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無可有郷のスーサイド  作者: 一ノ瀬隆
瀬ノ内真莉『貴方は私の光だった』

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12/20

√瀬ノ内真莉『その嘘は人を殺す』

そうだ。こういう時のために、避難所があった。

災害についてはいろんな陰謀論があったから、避難所だけはしっかり調べていてよかった。


僕はささっと避難用の持ち物をまとめ、コンテナハウスを出発する。


龍也「ごめんよ。マイPC。いつか復旧するからな」


とにかく緊急事態だ。パソコンにかまってられない。今は三人の心配をしなくては。


何とか避難所までたどり着いた。

ここまでの道のりは酷いものだった。建物は倒壊、ガススタからは火が立ち上っている。こんなの、普通じゃない。


電気も止まっているようだった。全ての信号機は真っ黒だったし、電光掲示板も息をしていない。

世界の終わりみたいな現状だな。


そんなことを考えながら、避難所を見渡す。


頼む。誰か一人でも居てくれ。


そう願った視線の先には、怯えながらも誰かを待っているような素振りをした真莉がいた。


龍也「真莉!よかった。無事だったのか!」


真莉もこっちに気づいたようで、こちらへ向かってくる。

真莉の顔には、いくつもの涙のあとがあった。不安だったんだろう。良かった。僕がここに来られて。


真莉「龍也くん。無事でよかった……!ずっと。ずっと心配していたんです……」


真莉は緊張が途切れたのか、僕の胸へと飛びついてくる。よっぽど不安だったんだな。


龍也「できる範囲でいいから教えて。一体何があったの?」


真莉「この札幌を、未曽有の台風が直撃した……みたいです」


真莉「北海道全域が被害に遭っていて、この札幌は文字通り陸の孤島になった。って、噂が飛び交ってま……す」


なんてことだ。こんな冬に、台風?

そんな異常気象、起きるなんて思うわけないだろ……!


クソ。頭が焦ってる。こういう時に冷静になれるよう普段から知識蓄えてるんだろ僕、いや、俺は……!


龍也「恋の姿は見た?」


真莉「……恋さんなら、どうやら学校の方に逃げたみたいです。ちょうど本を借りに行っていたみたいで」


良かった。恋は無事か。なら、今はとにかく、真莉の無事を優先しないと。

と言っても、この状況が続けばこの避難所で言い争いが起きるのは確実だろう。今はとにかく、情報が欲しい……。


龍也「大丈夫。きっとすぐ、自衛隊が駆けつけてくるはず。こんな大事、国が動かないわけないからな」


真莉「はい。きっと」


◇


半日後。今は夜で冷えてきた。

避難所からはブルーシートと毛布。そしてアルミブランケットが配給された。今は真莉に持たせている。


龍也「大丈夫か?パーソナルスペースも少ないし、辛かったら言うんだぞ?」


真莉は明確に口数が減っている。それも当然だろう。

こんな状況、怖くない人の方が少ない。事実俺だって内心びくびくだしな……。


真莉は僕の耳に口を寄せて、囁くように俺に告げた。


真莉「私。大人の人が怖くて……。ごめんなさい。こんな時に、わがまま言っちゃって」


龍也「わかった。本当に辛くなったら言うんだぞ?」


そう言っても避難所の移動は危険すぎる。地面は一部隆起していたし、天候も良くない。不用意に外出したらそれこそ死んでしまうだろうな。

頑張れ俺。なんとしてでも支えるんだ。現状が変わるまで何としてでも……!


