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ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている  作者: 大鳳葵生
第2章 公爵令嬢でもできること
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7話 子供の頃からの習慣を直すのは難しい

 ヨハンネスが騎士服に着替え、ラウラの姿から男性のヨハンネスの姿に早戻りしていましたわ。


 着替えたヨハンネスは、何やらバタバタした様子で退室され、私とエレナ二人きりになりました。


「お嬢様、旦那様にはユリエ様のことをお話にならないのですか?」


「必要ないわ。無駄な心配をかける必要もありませんし、本当にユリエ様が動き出すと決まった訳ではありません。ですが、彼女のことを私とエレナとヨハンネスだけでは対策できるとは思えないのです」


「そこで王子殿下を選ぶのですね」


 それは、私が一番信頼しているのはグレイ様ですよね。と言いたいのかしら?


 あながち間違いではありませんが、素直に認めたくもないのですよね。


「エレナは私のことがよっぽど心配なのね?」


「何故でしょう?」


「私と二人きりなのに口調が丁寧なの」


「勿論です。一番大事なお嬢様なのですから」


「え?」


 私はてっきりエレナも素直に認めようとせずに、自分が素直に認めない流れを終わらせようとしたのですが、拍子抜けですわ。それに、なんだかとっても嬉しいことを仰ってくれていますわ。


「そう、まあ当然ですわね。私は公爵令嬢なのですから!!!」


 風邪でも引いてしまったのかしら?


 顔が熱くて仕方ありませんわ。


「そうですね。大事な公爵令嬢様です」


 恥ずかしくて仕方ありませんね。この話はここで終わりにしてしまいましょう。


 エレナに余計な辱めを受けてしまい、うまく考えがまとまりませんでしたが、とにかくグレイ様の回答待ちで良いでしょう。


 お父様とお兄様の三人でディナーを食しましたが、ユリエ様のことを聞かれたとき、私は特に問題なくおかえりして頂いたとお答えしましたわ。


 お父様もお兄様もそれを信じてくれたようで、柔らかい表情のまま、楽しいディナーにすることができましたわ。


 どうやらお二人には、屋敷にヨハンネスがいないことがばれていないようです。ばれてしまっては大問題になってしまいます。何せヨハンネスの契約は私と離れないこと。万が一、お父様たちにバレてしまったら最悪解雇にされてしましますものね。


 そしてもし、ヨハンネスがいない時に私に何かがあれば……いえ、これは考えても仕方ないですね。さすがにユリエ様もさっきの今で何かできるとは思えません。ですからきっと今夜は何も起きません。


 それにユリエ様は国に帰られます。何を準備するのかわかりませんが、片道だけで十日以上を要する道のり。それこそ何かできるとは思えません。そう、ユリエ様には何もできないのです。


 エレナと二人になって自室に向かいながらエレナに今夜の予定を話しておきましょう。


「今夜中にお返事を頂けるかもしれません。手早く湯浴みを済ませましょう?」


「そうだな、すぐには寝ないだろ? 何しようってつもりだ?」


「そうね、眠くなってしまいますかもしれませんが、書庫で読書でもしようと思います」


「だったら着付け薬でももってきてやるよ。嗅ぎすぎるなよ?」


「ありがとう」


 私は湯浴みを手伝ってもらってから、屋敷内の書庫に足を運びましたわ。その先ではいつも通り歴史や地域のことを学ぼうと思いましたが、私はとある本を手に取りました。宗教に関わるものです。


「信仰や習慣もまた一つの勉強よね」


 勉強するまでもないのは、国教であるクレイスタ教。これはその昔、イース・クレイスタと呼ばれる人物の逸話とともに聖書に記されたことを元にした宗教です。クレイスタ教は大陸のほとんどの国が国教にしています。


 対するジバジデオ王国は大陸に属していますが、カトワルフ教というクレイスタ教とは全く違う教えを国教としています。二つには大きな違いこそありませんが、生前に良いことをしたものが死後に天国に行けるのがクレイスタ教。生前、より強かったものが、死後幸せになれるカトワルフ教。基準としてはあいまいですが、男なら大きく力強い者。女なら強い男を産み育てた者がより神に従い、死後も敬愛されると教えられているそうです。


そして隣国であるデークルーガ帝国は一応、クレイスタ教ではありますものの、近年、ユリエ教というものが立ち上がってきているそうです。もう誰が教祖で何が原因かはなんとなくわかりますが、何故あれを信じてしまったのでしょうか。


ですが、同じ宗教を教えとしても地域ごとに微妙に異なった教えをしていますのね。今度、デークルーガ帝国を観光する機会があれば、その様子を少し観察させて頂きましょう。


アルデマグラ公国とデークルーガ帝国では、祈る時の手の組み方も違うのですね。いつもと違う手の組み方なんてうまくできるかしら?


