表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/80

40、ブルゴーニュ公爵が仲間になりました。


「疫病、コレラは、インディカ王国にて発生し、貿易を通じて、リ・コーズ王国へ持ち込まれたと推測されます。」


 私は世界地図を取り出すと、王太子にしたのと同じ、パンデミックについての説明をした。


「つまり、疫病の原因をリ・コーズ王国に求め、一方的に国交を断絶しては、必ずリ・コーズ王国の逆鱗に触れ、再び戦争になることもあるかもしれません。この件は、まさにブルゴーニュ公爵のおっしゃる通りです。」


 私に全面的に肯定され、ブルゴーニュ公爵はやや複雑な表情をしていた。


「ですが、リ・コーズ王国において、すでにコレラの流行が確認されているのも事実。けれど、こちらには、コレラ流行を食い止めるための知識があります。」


 私はそこで、一度息を吸った。


「故に、人道的見地の上から、私はリ・コーズ王国へのコレラ対策特別医師団の派遣を提言いたします。」


「何……?」


 私の言葉に、その場にいた国王以外の皆が、顔を見合わせた。


 フランセイズ王国は、大きく分けて親リ・コーズ王国派と嫌リ・コーズ王国派に分かれる。

 

 オルレアン公爵は、その嫌リ・コーズ王国派の筆頭だった。


 そのオルレアン公爵の令嬢であるカミーユが、率先してリ・コーズ王国への支援を提言するというのは、非常な驚きだったのだ。


 御前会議に同席しているカミーユの父、オルレアン公爵は、事前にカミーユから話を聞いていたため、落ち着いた表情で娘の演説を聞いていた。


「それは…、良い提案かと思われますが…。」


 オルレアン公爵の顔色を見ながら、ブルゴーニュ公爵は不審気な顔でそう言った。


 何故、嫌リ・コーズ王国派の娘が、リ・コーズ王国に利するようなことを言うのか、何か思惑でもあるのだろうか?と顔に書いてある。


「リ・コーズ王国の国民も、フランセイズ王国の国民も、同じ人です。両国は密接な関係にあるが故に、今でも様々な思いがあることは承知しています。ですが、疫病という共通の敵が現れた今、力を合わせなくては、この強大な敵に打ち勝つことはできないのです。」


 私は立ったまま、演説を続けた。


「リ・コーズ王国を良く思わない人の中には、リ・コーズ王国の国民が何人死のうと構わない、と思う人もいるかもしれません。けれど隣国の疫病を見逃し、リ・コーズ国民を見殺しにすれば、必ず海を渡って押し寄せてくる、膨れ上がった病原菌に、我々も大量虐殺されることでしょう。今ここでリ・コーズ国民を助けることは、ひいては我々フランセイズ国民を助けることにも繋がるのです。」


 私の演説に、最初に拍手をくれたのは、ブルゴーニュ公爵だった。


「素晴らしい。」


 手を叩くブルゴーニュ公爵の顔に、先ほどあった嫌味の色は綺麗になくなっていた。


「リ・コーズ王国への救援隊の派遣、及ばずながら、このブルゴーニュも協力したいと思う。」


 反オルレアン派の急先鋒である、ブルゴーニュ公爵が、一転支持を表明したことから、議会の流れは一気に変わった。


「良いのですか?ブルゴーニュ公爵、コレラの感染地に行くのです。当然行く者には、感染の危険に飛び込むことになります。」


「何、オルレアン公ばかりがリ・コーズ王国と仲良くなってしまっては、寂しいのでね、私も仲間に入れて貰いたいだけなのだよ。」


 ブルゴーニュ公爵は冗談めかしてそう言ったけれど、ブルゴーニュ領に協力して貰えるのは、正直ありがたかった。


「よし、決まった。」


 私とブルゴーニュ公爵の話を聞いて、フランセイズ国王が手を打った。


「リ・コーズ王国への救援隊は、オルレアン公爵とブルゴーニュ公爵が主軸になり、編成、実施して貰おう。他公国より救援隊参加希望する者は、オルレアン公に申し出ること。ブルゴーニュ公爵は、必要なものをオルレアン公爵令嬢に確認し、その指示に従うこと。以上が決定事項である。異議ある者はあるか?」


「異議ございません。」


「同じく、異議はありません。」


 オルレアン公爵、意外なことに、ブルゴーニュ公爵も、国王の言葉に素直に従った。


 ブルゴーニュ公爵からしたら、犬猿の仲であるオルレアン公爵の、また成人してもいない小娘の言うことを聞くなど、屈辱以外の何物でもないはずだった。


 御前会議は無事に終わり、私は別室で、父親であるオルレアン公爵と、そしてブルゴーニュ公爵と、救援隊の打ち合わせをすることになった。



「ブルゴーニュ公爵、まさかあなたが、私の言葉に耳を傾けてくださるとは思いませんでした。」


 私はロマンスグレーのブルゴーニュ公爵とテーブルを挟んで、初めて向き合って話をした。


「私も、まさかオルレアン公のご令嬢が、リ・コーズ王国救援を提言するとは思わなかった。」


 それは、初めて見るブルゴーニュ公爵の柔らかな表情だった。


 ブルゴーニュ公爵と言えば、いつも父を離れたところから睨んでいる怖いおじさんというイメージしか、今までなかったのだ。


「ブルゴーニュ公爵、あなたほどの方のお力を借りられれば、これ以上心強いことはありません。どうぞよろしくお願いいたします。」


「こちらこそ、オルレアンの乙女。」


 口の端を上げて、右手を差し出してくれたブルゴーニュ公爵と、私は固い握手を交わした。


 こうして、予想外に長年の仇敵とも言えたブルゴーニュ公爵と手を組んだ私は、リ・コーズ王国への救援計画を立て始めたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