第68話『帰る場所を守る人たち』
夕方。
星降る宿屋には、
今日も暖かな灯りがともっていた。
暖炉前では、
常連たちが食事をしている。
「最近ほんと人増えたな」
ガルドが店内を見回す。
客席はかなり埋まっていた。
旅人。
冒険者。
商人。
様々な人が訪れている。
「ありがたいですね」
リアが嬉しそうに笑う。
だが。
その時だった。
カラン、と扉が鳴る。
入ってきたのは、
見知らぬ男たちだった。
三人組。
酒の匂いがする。
そして。
どこか嫌な空気をまとっていた。
「おー、ここが噂の宿か」
一人がニヤニヤ笑う。
「辺境にしちゃ儲かってそうだな」
店内の空気が少し変わる。
リアは笑顔を崩さず迎えた。
「いらっしゃいませ」
男たちは席へ座る。
だが。
態度が悪い。
注文は乱暴。
文句も多い。
周囲の客たちも少し困った顔をしていた。
「…………」
ミアも不安そうにしている。
すると。
「お客様」
レインが静かに近づいた。
穏やかな声だった。
「他のお客様もいらっしゃいますので」
男たちは舌打ちする。
「なんだよ」
「別に騒いでねぇだろ」
その時だった。
ガルドが立ち上がる。
「いや騒いでる」
店内が静かになる。
続いて。
ユーリも立つ。
「皆ゆっくり飯食ってるんだからさ」
ディオも静かに立ち上がった。
「……迷惑」
暖炉前の空気が変わる。
三人組は周囲を見る。
そして気づく。
宿の客たち全員が、
静かにこちらを見ていることに。
敵意ではない。
ただ。
「この宿を困らせるな」
そんな空気だった。
「…………」
男たちは顔を見合わせる。
やがて。
「……悪かったよ」
気まずそうに座り直した。
暖炉前の緊張が解ける。
リアはほっと息を吐いた。
「ありがとうございます」
すると。
ガルドは笑った。
「気にすんな」
「俺たちも客だからな」
ユーリも頷く。
「居心地いい場所なくなったら困るし」
「……大事」
ディオも静かに言った。
暖炉の火が揺れる。
リアは少し驚いた顔をする。
少し前まで。
この宿を守るのは自分だけだった。
でも今は違う。
常連たちがいて。
仲間たちがいて。
帰ってきてくれる人たちがいる。
その時。
「良い宿ですからね」
ミリアが優しく笑った。
暖炉の火。
笑い声。
安心できる空気。
星降る宿屋。
それはもう、
レインやリアだけの場所ではなかった。
皆で守る、
大切な帰る場所になっていた。




