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42、王太子と言い合いました。


「救援隊には、オルレアン及び王室、聖堂から合わせて10名ほどの精鋭を、ブルゴーニュからも10名ほどの人数を出して、編成したいと思っております。」


 私は、席に着いたシャルマーニュ王太子に、会議等で決まったことを報告していた。


「ふむ。無事に救援隊が可決したのは良かった。しかしまさかブルゴーニュ公爵が協力を申し出るとは、意外だったな。」


「はい、私も予想外でしたが、力になってくだされば、これ以上頼もしい方もいらっしゃいません。」


「確かに。裏切りさえしなければ、この上なく頼もしい者であることに間違いない。」


「そこで、王室からの参加者ですが、アラン・フレーズ卿をお借りしてもよろしいでしょうか?」


 私のお伺いに、シャルマーニュ王太子は変な顔をした。


「確かにアランは、仕事のできる男だが、アランをリ・コーズ王国に送ってしまっては、カミーユに新しい護衛を付けなくてはならないだろう?」


 王太子の返事に、今度は私が変な顔をした。


「いえ、私の護衛は変わらず、フレーズ卿にお願いしたいと思っています。そのため、救援隊への同行をお願いできればと思ったのです。」


「同行……?」


 私の返事に、シャルマーニュ王太子の顔色がどんどん悪くなった。


「まさか…、カミーユ、あなたもリ・コーズ王国に…?」


「はい、参りますが?」


 当たり前ですよね?といった調子で返事をした瞬間、私は初めてシャルマーニュ王太子の叱責を聞いた。


「許しません!!!」


 まるで我が子を心配する母親のような一喝に、私は圧倒された。


「何を考えているのだ!敵と言っても過言ではない国、しかも伝染病が蔓延している場所など、令嬢が行って良い場所ではない!あなたは大人しく、自宅から指示だけ出してくれれば良いのだ!」


 けれど私は、負けずに言い返した。ここで引き下がるわけにはいかなかった。


「王太子殿下のご心配はごもっともです。でも、現場で一番的確に指示が出せるのは私です。私が参加するかしないかで、救える人数は格段に変わるでしょう。」


「そういう問題ではない。いや、そういう問題と言うなら、あなたにもしものことがあったら、逆に、今後助けられない国民がその何倍も出ると考えることもできるだろう!」


「私は一度コレラにかかっております。」


「そうだろう、一度死にかけて、何故また危険に飛び込もうとする?」


「一度罹患すると、体内で抗体が作られ、二度目には罹患しにくくなります、つまり、今このフランセイズで、私以上に救援隊にふさわしい者はいないのです!」


「む……。」


 私の口から出た抗体という、この世界ではまだよく知られていない医学用語に、シャルマーニュ王太子は考え込むように、一瞬黙った。


「……それは、確実な話なのか?」


「リ・コーズ王国で流行っているコレラは、私がかかったのと同じ型である可能性が高いので、大丈夫です。」


「………。」


 実際には、多少なりとも型が変わっていれば再び罹患する可能性があるので、確実ではないのだけれど、私はシャルマーニュ王太子を納得させるために、あえてそう言った。


「……………………………分かった。」


 長い沈黙の後、ついにシャルマーニュ王太子は折れた。


「だが、条件がある、あなたが行くなら、私も行く!」


「それは駄目です!」


 けれど、飛び出てきたのは、到底飲めない王太子からの条件だった。


「何故駄目だ?あなたが良くて、私が駄目な理由がどこにある!?」


「シャルマーニュ王太子殿下は、この国を背負われる、かけがえのない方、それに王太子殿下は抗体を持っていらっしゃいません!」



「交代など、どうとでもなる!」


 抗体を交代と間違われて、どう答えて良いか考えているうちに、王太子は更なる爆弾を投げつけてきた。


「それよりも、私にとってあなたがかけがえのない人なのだということを、どうして分かって貰えないのだ!」



「え………?」



 シャルマーニュ王太子の絶叫に、私は全ての時が止まったかのような感覚に襲われた。


「シャルマーニュ王太子、様………?」


 今なんと言われたのか、それともやはりこれも何かの聞き間違いなのか、理解が追い付かず、ただ心臓だけがバクバクと早鐘を打っている。


「そ、それは、どのような意味で…、いらっしゃいますか…?」


「何故聞き返す!?」


 シャルマーニュ王太子の顔は、耳まで真っ赤に染まっていた。


 ある意味、それが答えだった。


「いえ…、あの…。」


 つられて私も耳まで真っ赤になってしまう。


「だから…、その…。」


 シャルマーニュ王太子のどきまぎした様子に、こちらまで顔が火照って汗が額に浮いてきた。


「私は……。」


 何を言おうとしたのか、その瞬間、部屋をノックする音が聞こえた。


「はい!」


 私は思わず、そちらに意識を逸らしてしまった。


「すみません、シルヴィです。」


「あ、ああ、シルヴィ、来てくれたのねっ!」


 シルヴィの登場に、その場に漂っていた何とも言えない空気は消えてしまった。


 シャルマーニュ王太子は微妙な顔をしていたけれど、私も、ホッとしたのか、残念だったのか、自分でもよく分からない微妙な気持ちだった。




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