◇


龍也「もう三日……か。」


避難から三日経った今。未だ国からの支援が来ない。

そんなこと、あり得るのか?そして、物資の備蓄が怪しくなりつつある。そんな状態なのもあり、近くのスーパーマーケットから色々取りに行くことが決定されたのだ。


そして天気が曇りの今日、行くことが決まったというわけだ。


龍也「じゃあ、行ってくるよ。真莉」


俺ももちろんそれに参加した。できるなら、真莉の分の物資を隠し持てれば楽させてあげられると考えて。


真莉「待ってください。……私も、行きます。龍也くんが居ないと、心配で……。一人になるのは、もう嫌なんです」


真莉は目に沢山の涙を蓄えている。メンタルが怪しくなってる予兆だろう。

……そんな状態で、置いてはいけないよな。


龍也「……わかった。でも、絶対離れるなよ」


僕の返答を聞いて、真莉は目を開いた後何かが吹っ切れたようにくしゃっと笑った。


真莉の手を握りしめ、一緒に避難所を出る。

その手は思っていたよりずっと冷たい。それがどこか、話したらどこかに行ってしまいそうで。強く握ってしまった。


龍也「ごめん。強かったね」


真莉「いえ、大丈夫です。龍也くんの手、大きくて安心するから……」


見渡す景色は、やっぱり絶望的だった。

ポストアポカリプスとは、こういうことを言うんだろうと思うほど壊滅している。


割れたアスファルトの隙間から泥水が吹き出し、吹き飛ばされた看板が道路の真ん中に突き刺さっていた。


普段使っていた交差点、そして何気なく通っていた通学路が崩壊しているのを見ると心がキュッとする感覚がする。

……俺も、結構限界かもな。


先導の大人たちの背中を追い、薄暗い大型スーパーの自動ドアを無理やりこじ開けて中へ入る。

電気が落ちた店内は、冷蔵ケースから漏れ出た冷気と饐えた匂いが混ざり合い、不気味な静けさに包まれていた。


「龍也くん、これ……持てますか?」

「ああ、ありがと。真莉は重いの無理しないで、軽いやつ頼むな」


割れた瓶や散乱したワゴンを避けながら、それぞれが荷台に缶詰やレトルトパウチを載せていく。

これだけの量があれば、しばらくは持つだろう。安心だ。


ふと、陳列棚の陰で一生懸命に手を伸ばしている真莉の横顔が目に入った。

薄暗い光の中、埃っぽい空気の中で呼吸を乱しながら、それでも必死に俺の役に立とうと動いている。


その姿を見つめていると、胸の奥から何かが静かに、けれど激しく湧き上がってくる。


最初はとにかく危険から守ってあげようっていう、どこか独善的で押し付けがましい感情だった。

でもそれが少しずつ変わってって。どこにも行って欲しくないと、そんな純粋な願望のような気持ちが胸を焼いた。


あれから3週間は経ったか……?

未だ外部からの援助がない。避難所の人のスマホもほとんどが充電切れを起こした。だからどうなっているか全くわからない。


ただ、市が主導で備蓄物資を出してくれているおかげで、何とか生き延びている状況だ。


龍也「ほら、真莉。おにぎり半分分けてあげる」


真莉は次第に弱っている。満足に食べられないもあるが、一番はあれだ。


「おい!!!!!!誰か何とかしろ!!!!!」


ストレスがピークに達した大人が、次第に暴れ始めている。真莉はそれに過剰に反応しているみたいで、心理的に衰弱してきているのだ。

無理もない。いい大人が叫んでいるのなんて、誰も聞きたくないだろ。


龍也「おお。今日は昆布だぞ。俺は鮭の方が好きだけどな」


真莉「……ありがとう。龍也くん」


真莉が弱ってきているのに、暴れている奴らに腹が立つ。こういう時こそ、大人がしっかりしてないでどうするんだクソが。


真莉「あ……」


明らかに何かあった”あ”だ。どうしたんだ?

真莉の顔が青ざめる。まるで、過去のトラウマをほじくられているような、そんな畏怖があった。


「何見てるんだよ!?おい!!!!!!」


まさか────。


さっき暴れていた男が、こちらへ向かってきている。アイツ、真莉を標的に?


真莉「……ぃ。ごめん、なさぃ」


消え入るような痛ましい声。許されていいわけないだろ……!


「おい、そこの女。随分まだ元気そうじゃないか。そんな元気なら、外に行って物資でも補給してきたらいいんじゃないか!?おい!???」


完全に正気を失っている。あんなの、ただの八つ当たりだ。


龍也「流石にひどいんじゃないんですか?」


「お前に言ってるわけじゃない。どけよ」


痛い……。弾き飛ばされた。


俺が吹き飛ばされている間も、そいつは真莉に詰め寄って怒鳴っている。

そんなの、許さない。


どうすればいい?


この状況。

龍也が選んだ選択は───


・【周囲の大人を焚き付ける】

αEND 『永遠を取り戻すあの景色』へ


・【自分一人で何とかする】

βEND 『主よ私を今ひとたび救いたまえ』へ

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