4話 嘘と真実のラヴストリート
恋「なるほどね~。じゃあ、今日の放課後付き合ってよ」
龍也「なんでそうなるんだよ?」
今は月曜日、ホームルーム前でござる。真莉が今日休みらしいって話から始まり、恋にこの前真莉とお茶した話をしたらすごい形相になった。
なんででしょうか。わたしくしにはさっぱりわかりかねます。
恋「バカ。アンタの持ってる服、ダサいのか普段着しかないでしょ。オレが新しい服合わせてあげるから付き合ってっていってんの」
龍也「めんどいからパスで」
恋「じゃあ今日話聞かない。せいぜい孤独な学生生活を送っていてくださいね!」
龍也「わかったよ。一緒に行けばいいんでしょ」
恋も恋で大概面倒な性格してるよ全く。自分の意見が僕に通らないとすぐ拗ねる。まあそれに乗っかったら退屈しないからいいんだけど。
恋「なら今日はそそくさと放課後帰んないでよね。約束だからね!!!」
恋「破ったら真莉ちゃんにまた一つ秘密を暴露してやるからな」
怖すぎる。声色のトーンが、まるですべての光を吸い込んだみたいに低くて平坦だった。鼓膜の震えが直接脳に突き刺さるような、そんな錯覚。
やっぱり恋には逆らっちゃだめだな。
◇
それにしても、なんだかんだ言って恋と二人で出かけるのは久しい。夏休み期間にずっと引きこもってゲームしていて、たまに生存確認で恋が来た時以来だ。
いや~素晴らしい夏休みだったな。名作を沢山やった。特によかった作品はあれだな。ぐふふ。
やっぱりノベルゲーはただイチャイチャするんじゃなくて、展開がしっかりしている方が僕は好きだ。まあこれを他人に強制するわけじゃないけど。
でもあの作品はもうやりたくないな。メンタルが抉られた。逃げるようにらぶでちゅっちゅな方をやったら更にメンタルが抉られた。
しっかり休んでくれ。主人公……。あと全員と付き合って幸せになってくれ。
ゲームの話はそれくらいにして。今は恋のトイレ待ちだ。早くしろよな。
なんて思っていたら、「ごめんごめん」なんて言いながら笑顔で走ってきていた。ホント待たせすぎですよね。
龍也「あれ、髪セットした?」
恋「わかっちゃう?まあ、コーディネートする側ですからね。ふふん」
龍也「じゃあ行くか。はい。先導して」
恋「なんでそんな淡白なんだよ!あとオレに任せ過ぎだし。もう」
そう文句言いつつ、なんだかんだ先導してくれる恋であった。
◇
僕たちは大通付近から札幌駅まで歩いていく。
通っている学園は、もともとサテライトクラッシュ被害者を集めて、PTSDなどに対処しやすくするための仮設校舎だった。それが撤去できないほどの規模になった結果、学園として正式に校舎が建てられたという歴史がある。
それにしても、意外に大通から札駅までは距離がある。周りはビル群だし、視覚情報としては飽きるのが本音。
恋「やっぱり時計台ってちょっとしょぼいよね」
信号の先、札幌名物の時計台がある。確かに観光名所としてはしょぼい。写真で見るよりはるかに小っちゃいからな。
龍也「まあ、普通の人ならしょぼいって思うのも当然かもね。でも、昔の写真と今を比較するとロマンがある。ここには歴史という大きさが隠れているんだよ」
恋「そんなもんか」
なんて話しながら歩いている中、目的地が見えてきた。札駅前のデカい建物の一角、南東急が見えてきた。
まあ、安価で無難って言ったらそこに入っているユニシロとCUだよな。安いし。
龍也「なあ、恋。いつも思うけどここのエスカレーターってちょっとワクワクしない?」
恋「わかる気がするけど、エスカレーターにワクワクって使う人初めて見た。すごい感性で憧れるよ」
めっちゃ棒読みで僕の心に傷がつきました。泣く。
途中ゲーミング用品を見たい気持ちを抑え、ちゃんと恋に付いてった。
自分が思う服への印象は、着れれば何でもいいだ。まあ流石にドイツ語が書いているような服は恥ずかしくて着れないけどな!!!
恋「これもいいかな。でも以外に龍也って身長の割にはスタイルいいからな……」
なんてボケっとしている僕を尻目に、恋はしかめっ面をしながら服を選んでは自分に合わせてカゴに入れるのを繰り返す。もしかしてこれ全部試着しないといけない感じか?