 いえ、例えデークルーガ帝国でもいつも通りの手の組み方でも問題視はされませんよね。


少しだけうとうとし始めましたが、エレナが持ってきてくれた着付け薬を少しだけ嗅ぎ、無理やり頭を目覚めさせましたわ。


国教とはいえ、生まれたなら入信するという訳ではありません。本人の意思が尊重されるものです。ですが、生まれてすぐに親から国教の教えをさも常識のように教え育てられた

子供たちは、当然、素直に国教に入信しますわ。私もそのうちの一人ですもの。しかし、世にはいわゆる邪教というものがまれに広がり始めるものです。


 邪教すべてが悪ではありませんが、教えが異なりすぎると倫理観に問題が発生します。許されていることと許されていないことが違うというものは、それだけで共同生活の妨げになりかねません。


 しばらくして書庫の扉が音もなく開かれましたわ。


「どちら様?」


 知らない侍女。エレナと同じメイド服ですので我が家の使用人だと思いますが、侍女達とは仲良くしているつもりですので、まだ私が知らない侍女がいたとはあまり思えません。


 しかし、今目の前にいる茶髪のメイドは私の知らないメイドで間違いありませんわ。名前を知らないだけならまだしも、顔も知らないメイド。警戒するに越したことはありませんわ。


「初めまして。私はマグダレナ・ウィルチェクというものです」


 ウィルチェク?


 聞かない名前ですね。少なくともアルデマグラ公国の貴族ではありませんね。何かしらの偉人となりますと、こちらの国の方の場合もありますが、今警戒するとしたらデークルーガ帝国の人間ね。そうですわ。


「あなた、祈る時の手の組み方を見せて貰ってもいいかしら?」


「こうでしょうか?」


 彼女の手の組み方は、アルデマグラ公国では一般的な手の組み方でしたわ。とっさにできたということはこちらの国の方なのでしょう。


「何か用かしら?」


「仕事です」


 彼女は仕事とだけ答え、なんの仕事かは答えようとしませんでした。


「では、私に近づこうとするのは?」


「それも仕事です」


 聞きなおしても仕事としか答えない彼女に苛立ちを覚えながらも、常に警戒することは忘れません。一定の距離を取っておくことに越したことはないでしょう。


「あなたの仕事は何?」


「もう気付いているのではないでしょうか?」


「全部はわからないわ。目的は、誘拐?」


「それでしたら、私一人で来ませんよ。一応細腕な方ですので」


「では、殺人かしら?」


 まずいですわまずいですわ。何故いつの間にかこのようなことになっているのでしょう。そもそも彼女はどのようにベッケンシュタイン家の使用人の服を手に入れたのでしょうか。誰かがすでに襲われたと考えるべきでしょうか。


 内通者の可能性も捨てきれませんが、とにかく現状は書庫に私と彼女だけ。入り口は彼女の方に近づく必要があります。ここで叫んでも、人が駆けつけてくる前に仕留められる自信があるから屋敷に侵入してきたのでしょう。そして彼女は自分が死ぬことも構わないのでしょう。私が叫べば彼女は逃げられません。


「本物の暗殺者でしたら私にばれないように殺せばよかったのではなくて?」


「あなたにばれない様にするより、あの護衛のいない時に殺しに行く方がよっぽど難易度下がるのです」


 納得の理由ですわ。私にはばれても殺せるということなのですね。本当は書庫に入るのもばれない様にしたかったのでしょう。しかし、私は偶然扉の方に向いていました。


 さて、叫んだら殺される。逃げ道はなし。彼女と話すのも限界といったところでしょうか。そろそろ何かしら行動を起こすべきですね。彼女が誰からの差し金かわかりませんが、私を殺したい人もいるってことですね。あまりの美貌に誘拐されることしか頭にありませんでしたわ。

たまにヒューマンドラマ色濃いと感じますが、ちゃんと恋愛しますので許してください。


今回もありがとうございました。

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