表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている  作者: 大鳳葵生
第2章 公爵令嬢でもできること
24/102

8話 公爵令嬢の生き残り方は当然ですが他力本願で行かせて頂きます


 この書庫には隠し通路の一つもありません。階は二階にあり、窓から飛び出す勇気もありませんわ。彼女は何者かわかりませんが、私を殺しに来る以上、おそらく私が逃げ出そうとして何とかなる相手とは思えませんわね。


「では私を殺すということで宜しいのですわね」


「勿論です。そろそろ時間の無駄です。私に一矢報いたいのなら、せめて殺される瞬間によく叫ぶことですね。私はもう捨て駒であり、雇い主も探せないのですから」


 彼女は工具らしきものを手に持っているようです。先端は金属で穴を開ける道具なのでしょうか。あんなものに刺されてしまったら、すぐに逝ってしまうものなのでしょうか? いえ、そもそも相手は女性ですから針に毒でも仕込んでいるのでしょう。


 しかし、なんともまあどのようにして生き延びましょう。相手の武器はわかりましたが、毒の可能性を考えれば、触れることすら危険。近づいて取り押さえるなんて、ただでさえできないと思っていましたが、毒の危険性を考慮すればまず無理でしょうね。


 何かないのですか? なんでも構いませんわ。相手を驚かせることが一瞬でもできれば良いのです。


 そういえば以前この書庫でもグレイ様と遊んだことがありましたわ。確かあの時はグレイ様から本を頂いて、早速目の前で開きましたら、突然本の中身が立体的に飛び出して私の顔面を襲いましたわ。


 あれは本当に驚いてしまいましたわ。グレイ様は驚いて腰を抜かした私を笑いながらプレゼントして良かったなどと言いだしましたのよね。なんだか段々ムカムカしてきましたわ。


 しかし、もう方法を考えている時間はありませんね。一か八か、あることを試してみましょう。


 私はその工具を持った女性に一歩ずつ近づいていきましたわ。彼女は私の様子に驚きましたが、私が諦めたなどとは考えていないようですね。油断している様子はなく、何かに警戒しながら、彼女も私に近づいてきましたわ。


 あと数歩で私と彼女の距離は、彼女が一刺しできる間合いまで近づきます。ぎりぎりまで引き付けるのです。それだけが私の生き残る活路になるのですから。


 そして彼女の間合いまで私は入りましたわ。なんのアクションも越さない私を見て、彼女は困惑し始めましたわ。


 きっと彼女は考えています。私がこれから起こすアクションを見定めて、そのアクションに対してカウンターを行うつもりなのでしょう。


 彼女はカウンターで仕留めると考えるのであれば、私は、彼女の横を素通りしましたわ。


「は?」


 無防備に素通りしてしまった私があまりに予想外すぎた彼女は、開いた口が塞がらない様子。


「私、はじめから素通りするつもりでしたわ」


 私はそう言いながらポケットの中にしまってあったエレナを呼びつけるときに使うベルを彼女の顔面に投げつけましたわ。


 ベルは鳴りながら彼女の顔面にクリーンヒットし、更に大きめの音が鳴りました。


「素通りもフェイクです」


 本当は、あなたがもし間合いに入った時にアクションを起こすつもりでしたら、こちら側からカウンターするつもりでしたの。


 そしてそのベルは、エレナを呼び出す合図にもなります。


私は、ドアに向かって一気に走ろうとしたまま、そのまま床に敷かれたカーペットがずるりとズレ、足を取られて顔面から床に衝突しましたわ。


 かなり痛いですわ。当然、この程度のことは慣れていますが。


「おまぬけさんですね。ですが、これでさようなら」


工具を持った手が、私の首筋めがけて振り下ろされましたわ。その瞬間でした。突然したドアの開く音に、大きな金属音。何かがはじかれて床で弾み転がる音。


「ごめんねルー。君を一人にすべきじゃないってことは、とっくにわかっていたつもりなのだけど。王子殿下って言うは、不自由すぎてしょうがないね」


「グレイ様」


どうやら工具はグレイ様が持っていらした長剣で弾かれたようですね。グレイ様はそのままマグダレナを蹴っ飛ばしてしまいましたわ。後ろから出てきたヨハンネスが彼女を縄で拘束し、私はいつの間にかグレイ様にしっかりと抱きながら支えられていましたわ。


