第77話『宿へ届く依頼』
朝。
星降る宿屋には、
焼き立てパンの香りが広がっていた。
暖炉前では、
ガルドたちが朝食を食べている。
「平和だなー」
「それ毎回言ってるな」
ユーリが呆れる。
すると。
カラン、と扉が鳴った。
「おはようございます」
入ってきたのは、
冒険者ギルドの職員だった。
珍しい来客に、
ミリアが首を傾げる。
「どうしたんですか?」
職員は少し困ったように笑った。
「実は相談がありまして」
店内が少し静かになる。
「相談?」
リアが聞き返す。
職員は頷いた。
「最近、星降る宿屋の評判がかなり広がっているんです」
暖炉前では、
ガルドたちが何故か誇らしそうだった。
「だろ?」
「知ってた」
「皆さんは黙っててください」
ミリアが即座にツッコむ。
店内に笑いが広がる。
そして職員は続けた。
「実は遠征帰りの冒険者たちから要望が出てまして」
「要望ですか?」
「はい」
少し間を置いてから言った。
「遠征組の休息場所として紹介してもいいですか?」
リアが固まる。
「えっ?」
ミアも目を丸くした。
遠征帰りの冒険者。
何日も危険地帯へ行き、
疲れ切って帰ってくる人たちだ。
「最近そういう声が増えてるんです」
職員は苦笑する。
「星降る宿屋なら安心して休めるって」
暖炉の火が揺れる。
リアは少し戸惑った。
そんな大それた宿ではない。
ただ。
皆が帰ってこれる場所を作りたかっただけだ。
その時。
「良いんじゃないか?」
ガルドが笑う。
「助かる奴増えるだろ」
ユーリも頷く。
「俺も遠征後なら真っ先に来る」
「……寝る」
ディオも同意した。
すると。
女性冒険者も笑った。
「私も紹介します」
店内が少し明るくなる。
その時。
皆の視線がレインへ向いた。
「レインさんはどう思います?」
リアが聞く。
レインは少し考えた。
そして。
暖炉を見る。
帰ってきた人たちを見る。
笑顔を見る。
「疲れた人が休めるなら」
穏やかに言った。
「良いと思います」
暖炉の火が揺れる。
リアは少しだけ胸が熱くなる。
最初は小さな宿だった。
誰も来なかった宿だった。
それが今では。
遠征帰りの冒険者たちが、
帰ってきたいと思う場所になろうとしている。
「……はい!」
リアは笑顔で頷いた。
「星降る宿屋は、いつでも歓迎します!」
その言葉に。
店内から拍手が起こる。
暖炉の火。
笑い声。
そして。
帰ってくる人たち。
星降る宿屋は今日も、
少しずつその名を広げていた。




