表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/80

25、公衆浴場開設を思い付きました。

 

「ところで、フレーズ卿は魔法は使えますの?」


 警護のついでに、一緒にお茶を飲んでいたアラン・フレーズ卿は、突然振られた私からの会話に、一瞬ビクッとした。


「はい、簡単な回復と解毒の魔法なら、少しだけ。」


 なるべく無表情を装って、そう答えたフレーズ卿だけれど、口の端にケーキ屑が付いているのが可愛らしい。


「さすがですわね。やはり戦場で必要だから、習得されましたの?」


「はい、その通りです。」


 フレーズ卿はなるべく端的に答えて、近寄り難さを演出しているようだったけれど、その右手は2個目の香草ケーキに伸びており、そのギャップは可愛らしさを際立たせるだけだった。


「では、フレーズ卿も頑張れば、浄化の魔法も使えるようになるのではなくて?」


「え?」


「そうですね、元々魔法を使っている方なら、きっとすぐにできると思います!」


 私の提案に、シルヴィも乗っかる。


「いえ、私は…。」


「一人でも多く、浄化の魔法は使えた方が良いんですの!騎士にも魔法が使える方がいらっしゃるなら好都合ですわ、ぜひフレーズ卿から習得されて、皆様にも広めていただけないかしら?」


「それは…。」


「お願いいたします!」


 渋るフレーズ卿に頼み込んで、ティータイムの後の浄化の練習には、フレーズ卿も一緒に特訓することになった。


 こうして1日頑張った結果、シルヴィは風呂桶いっぱいの水を、私はコップ2杯、フレーズ卿は大さじ1杯の水を、それぞれ浄化できるようになったのだった。


 まだ量は少ないけれど、これで私も水は浄化できるようになった。

 ウイルスの浄化であれば、また別の問題になるかもしれないけれど、騎士にも魔法が使える人が多いことを知れたのも、今日の収穫だった。



 良いことは続くもので、特訓から帰った私の元へ、以前石鹸の話をしたマルセイル伯爵から、荷物が届いていた。


 荷物は、箱いっぱいの石鹸だった。


 以前話した、安価で大量生産できる石鹸の試作品ができたから、皆で使ってみて欲しい、と書かれた手紙が添えられている。


「これは、素晴らしいわ!」


 パーム油で作られたその石鹸は、まだ高級感を感じさせはしたものの、さすがに石鹸の老舗マルセイルで作られただけあって、素晴らしいの一言だった。


 早速手を洗ってみると、泡立ちも良くて香りも良い。泡切れも良くて、洗った後はしっとりする。非の打ち所もない石鹸だった。


「この石鹸を、更に低コストで作れるようになったら、最高よね。でもこのままでも、充分に素晴らしいわ。」


 箱の中には、100個ほどの石鹸が入っていた。


「せっかくだから、この試作品の石鹸から、有効活用させていただきましょう。あとは…。」


 私は、マルセイル伯爵にお礼の手紙と、今後どのくらいのペースでこの石鹸が作れるかどうかだけ尋ねると、ひとまず石鹸の活用法を考えるために、街を再び散策することにした。


 石鹸の、上手な活用法。

 今はまだ数の少ない石鹸を、いかに上手に国民に行き渡らせるのか。


 もちろん将来的には、各家庭に一つずつ以上は置いて欲しいけれど、すぐにはそれだけの量は用意できない。


 どうにかして、皆に均等に石鹸を紹介して、使って貰う方法…。


 そこまで考えた時、私は王都プリエの中央北側にある、古代ローマの公衆浴場跡を見つけた。


 石作りの建物もそのままに、今は人々の憩いの場として開放されている。


 そうだ、公衆浴場作ろう。


 私の気持ちは、その瞬間に固まった。


 そもそも、古代ローマ帝国時代には、かなりの発展を遂げ、一大娯楽場とまでなっていた公衆浴場が、今は王都プリエに一つもないのは、納得が行かなかった。


 そういえば、プリエを郊外にしばらく北に行った湖の近くに、貴族が行くリゾート温泉があると聞いたことがあるので、温泉に入る文化がゼロになったわけではないと思う。


 けれど今のフランセイズ国民には、ほぼまったくお風呂に入る習慣がなかった。


 せいぜい身体をセイネ川の水で拭く程度で、湯船に浸かるという概念自体が、ほとんどない。


 これは由々しき問題だった。


 前世では、多ければ1日3回お風呂に入ったこともある程風呂好きだった私にとって、ここでの生活は、お風呂に入れないことが一番辛かった。


 1から施設を作ろうとすれば、かなりの時間と費用がかかるけれど、この古代ローマ時代の公衆浴場跡を利用すれば、短時間で高品質の公衆浴場を作ることができそうだった。


「そうだ、そうしよう!」


 そして、その公衆浴場で、試作品の石鹸を皆に使って貰うようにすれば、公平に色々な人々に石鹸を試して貰うことができるはずだった。


「そうと決まれば、シャルマーニュ王太子殿下にお伺いしなくては!」


 古代ローマの浴場跡は、今は国の管轄である。


 私は王太子を通じて、国王に浴場跡の利用許可を貰うために、一端屋敷に帰ることにしたのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