第5章:南瓜と熊
第5章
ランドは意識を無くしていた…。でも、感覚でどこかに運ばれている感覚に襲われていた。
そして、目を開けると古い天井が見えた。
また傷に手を当てると、包帯でしっかりと手当てがしてあった。
折角買った服は、地で汚れビリビリになっていたが、一応は着ていた。ランドは寝たまま、辺りを見回すが、誰もいない。でも、おかしな事に、誰もいないかわりに、ドアは鉄格子で固められ…窓にも鉄格子…どうやら、廊家に閉じ込められた様だった。
ふぅ〜…と溜め息をついた。
そして、ランドは目を瞑ると全身に優しい光が覆っていく。
包帯の中で、傷が治っていく。
ランドは目を開け、独り言を呟いた。
「ん〜…刺されたのが、脇腹で良かったよ(笑)もう少しで即死だったな」
とケラケラと笑っていた。そして、光が消えるとランドの体に傷は残っていなかった。「さてっ!」と寝た状態で足を上げ、勢いよく下ろす。
その反動で立ち上がった。
ランドは大きく背伸びをした。
ミシミシと包帯が音を立てる。
どうやって脱出しようかな…と思っていた。
ウルフ―ランドは狼に変身することをウルフと呼んでいた―になれば、こんな鉄格子は簡単に切り裂く事が出来る。
そして、目に止まらぬスピードでこの城を脱出する事が出来るが、ランドの本来の目的は"脱出"では無く店の"救出"。脱出をしてしまったら、意味は無い。
ランドはその辺にあった椅子に腰掛けた。
どうやって、また王様に会おうか…ランドはずっと考えていた。
「うぅ…うぅ…」
プリムは、ベッドに倒れ込み泣いていた。
近くには王様と、ランドを刺した騎士団長がいた。
「何で…何で、あの人をあんな酷い目に…」
とプリムは言う。
「お言葉ですが…」と騎士団長が言う。
「あの者は、王に立てつきましてや、狼風情の魂を持っていました。私は、王様をお守りするために悪を裁いたのです!」
すると、プリムは顔を上げ騎士団長を睨んだ。
「どっちが"悪"よ!あの人は無闇に人を殺すとかはしないわよ!それに、先に手を出したのはコッチでしょっ!!」
「しかしな…プリム。」と王様が続けた。
「奴は、ワシが決めた事に反発をしたのじゃ…。あの寂れた酒場を潰さないでくれ…と。」
「何っ!じゃあ私もそう言えば私も反逆者なの!私もあのBARを潰さないで欲しいわよっ!」とプリムは叫ぶ。
王様は首を横に振りながら答えた。
「プリムは、何度言おうが只の愚痴にしか聞こえん。でも、奴は反逆だ。」
「私と彼!どこが違うのよッ!同じ人間じゃないッ!!」
すると、騎士団長が言う。
「お言葉ですが…、貴方と奴の違いは"地位"です。貴方は一国の王女様…しかし奴ははしたない、人間のクズでございます。」
人間のクズと聞きプリムは怒りを表した。
「人間のクズ…!それは貴方達でしょっ!」と叫ぶ。
「王女!それは聞き捨てなりませんぞ!」と騎士団長が言うが、無視をした。
「まぁまぁ…今プリムは少し混乱をしておるのじゃ…。ほら、一人にして少し考えさせてやれば、どちらが悪かは分かるハズじゃ…」
そう言うと王様は部屋を出ていった。
騎士団長は御意と答えると続いて出ていった。
プリムは一人部屋に残り呟いた。
「貴族なんて大っキライ!」
そして、ベッドにまた倒れこんだ。
「いやいやいや…王女には困ったモンですね王様。」と長い廊下を歩きながら騎士団長が言う。
長い廊下の壁には貼り紙がはってある。
『廊下でしゃべるな』
騎士団長は無視をした。
すると、前から兵士が走ってきた。
そして、王様の前に座り話しだす。
「王様!この度は、申し訳ありませんでした!素性の知らぬ者を城に舞い込んでしまい…しかし、また来客が参りまして、素性を確かめた所、パルメット王子と言う事が判明し、今、越権の間にて待たせております。」と兵士は告げた。
