第59話『届いた手紙』
昼。
星降る宿屋には、
穏やかな時間が流れていた。
暖炉前では、
ガルドたちが昼食を食べている。
「最近平和だなぁ」
「お前毎日言ってないか?」
ユーリが呆れる。
その時だった。
カラン、と扉が鳴る。
「配達です!」
街の配達員だった。
リアが慌てて受け取りに行く。
「ありがとうございます!」
手渡されたのは、
一通の封筒。
少し厚みがある。
「……誰宛ですか?」
ミアが覗き込む。
リアは封筒を見て首を傾げた。
「星降る宿屋宛ですね」
珍しい。
宿へ手紙が来ることはあまりない。
「開けてみましょうか」
リアは慎重に封を開く。
中には一枚の便箋。
そして――小さな押し花が挟まっていた。
「……あ」
見覚えがある。
白い花。
窓際へ飾っていたものによく似ていた。
リアは静かに読み始める。
⸻
『星降る宿屋の皆様へ』
『先日は本当にありがとうございました。』
『あの日、私は心も身体も疲れ切っていました。』
『休み方も忘れていた私に、
皆さんは何も聞かず、ただ優しく迎えてくださいました。』
『おかげで今は元気に活動しています。』
『まだ忙しい日々ですが、
以前よりちゃんと休めるようになりました。』
『また必ず伺います。』
『その時は今度こそ、
笑顔で帰ってきたいと思います。』
⸻
店内が静かになる。
リアは手紙を読み終え、
そっと便箋を閉じた。
「……聖女さんですね」
ミリアが優しく笑う。
リアも頷いた。
間違いない。
あの銀髪の女性だった。
その時。
「元気そうで良かったな」
ガルドが笑う。
「ちゃんと休んでるみたいだし」
「……よかった」
ディオも静かに頷いた。
ミアは押し花を見つめている。
「覚えてくれてたんですね」
窓際の花。
何気ないものだった。
でも。
ちゃんと届いていた。
その時。
「また来るって書いてますね」
レインが静かに言う。
暖炉の火が揺れる。
リアは手紙を胸へ抱いた。
「……はい」
嬉しかった。
誰かが元気になって。
また帰ってきたいと思ってくれる。
それはきっと。
この宿が目指していた形だから。
窓の外では、
穏やかな風が吹いている。
星降る宿屋。
そこは今日も、
誰かとの繋がりを少しずつ増やしていた。




