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44、医師団を呼びました。


 宮殿での話し合いを終え、私は準備のために一旦邸宅に帰った。


 結局、救援隊にはシャルマーニュ王太子も、聖女シルヴィも同行することになってしまった。

 二人のことは心配だったけれど、あの二人を止めるには、私が行くのをやめる以外に選択肢がなかった。


 発案者の私が、一人安全な場所にいて、他の人達に救援を任せるわけにはいかなかったので、二人の同行は、もう諦めるしかないと思う。


 それにしても、まさかシルヴィがあんな風に私のことを好きだと言ってくれるなんて、ビックリだった。


 小説の中では、シャルマーニュ王太子を巡った恋のライバルであり、シルヴィとカミーユの関係はギスギスしていた。


 それとも、もしかしてシルヴィは、小説の中でカミーユにあれだけ意地悪されていても、実はさほどカミーユを嫌いではなかったのかもしれない。

 そうだとしたら、シルヴィはまさに生まれながらの聖女である。

 私だったら、自分に意地悪をしてくる相手を嫌わないでいるなんて、きっとできないだろう。


「シルヴィって本当に良い子だなー。」


 そんな、天使のように心が清らかで、そして可愛い子に好きだと言って貰えるのは、本当に嬉しいことだった。


 こんな自分でも、少しでも良い人に近付けているような気分になる。


「ふふ、」


 近い将来、もしかしたら魔女として火炙りにされてしまうかもしれない私だけれど、

 誰かの心に、少しでも、良い人だったという想いが残ってくれたなら、これ以上嬉しいことはなかった。


「お嬢様、お約束の皆様がお見えになられました。」

 部屋で準備を整えていると、侍女のアンナから声がかかった。


「ありがとう、今行くわ。」


 今回の救援隊結成に先立ち、私は国内のふさわしいと思う医者、数名に声を掛けていた。


 無事に国王からの承認も降りたので、参加を表明してくれたうちの3名に、今回第一段救援隊のメンバーとして、邸宅に来て貰い、今後のことの説明を受けて貰うつもりだった。


 今回参加をお願いした3名の医師は、それぞれの分野で業績を上げていて、なおかつ若く体力もあり、勉学を積んでいる、信頼できる医師達だった。


 ギィ・ド・ショリアック外科医

 ミシェル・プーヴァル内科医

 レオン・デュリー医師


 この3名は、必ず後世にも名が残る素晴らしい医師達だと、私は睨んでいた。


 このうち、ショリアック外科医と、プーヴァル内科医が到着していると聞き、私は挨拶のために、二人を通して貰っている、応接室へと急いだ。


 移動している途中で、遅れてデュリー医師も到着したと報告を受ける。


 デュリー医師は、プリエで私が出会った、コレラにかかった母子を治療してくれた医師だった。


「デュリー医師、先日は本当にありがとうございました。」


 部屋に入る前にデュリー医師と出会った私は、まずは先日のお礼を言った。


 結局あの後私もコレラに感染したので、デュリー医師がいなければ、あの母子を助けてもらうことはできなかったかもしれない。


 あの後、コレラを発症したジャンも、デュリー医師のおかげで無事に助かったと聞いていた。


 コレラは子供が特に致死率が高いため、デュリー医師の健闘は本当に素晴らしいの一言に尽きた。


「いえ、こちらこそ。画期的な治療法を教えていただき、とても勉強になりました。」


「あの後、ジャンの様子はいかがですか?」


 私は何気なくジャンの様子を聞いた。


 治っていると聞いていたので、当然元気になりました、という返事が来ると思って、聞いた質問だった。


「それが……。」


 デュリー医師は、予想に反して表情を曇らせた。


「え……?」


 嫌な予感に、私の心臓がバクバクし始めた。


 コレラは、乳幼児や子供がかかると、大人がなるよりもはるかに危険な病気だった。


 暴力的な脱水症状に、小さな身体ではとても体力がもたないのだ。


「実は……。」


 デュリー医師は、ますます言いにくそうに言葉を詰まらせる。


「まさか……。」


 嫌だ、それ以上言葉の続きを聞きたくない。


 そう思った時、後ろから足音が、走って近付いてきた。


 私は振り返った。


「ねーーちゃーーーん!!!」


 それは、今まさに最悪の想像をしていたジャンの、元気に走ってくる姿だった。


「ジャン!!??」


「どうしても、自分も救援隊に加わると、そう言って聞かず、ここに来てしまったのです。」


 デュリー医師の言い淀んでいた内容は、そういうものだった。


「ねーちゃん!俺も救援隊に参加させてくれよ!きっと役に立つよ!!」


 何が何だか勢いに押されているうちに、私はしっかりとジャンに抱き付かれていたのだった。




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