「ほほぅ…そうか来たか…よし!お前は下がってよいぞ!」と目の前の兵士に告げた。
「失礼します」と頭を下げ走って行く兵士。
「フム…それでは越権の間に行くか。お前は、プリムを部屋から引きづり出してこい。」と騎士団長に告げた。
「はっ!」と騎士団長は言い来た道を引き返す。
王様は、スキップをしながら越権の間へと向かった。越権の間に着くと、険しい顔をして椅子に座る。
「その者は、何用でこの城に来たのじゃ?」と目の前にいる。茶髪の南瓜頭に、南瓜パンツを掃き、フリルの付いた趣味の悪い服を来た若者に聞いた。
「そちは、この国の王女様と成婚の儀を行いたくはるばるとやってきました。」と答えた。
「ほぅ、成婚の儀を行いと申すか…おっプリムがやって来たのぉ〜。」
と後ろを振り向くと、騎士団長に捕まれてプリムがやって来た。「ほら、ほら、こっちへ来なさい…。あちらが、お前と成婚の儀をしにきたパルメット王子じゃぞ。」と手を振りながら、王子を指差す。
「おぉ〜これは可愛い王女様だ!」と王子が叫んだ。
プリムはしかめっつらで王子を見てビックリした。今時、こんな恥ずかしい格好をした王子が居たなんて…。
こんな人と成婚の儀をしたら、一生あの人に付いて行かないといけない。プリムは叫ぶ。
「絶っっっっっっっ対に嫌!!!」
王様が驚いて居た。
王子も驚いている。
プリムは構わずに続けた。
「何アレ?南瓜のオバケ?キモイし!それに、そっちが勝手に成婚の儀をしたって私は認めないわ!」
王子が言う。
「プ…プリム様!自分のお父様をキモイなんて…そんな事を言っちゃいけませんぞ!」
「はぁっ?アンタ鏡を見たことあんの?キモイのはアンタよ!この南瓜オバケ!!」
「わ…わたくしが、キモイと…」と王子はヨロヨロと後ろにヨロめいた。
「こ…これ!プリム!そんな事…思っても言っちゃ駄目だ!」とパッと口を押さえる王様。
王子はワナワナと震えていた。
「ぼ…僕がき…気持ち悪いだって…!お父様にもお母様にも言われた事が無いのに…。ゆる…許さない!」
そう言うと、王子の口から鋭い牙が出てきた。
プリムと王様は、ギョっとした。
王子の腕からドンドン毛が生え腕も丸太の様に太くなって行く。
「グル…許ざない…グルル」
王子は熊の魂を持っていた。しかも、完全融合体。
しかし、姿は南瓜と熊を足して2で割ったような感じになっていた。
「おま…お前らグル…殺ず!」
そう言うと、王様に襲いかかってきち。
騎士団長は王様の前に立ちパルメット王子が振り下げて来た手を剣で受け止めた。
ガキッーン!と金属音がぶつかり合う音が辺りに響いた。
壁に立っていた兵士も、熊めがけて銃を発砲したが、弾は分厚い熊の毛皮に当たりパラパラと落ちる。
騎士団長は熊の力に押され膝を付いたまま両手で剣を押さえる。このまま力比べをしていたらいつかは負けてしまう。騎士団長は叫ぶ。
「王様!お逃げ下さい!」と叫ぶが、王は腰が抜けたのかその場を動けなかった。
万事急須…!と騎士団長が思った瞬間。
目の前に居た熊(南瓜?)が横に吹っ飛ぶ。
急に軽くなった剣が空を切り騎士団長は前に倒れそうになったが、両手で踏ん張り顔を上げた。
見たことのある金色の狼が立っていたのである。さっき、王女が名前を呼んでいたな。確か、"ランド"だったか?
ランドはニヤリと笑って
騎士の後ろに居る王様に話しかけた。
「王様!あの南瓜を倒したら、俺の願いを1つ聞いてくれませんか?」と聞く。
王は、ガクガクと首を縦に振った。
ランドの願いとは、BARを潰さないで欲しいと言う願い。
しかし、プリムは何故ここにランドが居る理由が分からなかった。
今までの話の流れで、もしかしてアイツを倒したら私と成婚の儀をしたい…て言うんじゃ…!
