6話 Alice In Wonderland Syndrome
僕の日常は、真莉が転校してきてすっかり変わった。ま、いい方になんだけどね。
恋「にやにやしすぎ。流石にキモイ」
真莉「あはは……。」
龍也「ぶべぇ……。痛ったぁ!?!?」
チョップされた。脳天に。酷いよ本当。
それと別に、恋が一瞬苦虫を嚙み潰したような顔をしたのを見逃さなかった。なんでだろ?
しれっと、真莉と恋が仲良くなってるし。いつの間に!?
龍也「あれ、キーホルダー変えた?」
恋はこの時代に珍しい、スマホにキーホルダーをつけるタイプの人間だ。まあその時その時でつけるものが変わるが……。今回は珍しいな。
龍也「クマノミか?いいね」
恋「あ、わかっちゃう?最近すすきのの方にできた水族館あるじゃん?それを見たらまたおさかなに興味が湧いちゃってね。それで買っちゃった」
恋にクマノミ……。なぜか知らんがとっても似合うな。今までのキーホルダーの中で一番似合うぞ。
まあ、あのでっけえぬいぐるみ時代のインパクトには勝てないけど。あはは。
恋「そんなことよりほら、言われてた記事探してきたよ。えっと……不思議の国のアリス症候群の患者の症状、だよね?」
そうだった。僕は今、以前からアングラサイトでとある記事を見つけてそれを調べていたんだ。
五年前、不思議の国のアリス症候群。つまりは世界全域でAIWSの患者が昏睡状態に至ったという現象がリークされた。恋のパパが医療関係者なのもあって、恋に頼ったんだったな。
不思議の国のアリス症候群。身体機能に異常はないのに、認知の歪みが生じる神経症だ。
物がデカく見えたり、小さく見えたり。そんな多岐に渡るいろんな歪みがある。……ってネットに書いてあった。
龍也「ああ。ありがとう。帰ったら早速見てみよう……!」
恋「アンタ本当にどうでもいいことにハマるよね……。呆れる」
真莉の全く何もわかってない表情と恋のゴミを見るような目は無視して、うっきうきで部屋に帰った。
◇
それにしても、かっこいい名前だよな……。AIWSって。『アリスインワンダーランドシンドローム』の頭文字を取ったのね。
んでっと。記事を調べてみるか。
「2019年。世界各地の病院で同時期にAIWSの患者が昏睡状態で送られてきた。中心となったのは日本・アメリカ・ドイツ・韓国・中国。昏睡状態の患者は1年後に起床し始めた」
龍也「こんなの……。陰謀の匂いしかしないだろ……!!!!」
ヤバイ。心臓が鼓動しているのが伝わる。すっごくワクワクしちゃってる!
もっと詳細な情報を知りたいよな……。病院に侵入したい……。うん。恋に頼みこもう。そうしましょう。
そう考えた時にはPCから連絡していた。
龍也『おい恋。潜入するぞ』
恋『馬鹿なんですか?』
龍也『うるさい。じゃないと一人で行くぞ』
恋『はあ…。わかったわかった。じゃあ父さんに頼んでみるから。職業体験って体で』
◇
週末。僕と恋は病院に来た。
龍也「来たんだけどさ……。真莉にも言ったっけ僕?」
恋「オレが誘ったんだ。ね~」
真莉「はい!折角だから三人でどうかって、誘われちゃいました」
ま、人数が多い方が面白いか。楽しい楽しい職業体験の始まりだぁ!!!!
……実際は調査だけど。ふふ。ふふふふふふ。
恋「今日いいよって言われてるのが見学かな。病院の様子を見る分には問題ないってさ」
真莉「龍也くん?なんかぼーっとしてますけど大丈夫ですか?」
龍也「ん?あぁ。ごめんごめん。行こうか」
さて。いつ抜け出してデータベースを見に行くか……。
真莉に言ったら絶対ダメって言われるだろうから内密に、ね。でも、データベース見るって言ってもただ見学するだけじゃいつまで経っても無理だよな。
真莉「恋さんの家ってお医者さんだったんですね……。すごい」
恋「まあね。でも父さん大変そう。たまに夜中にどっか行くし」
二人が会話に花を咲かせている。何か入りにくい……。二人きりだったらまあ話せるけど、三人の時ってどう入ればいいかわからなくなるんだよな。
それにしても、病院ってなんか懐かしい気持ちになるんだよな……。なんでだろ。
龍也「どうしてこうなった」
現在、見学から1時間後。僕たちは病院に入っているコンビニ前でアイスを食べている。陰謀だなんだと浮かされていた僕がバカみたいじゃないか。
まあ、二人とも幸せそうに食べてるしいいか……。
龍也「ん?」
視界の端に、何か移ったような……。
恋「どうした?なんかあった?って、おい!?龍也!?どこ行くんだよ!」
僕は吸い寄せられる様に、その”何か”に向かって行った。
無くしていた自分の半身がそこにある気がして。何もわからないまま進んでいった。
====================================================================
そこにあった一台の放棄されたパソコン。レッドスクリーンの奥。そこに、AIWSの患者の名前が連ねられた中。
『真崎龍也』
報告者K.C
それが、あった。
====================================================================
恋「龍也?大丈夫?」
目を開けると、そこには真莉の顔があった。下には太ももの感触。
これ……、膝枕ってやつ~!?
龍也「あれ、僕何してたんだっけ……」
真莉「さっき、ふら~っと龍也くんがあっちの方に歩き出して。なかなか戻ってこないから二人で迎えに行ったら倒れてたんです」
真莉が指を指した先は何もない行き止まりだった。僕は何をしにアッチに行ったんだ?
とりあえず、今日はもう帰った方がいいな……。何か熱っぽいし。頭がくらくらするよ……。
恋「家まで送っていくよ。真莉ちゃんも一応来てくれる?」
真莉「はい。何かあった時の為に」
そうして僕は二人に支えられながら家に帰った。
帰ったら熱が39℃を超えていたので、解熱剤だけ飲んで寝た。今日のことは、忘れておこうと心に留めて。




