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無可有郷のスーサイド  作者: 一ノ瀬隆
共通章『僕はこの日常を謳歌する』

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3/20

3話 一瞬を取り戻すこの日常

龍也「うう……ん?」


あれ。昨日は何してたんだっけ?

頭がまださえていない。何か逃げるように寝た気がする。


ああ。真莉に垢共有したんだった。それでそのまま寝落ちしちゃったのか。


龍也「やっべ。PCつけっぱじゃんけ」


電気代は援助があるとは言え節約しないといけないからな。消そう。

そうしてPCの画面を見たら、


龍也「なんじゃこりゃああ!?」


通知欄が、通知欄が!!!!!!!


…………42件?


しかも全部真莉だなこれ。えーと内容は、と。


『よろしくお願いします』


『えっと何から話せばいいんでしょう』


・・・・


『起きてますか?』


『迷惑じゃなきゃ色々話したいです』


・・・・


龍也「わお」


うーん。今日って土曜日だよな。二度寝するか。

いや待て。これ返信しないとダメだろ。さすがに女子のメッセージを合計42件スルーしたまま二度寝をキメるほどの度胸は、僕の貧弱なメンタルには備わっていない。


龍也「なんて返信したらいいんだ?恋に聞くか?」


ああああめんどい!適当でいいだろ!


龍也『ごめん!疲れてたみたいで、寝落ちしてたんだ。本当にごめん!』


よし。これなら誠実だろ。じゃあ寝るか。

そしてベッドに戻ろうとしたら、PCから通知音が鳴った。……まさか。な。


真莉『よかった!』


……即レスかよ。マジ?ええ?画面張り付いてたとかそういうこと?


真莉『生きてたんですね。』


真莉『それで、少し話しませんか?』


一文で送れよ……。なんて思いつつ、どうせ暇だからどっしり構えて話すことにした。


龍也『話すっていっても、別に面白い話もないぞ』


真莉『あ、違くて。暇なら今日の昼にでも、どこかお茶したいな。なんて』


うーん。何だこれ。言葉を借りよう。


それなんてエロゲ?


頭がパニックですね。こういう時はどうしたらいいんだろう。わからない、わからないぞ!!!!

まずは落ち着こう。素数を数えるか。


一呼吸おいて、返信を続ける。


龍也『いいけど、この周辺集合?』


う~ん。無難だ。素晴らしい返信。


真莉『はい!どこに行くかは龍也くんに任せます。それでは12:00に、テレビ塔下集合でお願いしますね』


龍也『りょうかい。じゃあ昼に』


ふう。


じゃない!!!!!!!!服は?行き先は?何も決まってないぞ。


とりあえずシャワー浴びるか。何とこのコンテナハウス、シャワー付きだ。風呂トイレ一緒なのは不満だがな!!!

現在時刻は大体9:30。ゆっくり準備しても大丈夫だろう。多分。


◇


さっぱりしたぜ。と言いたいところだけど、シャワー後っていつも気持ち悪いんだよな。濡れるの好きじゃないし、乾かすのめんどいし。

でも流石にエチケット的にしっかり洗った。いつもの2倍は洗った。シャンプーも三プッシュくらいした。


龍也「んで、服をどうするか、だな」


制服でいいか。となるのがいつもだが、流石に制服じゃだめだろう。

となると、何を着たらいいんだ。新品の服は僕の好きなギャルゲの特典についてきたやつだ。非常にまずい。


でもそれしか新しいのないしな……。


その服のデザインは素晴らしい。プレイした人にとってはだが。なぜなら、メインヒロインが濡れて主人公の家に上がってきたとき、主人公が貸した服その物なのだ。

エモいな。制作陣のこだわりを感じる。


他の服はジャージが3着、ボロボロの普段着が1着。


あ!そう言えば、恋に言われてジーパンを買ったんだった。それと特典服ならまあいいだろ。キャラがプリントされているわけでもないし。

はたから見ればワイシャツ+ジーパンだ。よし。無難。


そんなこんなで焦って準備していたら、なんともう行く時間になってしまった。


龍也「こういう時は早めに行った方がいい、よな?」


少ししかない常識をかき集めて、初デートという戦場へと僕は赴いた。


◇


現在時刻は11:30。まあいい所だろう。

札幌大通公園名物、テレビ塔。たまに下でイベントが開かれることがあるここは、とってもいいロケーションだ。


うん。じゃあわかりやすい所で待とうか。


龍也「ん?」


そう思いあたりを見まわしたら、見覚えのある姿が見えた。


真莉「あ。龍也くん。本当に来てくれた。待ってました!」


龍也「ああ。ゴメン。待たせちゃった、ですか?」


身構えていない状況で話しかけられてたので、語尾がおかしくなる。恥ずかしい。

それよりも、30分前に着いたよな?僕。


真莉「いえ!ちょうど1時間前に着いたところです」


僕も大概世間一般からズレている自覚あるけど、真莉もなかなかズレているのでは?そう思う瞬間だった。


真莉「それより、どうですか?」


龍也「あ、えっと、え?」


真莉「今日、自分なりに頑張ってきたんです。龍也くんからしたらどう見えるかな。って」


苦手なんだよ……。女子の顔を堂々と見るの……。でも期待には応えないと。頑張るぞ、僕!!!!