「お嬢様!」


 廊下からエレナが入ってきて私の無事を確認しに来ましたわ。どうやら、ヨハンネスは返事だけでなく王子を持って帰ってきたようですわね。そしてエレナの呼び鈴の音がいつもと違うことから、異常事態と判断されたのでしょう。


「グレイ様、そろそろ離して頂いても大丈夫です」


「いや、これは僕の私利私欲だから」


「もし宜しければ、一度離して頂くという方針をご検討願えますでしょうか」


「検討の結果、継続させて頂きます」


 そして先ほどよりもより強く抱き寄せられましたわ。やはり今日は風邪のようですね。顔が熱いですわ。それもエレナと話していた先ほどよりもずっと。


 これは王子命令と考え、私は身を預けることにしましたわ。顔は冷ましたいのですが、見られると余計に熱くなりますので、仕方なくグレイ様の胸に押し付けておきましょう。無理やり女性を抱き寄せているのです。これくらい容認して頂きたいですわ。


「王子殿下、そろそろうちのお嬢様を離して頂けますか?」


「羨ましいか? お前もルーと一緒にいて好きになったとか?」


 グレイ様とヨハンネス。やけに親しそうに会話していますのね。そういえばヨハンネスをベッケンシュタイン家に所属を変えてくださったのはグレイ様でしたね。元々面識があったのでしょう。


「ふふ、私を抱きしめていることがうらやましいだなんて、ヨハンネスは結局殿方ということで宜しいのかしら?」


「それは内緒でお願いします」


 しかし、これは殿方ということで間違いなさそうですね。グレイ様はうっかりされていたのでしょう。女性に対してあの状況を羨ましい展開だと思う方はいらっしゃらないでしょう。


 グレイ様が、あそこまで信頼しているヨハンネスの性別を知らないだなんて想像できませんしね。


 ヨハンネスは異性なのですね。そういえば昨日はものすごい近くまで顔の距離が近づいてしまいましたのよね。


 いえ! まだ性別の件は推測の域ですし、何より彼は準男爵とはいえ、平民ですわ! せめて男爵家以上であればお父様も認めてくださるでしょうに。


 そういえば今日見た演劇は平民と姫の結婚で幕引きでしたのよね。しかも、実話な上にその平民男性こそヨハンネスのおじい様ですし。


「もうそろそろ離してください」


「仕方ないなぁ。さて本題に入ろうか。相手がデークルーガ帝国ということなら、君の護衛の人数を増やそうと思う。ひとまず今日は僕が君の所に来たけど、勿論いつまでも君の所にいれる訳じゃない。だから代わりになる騎士を明日こちらに呼ぼうと思っているけど。ルーには護衛に希望はあるかい?」


「そうですわね。年齢は私とそこまで離れていない方で、爵位は男爵家以上でいいですわ。顔は美形で性格もまとも。婚約者のいない独身男性だとなお良いのですがどうでしょうか」


「当たり前のように婚活しようとするね」


 厚かましくて結構ですわ。私はあなたからも逃げないといけないのです。


「じゃあ、まあその条件に当てはまらない人を呼ばせてもらうよ」


「言わなければ良かったですわ」


 いえ、独身男性って条件は外したくないのですけれどね。


 ようやく離して貰って自由に動けるようになると、私を襲おうとしたマグダレナの方に顔を向けました。彼女は拘束されていますが、一応近づかないでいましょう。


「どなたの差し金かなんて言いませんよね?」


「勿論です。お好きにしてください。私は決して主の名を口にしませんので」


 彼女の決意は固いのでしょう。ですが当然自由にもできません。終身刑がちょうど良いでしょう。エレナに連絡してもらい、衛兵に連行された彼女の罪は後々裁かれるのでしょう。


「あ、そうですわ。女性騎士はどうでしょうか?」


「女性騎士かぁ。考えておくよ」


 何故女性騎士でそこまでためらうのでしょうか。考えても仕方ありません。今日はもう寝てしまいましょう。グレイ様には客室を使っていただくことになり、当然ですが、今夜突然現れたグレイ様に、お父様もお兄様も驚いていました。お二人をグレイ様が上手く説得すると仰いましたので任せましたわ。私はもう眠いのです。


ルクレシアの新しい護衛は一体どんな変人が来るのでしょうね。


今回もありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