め、めんどうだ。
そのまま背中を押されて、試着室まで直行させられてしまった。
恋「はいじゃあ早く脱いでそれ着て」
なんでだろうすっごい官能的なセリフなのに強迫に聞こえる。シチュエーションが悪いなこれ。
龍也「りょうかい。まずはこれだな」
うん。着替えてみたらすごいな。自分じゃないみたいだ。ダサくない。
スラックスって合わせやすそうでいいなこれ。
着替え終わり、恋に見せる。当の恋はこれくらいわかってましたよみたいな表情をしていてちょっと悔しい。
恋「やっぱり龍也はちゃんとしていたらモテそうだね。外見だけは(笑)」
龍也「その煽りには乗らないぞ。それが僕の良さだからな」
◇
龍也「どんだけ着替えさせるんだよ……。疲れた」
恋「うん!まあこれだけあったら当分は大丈夫でしょう!」
お墨付きをもらった。まあそれならいいか。大変だったは大変だったけれど、話しながら着替えるのも楽しかったしな。プラマイプラスの日だったのは確実だろう。
龍也「じゃあ買ってくるわ。そこら辺で待ってて」
恋「ううん。ここはオレが払うよ。遅くなっちゃったけど誕プレ。この前オレ貰っちゃったから、お返し」
感激です。恋に人の心が残っていたなんて。
そんな照れ隠しは心の奥底にしまって、素直な感謝を告げる。
龍也「ありがとう。そういえば誕生日なんてイベント、あったな」
恋「なんか言ってる。オレの誕プレにめっちゃいいイヤホンくれたくせに」
龍也「ふん。何か欲しそうにしてたからちょうどよかっただけだし」
結局沢山の服を奢られてしまった。今度なんか返してあげよう。次はモババかな。
自分で言っておいて、モバイルバッテリーをモババなんて略してるのはちょっとキモイか?でも可愛くない?モババって言い方。
恋「はい。じゃあ持ってこの大量の服」
龍也「もちますもちます」
服も大量にあったら重いな。引きこもりには辛いぜ全く。服を買いに行っただけだが、疲労感はある。美味しい物を食べたい気分だ。
だけど、夜ご飯には早い時間なのも事実。大体5時なりかけくらいか。
龍也「夜ご飯、もちろん一緒に食べて帰るよな?」
恋「うん。どこ行く?」
龍也「せっかくならあそこ行ってみない?バーガークイーン」
札幌中央にありそうでない物ランキング上位、それがバーガークイーンだ。ワッパー食べてみたかったんだよな。
恋「いいね。じゃあそれ置いたあと地下鉄乗りますか」
◇
恋「もっとそっち詰めろって」
龍也「せまいんだよ」
地下鉄に乗って席に座れたはいいが、狭い。いくら恋とは言え、密着するとなると多少ドキドキするのは男子としての性だろう。ごめんよ、恋。
向かっているのは新札幌。バーガークイーンが食べれて一番交通の便がいいのがここなのだ。
終点まで恋と密着するの、理性が持たないかもしれない。別のことを考えよう。
うーん。
デバイスオタクとしては、大谷地に降りたいところだ。なぜなら素晴らしい店があるからな。
たまに行って、眺めて帰ることがある。
最近は中国のデバイスが熱いな。コピー品も多いけど、ちゃんと調べて買えばコスパは最強だろう。
よし。この調子なら理性が持つ。ありがとうゲーミングデバイス。今度ガラスマウスパッド買ってあげるからな。
恋「なあ、龍也?なんでそんな耳赤いんだよ?」
龍也「何のことでしょうか」
龍也「って、息が近い!頼むからささやかないでくれ~!!!」
恋「ふっ、くはは……!」
また恋に弱みを握られてしまった。やらかしたな……。
◇
さて降りましては新札幌。バーガークイーンは駅がそのままついているデパートを通って行ける。
龍也「恋は何にする?」
恋「やっぱりワッパーでしょ。まずは定番から!」
龍也「だよな~」
先に頼むものを決めて、注文の列に並ぶ。幸いほとんどの人がモバイルオーダーかセルフオーダーだったからすんなり頼むことができた。
ちなみに僕はチーズにした。美味しそうだったから。
恋「やっぱり龍也って変わってるよね。飲み物それ?」
龍也「ふぅーははは!!!オタクは皆ドクペが好きなのだよ。選ばれし者の知的飲料だからな!」
ドクペはまずいだとかなんだ言われているが、僕は好きだ。杏仁豆腐みたいで美味しいし。
恋「なんだその笑い方とポーズ……。まあ龍也が楽しそうだしいいか」
そんな話を聞き流し、念願のワッパーへとかぶりつく。その味に二人同じタイミングで、
二人「「うまい!!!」」
とシンクロしたのであった。
恋「ふ~。それにしても食べ応えあって美味しかった。誘ってくれてありがとう、龍也」
龍也「ふふん。崇めてくれてもいいんだぞ」
恋「それはない」
バカ話をするのもいいが、明日も学校だ。そろそろ帰る時間だろう。恋はJRの方が家が近いから、ここで解散だな。
龍也「JRで帰るよな?」
恋「それなんだけど、今日家帰るの面倒だからいいや。たまには泊めてよ」
そうか。面倒か。
うん。
───はああああああああ!!??!?!?!?!?!?