プリムは急に恥ずかしくなったが、ランドと成婚の儀を行えるのだったら文句の1つも無い。
そう思った。
「ランド!そんな奴、ぶっ飛ばしちゃえ!」とプリムは叫んだ。
「おぅっ!アイツを倒せばプリムの為でもあるからなっ!」とランドが答えた。
もちろん、それはプリムがあのBARでクリームソーダを飲む機会が無くなる訳でと言う意味ではあるが。
そして、熊南瓜の方を向いた。
熊南瓜は、ジタバタとしていたが、直ぐに立ち上がった。すると、プリムが叫んで来た。
「あっ…。殺したら駄目だよ!王子が死んだとなると、戦争が起きちゃうからっ!!」
ランドは少し間を開けて答える。
「瀕死くらいは大丈夫か?」
「駄目だってば、責めて気絶に止めておいて!」
気絶させると言う事は、大変な事なのだが、戦争が起きるとなると…頑張るしか無いと言う事だ。
「気絶かぁ…。」とランドは呟いた。
そうしているウチにも、熊南瓜が襲いかかって来た。
ランドはとりあえず、横に転がっている騎士と王様から奴を離す為に、右に移動し熊南瓜の脇腹をおもいっきり蹴り飛ばした。
熊南瓜は勢いよく横に吹っ飛んでいく。
しかし、クルッと身を翻し地面に立つ。
ランドは追撃をした。
熊南瓜の前まで行くと、熊南瓜は鋭い爪をランドに向けて振り上げてきた。
ランドはバクテンをする形で避け熊南瓜の手の上に乗った。
熊南瓜は驚いて、もう一方の手をランドに向けて振り下げて来たがランドは、そこから空中前転をする形でカカト落としを熊の頭上に決めた。
そのままヨロめいたが、首を横に振り意識を保とうとしていたが、ランドは地面に両手を着き次は逆立をする感覚で顎をおもいっきり蹴り上げた。
ゴフッと息を吐きだす声が聞こえた。
ランドは立ち上がり、目の前にある熊の体の心臓部分をおもいっきり殴った。
あの銃弾をも跳ね返すほどの分厚い毛ももろともせず、熊南瓜の体は後方へと吹き飛んだ。
ランドは空中におもいっきり飛ぶと、熊南瓜が倒れた場所をめがけて着地をする。
熊南瓜の体は"く"の字におり曲がり、泡を吐いて気絶した。
圧倒的な強さに、王様や兵士、騎士団長までもがポカンとしていた。
熊南瓜はしおしおとなり、元の王子の姿になっていた。
「いやぁ〜はっはっはっ!まさか、パルメット王子に熊の魂が入っていたとは…それを物ともせずに倒したそなた名は何と申したかな?」
と王様は椅子に座り膝を着き頭を下げているランドに聞く。
あの熊南瓜乱闘から、数時間は立っていた。
パルメット王子は鎖で縛って、隣国の城に追い返した。もちろん、成婚の儀はお断りをした。
「名は…ランドと言います。」そう言うと立ち上がり
「王様!俺の願いを聞いてくれますか?」と聞く。
王様は
「良い良い!そなたの願いは分かっておる!そなたは、ワシの命の恩人じゃからな」とランドに向け言う。すると、プリムがいきなりパルム王に抱きついた。
「本当に!?パパ大好き!」と叫ぶ。
「おぉっと…プリムや、お客様の前ではしたないぞ!ほっほっほっ」と嬉しそうに笑った。
しかし、プリムは離さなかった。
「ありがとう…ランドの願いを聞いてくれて!本当に…本当に…。」
と少し涙ぐむ。
何度も言う様だが、ランドの願いとは町のBARを潰さないで欲しい!と言う願い。
それとは裏腹に、プリムはランドが成婚の儀をしに来てくれたと思い込んで居た。
「ありがとうございます王様。」と言い外にでる扉に向かって歩き出した。
「じゃあパパ!行ってきます!!」とプリムはパルム王から離れランドを追い掛けた。
「あれ?プリム!何処へ行くんじゃ!おーい!」と王様が叫ぶ声が聞こえる。
「もちろん、愛する人の所よ!」と答え走り出した。
王様はえっ?と言う顔をして呆然としていた。
外は、すっかり雨が上がり日の光がさしこんで居た。




