることができました。」


 シルヴィはニヤリと笑う。


 そう、私がシルヴィに頼んだのは、救援隊でリ・コーズ王国に持って行くショコラ・タブレットの用意だった。

 

 救援を名目に、大量のショコラ・タブレットを配る。

 栄養補給はもとより、ショコラは美味しいという味を、リ・コーズ国民に浸透させる。


 経済が回復したら、今度はお金を出してショコラ・タブレットを買って貰い、主要貿易品にする。


 題して、ギブミー・ショコラ作戦。


 それが、今回の救援隊に潜ませた、私の第二の目的でもあったのだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