龍也「……あはは。面白い冗談だな」
恋「え?冗談?」
何が問題かわかってない顔をしている。こいつ本気だ。マジかよこいつ。
はぁ~~~~。しゃーない。覚悟決めるか。
龍也「わかった。でも、あんま汚いとか言うなよ」
謎のノリで、いきなりお泊り会が決定されてしまった。どうしましょう。
◇
龍也「ちょっと待って。今ササっと掃除するから」
恋「いいよいいよ。じゃあお邪魔します」
龍也「おいちょっと待って!おい!」
なんてノンデリだ。ずけずけと入っていったぞ……。
恋「おお!やっぱりいつ見ても秘密基地みたいだな!ここ!」
テンション上がってるし。まあいいか。
恋「じゃあシャワー借りるぞ」
なんて自由奔放やなつ。じゃあ寝床の準備するか。って、そういえばエアーベッドを売ったばかりだった。どうしようか。
まあ、僕が椅子で寝ればいいか。たまに寝落ちするときいつもそれだから寝れるだろ。
僕は朝シャワー派だ。だからもう歯を磨いたらいつでも寝れる。しかも今日疲れたからすぐ寝れるだろう。
なんか変な気を起こさない内に寝よう。そうしましょう。
僕はそう決意し、恋がシャワーを浴びている間にササっと歯を磨いて、机の上に「ベッドを使え」と書き置き、そのまま寝たのであった。
……ヘタレとか言うなよ。絶対だぞ!?
◇
恋「そろそろ起きろよ。せっかく朝ご飯作ってあげたんだからあったかい内に食べないと損だぞ」
龍也「……ん。ああ。おはよう」
美味しそうなにおいと共に、全身の痛みを感じながら起き上がる。椅子で寝るのはこれがあるのが欠点だ。
恋「ってか昨日、そそくさと寝ただろ?ちょっとくらい話してから寝てもいいじゃんか」
龍也「昨日は昨日だろ。そして今日は今日。未来を見ようよ恋さん」
嘘だ。実際は理性を保つために気合で寝ただけ。結果、こう純潔を守ることができたので良しとしましょう。さすが僕だ。
恋「はあ。まあいいや。アンタ普段パンばっかでしょ。たまには和食を食べなさい」
そうして出されたのはご飯とみそ汁、そして無茶苦茶美味しそうな、目玉焼き。
なんだこれ。ホテルの朝食じゃん。
恋「ふふん。こう思ったでしょ。”ホテルの朝食じゃん”って。いいんだよ?褒めたたえてくれても」
恋「まあオレも食べるんだけど」
そんなこんなで二人一緒に学校に登校した。目を丸くしながら不審がる真莉は、まあおいておこう。見なかったことにしたらいい。シュレディンガーの真莉だな。はは!
【TIPS#4】 篠崎恋
年齢:17歳
身長:160cm
髪色目色:青髪青目
龍也の記憶が霧に包まれている「サテライトクラッシュ」以前からの数少ない友人。
重度のネット没頭者である龍也を外の世界へ引き摺り出す唯一の存在であり、彼が学園内で唯一、本音で言葉を交わす相手でもある。
学校では男女を問わず人気が高く、その立ち居振る舞いから、一部では「王子様」のような扱いを受けているとか。
しかし、誰に対しても変わらない明るい調子を崩さない彼女の、眼鏡の奥に隠された視線は────時折、性別すらも超越した、激しくも歪な「何か」を孕んでいるように見えますが……それは龍也の気のせいなのか。




