第78話『遠征帰りの夜』
夜。
星降る宿屋には、
いつもより少し賑やかな空気が流れていた。
暖炉前では、
ガルドたち常連組が食事をしている。
その時。
カラン、と扉が鳴った。
「……失礼する」
入ってきたのは四人組の冒険者だった。
全員が疲れ切っている。
鎧は傷だらけ。
荷物も泥まみれ。
長い遠征から戻ってきたことが一目で分かった。
「お疲れ様です!」
リアが笑顔で迎える。
その瞬間。
四人は少し驚いた顔をした。
まるで。
帰宅した時みたいな言葉だったから。
「部屋、空いてますか?」
リーダーらしき男が聞く。
「はい! 空いてますよ!」
リアが答えると、
四人は同時にほっと息を吐いた。
その様子に。
ガルドが笑う。
「お前ら遠征帰りか?」
「……ああ」
男は頷く。
「十日間だ」
暖炉前が少し静かになる。
十日間の遠征。
かなり過酷だ。
「生きて帰れただけでも上出来だな」
ユーリが言う。
四人は苦笑した。
そして席へ座る。
その時。
「お待たせしました」
レインが温かなシチューを運んできた。
香りが広がる。
四人は一口食べる。
そして。
「…………」
誰も喋らない。
黙々と食べる。
それだけだった。
だが。
その顔を見れば分かる。
本当に疲れていたのだ。
暖炉の火が揺れる。
しばらくして。
一人がぽつりと呟いた。
「……うまい」
もう一人も頷く。
「温かいな」
リアは少し嬉しそうに笑った。
その時。
リーダーの男が言う。
「ギルドで聞いたんだ」
「?」
「遠征帰りならここへ行けって」
店内が少し静かになる。
「ここなら休めるって」
暖炉前の常連たちが笑う。
「正解だな」
「当たりだ」
「……寝れる」
完全にいつもの流れだった。
四人は思わず笑う。
長い遠征。
危険な依頼。
仲間を守る緊張。
その全てから解放される。
暖炉の火。
温かな料理。
笑い声。
そして。
「ゆっくり休んでくださいね」
リアの優しい言葉。
その瞬間。
リーダーの男は小さく目を閉じた。
「……ありがとう」
その一言には、
心からの安堵が込められていた。
暖炉の火が静かに揺れる。
星降る宿屋。
そこは今日もまた、
遠征を終えた英雄たちが帰ってくる場所になっていた。