覚悟を決めて顔をあげたそこには、いつもモニター越しで見ているようなヒロインが居た。じゃない!!!とても綺麗な姿があった。


龍也「僕が隣にいていいのかわからないよ。ってくらい」


真莉「……えへへ。とりあえず龍也くんにとって悪い印象はないって受け取っておきます」


おかしい。世間一般では陰キャとされる僕が何故いきなりこんな場面に立ち会っているんだ。

そりゃ美味しい展開だよ。でも、脈絡が無いってのはおかしいだろ。これは陰謀か?工作員か?でも僕は要人じゃない。なんでそんな人にこんなことをするんだ?


プロパガンダか?モテない層を焚きつけてどうにか政変をしようってワケか?


なんてことを考えつつも、結局デートと言う非日常体験に浮かされている事実に負けているのが僕だった。


龍也「あー。えっと、昼時で混む前にどっか行く?」


真莉「はい!そうしましょう!」


◇


龍也「ごめん。考えつかなくて結局ここになってしまった」


真莉「気にしないでください。逆に珍しいオシャレなカフェとかだったら、圧倒されちゃってお話し辛かったでしょうから」


現在、僕と真莉はコマダ珈琲に居る。全く思いつかなかった。その上、長居出来て、わかりやすいチェーン店だとここだろうとなったわけだ。

直前まで某イタリアンのところに行こうと思ったが、流石にやめた。でもエスカルゴは大好きだ。今度恋を連れて行こう。


真莉は最初に出された豆を嬉しそうに開封しながらちまちま食べている。なんて可愛らしい動作なんだ。恋はそのかけらもないぞ。


真莉「あの……。龍也くんって、あの恋さん?とどういった関係なんですか?」


龍也「恋?ああ、アイツとは別にこれと言った関係じゃないよ」


恋は気が付いた時には隣にいた。サテライトクラッシュ後、僕が目覚めた時、心配そうに覗いていたのが最初の記憶だ。

それ以前の記憶はない。混濁していて、何もわからない。だから、最初からいた存在なんだ。


龍也「強いて言うなら、幼馴染?」


真莉「そうなんですね……。恋さんって、なんか龍也くんに対してだけ素っていうか、雰囲気違うので気になっちゃいました」


龍也「まあね。……それより、なんで僕なんだ?」


真莉「なんで僕って、なんでですか?」


それは純粋な疑問だった。だって僕って、ね?ほら。女子からすると変人だし、恋以外誰も近寄ってこないから。


龍也「ほら、うちのクラスって別に悪い男子そんな居ないしさ、その中からなんで僕なんだろうって」


真莉「えっと……。私、何となくわかるんです。その人が打算とか悪意で動いているかどうかって。龍也くんは異常にそんな雰囲気なかったから。です」


龍也「なるほど……ね」


うーん。納得できない中では一番納得いく内容だな。それにしても、そんな僕って無欲に見えるのか?


その後はずっと和気あいあいな会話だけだった。

まあ、あの名前が何なのかを追求された時は変な汗が止まらなかったけど、何とか乗り切った。


そうして空が茜色に差し掛かるくらいの時間になって、地下鉄駅前で分かれることに。


龍也「今日は楽しかったよ。ありがと」


真莉「……その、良かったらまた、二人きりでお茶しませんか?」


少し話して分かったことがある。真莉も結構なオタクだ。今度一緒にアニメントでも行きたいな。なんて。

そう思っている自分に少し気恥ずかしくなって、頷くことしかできなかった。


解散した後僕はすぐさま帰って、今はベッドの上。疲れて起き上がる気力すらない。

じゃあ、おやすみ世界。


そうして深い眠りについた。その日の夢に甘えてくる真莉が出てきていい所で起きたのは内緒だ。

【TIPS#3】 瀬ノ内真莉(せのうちまり)


年齢:17歳

身長:165cm

髪色目色:桃髪桃目



しばらくは母親の元で過ごしていた彼女。なぜか「札幌」という土地に対して、異常なまでの執着を見せている。その執着に導かれるように、龍也たちの通う学園へと転校してきた。


彼女はどんなに暑い日であっても、頑なに肌を露出しない長袖の服を纏い続けている。

それが単なるファッションなのか、それとも龍也には見せてはいけない「何か」を隠しているのか。

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